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一章:山のクマさん♪
クマさんと少年 03
しおりを挟む「関係ないとか言うなよ。かなりヘコムだろ……。一緒に住んでんじゃねぇか。何がどう関係ないのか説明してみろよ。赤の他人だからか? 血が繋がってないから? ふざけんな。甘えてんじゃねぇぞ、ガキが。関係なんて、作らなきゃ出来る訳ねぇだろ。逃げんなよ、現実から」
暫くしてから、怒りを押し殺した熊男の言葉が部屋中を駆け巡って、志那の耳から入って体内を巡る。
みっともなく肩が震える。
目に涙が滲んできて、急いで熊男の胸に顔を押し当てた。
背中を優しく撫でる大きな手の感触に戸惑う。
「ッ……ぅ、っさいな! わかっ……てるよ……そんぐら、い! ……何なんだよ、お前は! 勝手に人の心ん中ズカズカ土足で入り込んで掻き乱してっ……! 出来たらな、苦労しないよ。こんな苦しまないよ。解ってるのに出来ないから、だから傷付いてんだ! 逃げるんだ! 文句あっか!?」
最初、嗚咽が口を吐くも次第に怒りが勝って今までの鬱憤が爆発したかの様に巻くし立てた。
熊男はその間、静かに志那の背中を撫で続けていてくれた。
その手に似合わず優しく。
「志那? そうやって、泣いて喚けば良いんだ。まだガキなんだからさ、大人に甘えろよ。強がらなくたって良いから。受け止められるようになったら、大人になれ。だから、少しは心開け。俺は、お前の本心が見たいから、幾等だって土足で上がり込んで暴いてやるんだ。それが嫌なら、俺にナツケ」
さっきとは打って変わって志那を庇うように優しい声色で語られて。
恥ずかしいような嬉しいような甘ったるい思いと共に強く浮き上がってくる恐怖。
「誰が熊なんかにナツクか、ボケ。俺は、独りが良いんだよ」
「失うのが、怖いから?」
彼の言葉に顔を上げた。
彼の目には志那の驚いた顔が映っていて。
微かに唇が震えた。
何で彼にはこうも心の中を覗かれてしまうのだろうか?
「チガッ……!」
慌てて否定しようとするも、熊男に睨まれたらそれ以上何も言えなくなった。
「……俺は、ずっと志那の傍にいるよ?」
背中を撫でていた手が、志那の髪に触れた。
愛しい者にするかの如く髪を撫でられて、真剣な言葉にどう返して良いのか解らなくなる。
ギュッと拳を握り俯いた。
「久間さんだって……いなくなるんだろ? 俺なんか置いて、何処か遠くに行っちまうんだ。あの人みたいに……」
彼から離れようと身を捩りながら言い放って。
その言葉に自分自身傷付いていることに気付く。
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