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一章:学園の闇
失ったもの 06
しおりを挟むクラスメイトの半数を、彼は殺してしまった。
幻覚と幻聴に襲われ、理性を失った賢留は、その手で同い年の仲間を葬った。
当然、裁判では、未成年であること、家庭環境の悪さ、などが論点となった。
そして、最大の争点となったのが、責任能力の有無である。
日本の法律に於いては、責任能力がない者に罪は問えないのだ。
些か、机上の空論になっている感は拭えないが。
罪として認識出来ない、例えば、知能が著しく低く善悪を理解出来ない場合や、泥酔状態で自分が何をしているのか全く解らない場合など、責任能力の有無が問われる。
統合失調症などの精神病の場合にも、問われる場合が多く、賢留についてもそこが問題となった。
弁護士側は、未成年であり、麻薬に手を出してしまうに事足りる家庭環境であったこと、麻薬により統合失調症と同じ状況にあり責任能力が無かった、として無罪を主張。
検察側は、未成年であっても、殺した人数の多さ、残忍さを鑑みれば死刑が相当とし、統合失調症と似ていると言っても、統合失調症そのものではないのだから責任能力はあったとし、有罪を主張した。
世論も、死刑を求める声が圧倒的に多く、だからなのかは解らないが、結局、賢留の死刑は確定した。
あやは今でも覚えている。
人が人の死を望む、殺人者と同じ欲求を誰もが持ち得るのだと、あの時に彼女は知ったのだ。
命を命で償うことが本当に出来るのか、そんなことは人間になど解る筈もないのに、それがさも正しいのだと言わんばかりの国民の声を、あやはいつまでも忘れられずにいる。
賢留のしたことは間違っていると解ってはいても、国家が人殺しと同じことをするのかと思うと、なかなか納得出来ないのだ。
正義など、人の数だけある。
国が変われば、正義も悪に、悪も正義になる。
人を殺して英雄になる国があれば、人を殺して大悪党になる国がある。
一体何が正しくて何が間違っているのか、もうあやには解らなくなっていた。
勝は、ずっと調べていた。
賢留に麻薬を与えたのは、教えたのが誰なのかを、彼は水面下で調べ上げ、漸くこの学校に辿り着いたのだ。
勝が正しいのか、あやには解らない。
だが、それでも彼を見守りたいと思っている自分に正直でありたいと、そう思うあやであった。
* * * * * *
気を使っている。
水紀にはすぐに察せられた。
この悠理という小さな生き物は、時に真っ直ぐで、時に曲がる。
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