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一章:教育されてます!
理由と想いと許容 04
しおりを挟む「羽李さん? 何故、泣いているのですか?」
静かに問う神流に、自分が涙を流していることに漸く気付く羽李だった。
神流の手は、服から出ていき、羽李の目元に触れていた。
指先が水滴を拭っていく。
「……っ、お、おれっ! こんなの、イヤだ。お前はっ……良いのかよ。気持ちが通じ合ってなくても、抱けるのか?」
優しい神流の仕種に、胸がもっと苦しくなる。
ぐずっ、と鼻を啜りながら、どうにか想いを口にする。
目と目が向き合う。
神流の瞳が、切な気に細められた。
目尻にあった指が、頬を撫でていく。
「出来ることならば、ちゃんと順序を追えたら、僕だってその方が良いに越したことはないんですよ。ですが、羽李さんは、僕を嫌っている。だったら、仕事でも何でも利用するしかないじゃないですか。体だけでも、自分のものにしたい、気持ちは二の次でも着いてくる。そう思うのが、僕のエゴだったとしても、それでも構わないぐらい、僕は貴方が好きだ。愛しているんです。僕は貴方を諦めない。何があっても手に入れてみせます」
怖いぐらい真剣な眼差しが羽李を貫いている。
羽李は何も言えなくなった。
ただただ、ぐずっずぴっ、ひっく、と年甲斐もなく泣く音だけが部屋を占領していた。
「俺はものじゃない。俺は女の子が好きだ。俺は、お前なんか好きじゃない。お前のものになんかならない」
「ねえ、羽李さん。好きが高じると、殺したくなる気持ち、解りますか? 手に入らないのなら、他の奴に奪われるぐらいならばいっそ、殺してしまいたい。誰の目にも触れず自分だけのものにしてしまいたい。……時々、そんな想いに駆られるんですよ」
飽くまでも、拒絶の姿勢をみせる羽李に、神流は微笑みを向けた。
言い回しはヤケに優しい癖に、声色は低く、内容も恐ろしい。
そんな神流に、羽李は恐怖を覚えた。
体がガタガタと震える。
神流ならばやりかねないと、そう感じたのだ。
頬から、すぅっと手が下がり、羽李の顎を掴んだ。
ぐいっ、と羽李の顔が上向かせられる。
すぐ目の前には神流の顔がある。
「安心して下さい。殺したりはしませんよ、流石にね。ですが、貴方は覚えておくべきです。僕の想いを」
「かっ、勝手なことばっか言うな、よ」
目を逸らしたい気持ちをどうにか抑え、羽李は神流を睨む。
だが、神流は楽しそうに笑うだけで、堪えた様子もない。
顎から首へと、また下がる手に、羽李の体はびくんとびくついた。
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