僕等は愛の意味を履き違えている

一章：援交とタローさん

性交はイコールで愛になるか 08

性交とあの女（ひと）の愛は、イコールで繋がっていた。
けれど、彼との触れ合いは、彼女の愛として受け入れてはいけないのだと、僕の良心が叫ぶ。
これは彼からの愛なのだと解っても、僕は堪らなく求めていた。
お兄さんからの愛が、欲しかった。
こんな気持ちは知らない。
知らない気持ちが胸を塞いで苦しい。
それでも、彼の手が触れる度に、僕は嬉しくなって彼に応えた。


　とろん、としてぐったりしている僕の頭を撫でて、お兄さんは離れていく。
転がっていたシャワーを掴んで、体にお湯を掛けられる。

「洗ってあげるから、後ろ向いて？」
「あ、うん」

呆けていた僕は、ハッとして腰を浮かした。
ぐるり、と向きを変えると、背中から抱き寄せられる。
肩に彼の腕が乗っかっていた。
胸にシャワーの水流が当たる。

「お湯、掛けるよ？　目、瞑ってて」
「うん」

彼の腕が上に移動して、頭からお湯が降り掛かる。
髪の毛全体が濡れるように、お兄さんの手が頭中を撫でていく。
僕は膝を抱えて座り、ぎゅうっと目を閉ざしていた。
真っ暗な中で、頭皮を撫でられる感触がする。
気付けば、シャンプーを泡立てた泡で髪を洗われていた。
先程よりも強い力でマッサージをするような手付きになっている。

「痛かったら言ってな？　痒いとことかも」
「大丈夫」

彼の指先が頭皮を押していく。
二分程して、流すよと声を掛けられた。
じゃぁー、と頭上から音がして、泡が流されていく。

「はい、おしまい」

肩を叩かれて、目を拭う。
目蓋を上げるのと同時に、今度は泡立ったスポンジが肩に押し付けられる。

「かっ、体は、自分で洗う」
「イイからイイから」

逃れようと体を捩るも、腕の中に閉じ込められてしまえば、抵抗にもならなかった。
頭越しに、お兄さんの胸板が当たっている。
肌と肌が触れ合うのが嬉しくて、僕は大人しくすることにした。


　スポンジは、肩から首を通り、反対側の肩に滑り、胸にと落ちていく。
ざらざらした感触のスポンジが尖りを擦っていった。

「ふあっ」

思わず声が漏れてしまい、手で口を覆う。
彼の熱い吐息を頭上で感じたが、お兄さんは悪戯することなく手をお腹に移した。
へそや下腹部を洗い、スポンジが脇腹にやってくる。
擽ったさに身を捩れば、お仕置きとばかりに耳朶（みみたぶ）を食（は）まれた。

「んあっ、擽った……いよう」

体がふるふると震えた。
快感を知っている肉体は、貪欲に気持ち良さを拾っていく。