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一章:援交とタローさん
性交はイコールで愛になるか 13*
しおりを挟む親指の指先で小さな円を描くように、先端を刺激されれば、体中を電気が駆け巡り、背中を反らす。
んんっ、と声を抑える。
目蓋をキツく瞑り、唇を噛んだ。
体は勝手に、びくん、と波打って、己が感じているのだと、相手に伝えていた。
「こら、噛まないの。切れちゃうよ?」
耳元を彼の囁きが擽る。
お兄さんは何処までも優しい。
それが逆に辛い。
もう片方の手が、口元に伸びてくる。
唇を辿る彼の指を、舌先で舐めて咥内に銜え込んだ。
ちゅう、と吸い上げる。
もっと乱暴に奪って欲しくて、ワザと誘うように熱い視線を送る。
余裕なんか無くす程に、自分に溺れて貰いたかった。
お兄さんの喉が上下して、それでも、呼吸を整えるみたいに彼は息を呑んだ。
あ、と思った時にはお兄さんの腕に囲まれていた。
顎が肩に乗っかる。
背中に回された腕は、力任せに僕を抱き締めているようで、動揺を止められない。
普通は理性を失って襲いかかってくる場面だろう、と認識されていた己の脳みそは、真っ白になっていた。
背中を撫でる手が髪に差し込まれる。
慈しむ動作であることは解った。
頭で理解して、気持ちは全く追い付かない。
胸が張り裂けそうに痛んで、僕を追い詰めていく。
「……っ……! た、タロー、さん。痛い、よ。何で」
何を彼に問いたいのか、自分でも解らなかった。
自然と口をついていただけの言葉だ。
彼からの返答は無かった。
ただただ腕に包まれている。
温もりの中から、お兄さんの鼓動を感じた。
速く忙しなく脈打つそれは、彼がどうにか平常心を保っているのだと知れた。
「俺ね、今すごく悲しい。何でかな。こんなに近いのに、どうしてこんなにも遠いんだろう? 繋がれば埋まる距離なのかも解んない。キィ君は、今何処にいるの? ちゃんと俺のこと見てる? 感じてる?」
言葉は残酷だ。
己の醜さを見透かされている。
彼の言葉が、僕という人間を一つずつ壊していく気がした。
「何言ってるか、解んないよ、タローさん。僕は此処にいるよ? 援交だもの、割り切った付き合いじゃないの?」
解らない無知な子供のフリをした。
罪悪感と苛立ちが同時に湧き上がる。
心臓がずっと痛い。
引き裂かれそうな痛みに悲鳴をあげている。
あの女(ひと)に会う時に必ずやってくる苦痛だ。
苦しくて仕方が無い。
僕の存在意義が消滅していく感覚は、恐らく誰にも解らない。
「じゃあ、他の奴等みたいに君を抱けば良い? それが君の望みなの?」
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