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悪戯してもイイよね?
悪戯してもイイよね? 04
しおりを挟む河東家の人間は深黒のことを良くは思っていない。
そのため、参と家族の間もギクシャクしていた。
参が兄の名を出すこと自体珍しかったが、素直に兄の言う事を聞こうとしている参など、明日は大雪になるのではないかと心配になる程に有り得ないことだった。
「勿論、着けるんだよ」
深黒は首に掛けたバスタオルで髪を拭いつつ傾けたままの頭で考える。
面白くないと仏頂面の参を見る限り、とても恥ずかしいのだろうと想像出来た。
「……さ、ささ、っ、サン、くんが?」
何とか言葉にした疑問に答えは返って来ず、かわりに手首を掴まれ引っ張られてしまう。
連れて行かれたのは参の自室で、ベッドの上にと座らされる。
自然な動作で頭頂部にカチューシャを着けた参の頭に角が生えた。
悪魔なのだろうと予想は出来るのだが、深黒にはどうしても牛にしか見えない。
笑いを堪らえようと口元を押さえ俯いていた深黒は、参の不穏な動きに気付かなかった。
「TRICK OR TREAT」
身体を抱き込まれ、どさり、と布団の上に押し倒されていた。
耳元を擽る参の顔が首筋に埋まっている。
「え、え、え? 僕、英語わからないよ」
「さっき教えただろ? お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」
首筋から顔を上げた参に見下され、深黒はオロオロと視線を彷徨わせた。
参も深黒も普段からお菓子や甘い物を食べない。
「おっ、お菓子、持って、ない」
フッ、と息で笑う参の顔が近付いてくる。
心臓が、どっくんばっくん、うるさく暴れ立て、深黒は力一杯に目を瞑った。
「じゃあ、……悪戯してもイイよね?」
額に触れた感触が参の唇だと認識して、カッと顔が熱くなる。
彼の気持ちを受け入れてから、性的な行為はまだ一度しかしていない。
その一度でさえも、深黒にとっては死ぬ覚悟で挑んだものだった。
深黒の過去を知る参が無理強いすることなどなく、今も嫌だと言えばやめてくれることはわかっている。
それでも深黒は、嫌だとは言えなかった。
性的に触れ合うことへの恐怖に逃げて、いつまでも参に甘えていてはいけないのだと自分を鼓舞する。
10代の頃から35歳になるまで参は、深黒への恋心を封じ込めて、親友として長い時を過ごしてくれたのだ。
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