Drug Crazy.

一章：学園の闇

謎の同級生 05

「そうだね、水紀君。噂では麻薬をやっていたのは和泉原君だけど、本当は友人の市川君が麻薬をやっていた。和泉原君がどう関与していたかは解らないけれど、少なからずともあの噂に関与してはいる。彼は黒幕に睨まれてしまい、変な噂を流されているんじゃないかな、と推測したんだけど。何にしても、和泉原 真哉は何かを知っている。そこでメールを送ってみたんだよ、僕」

にっこり、と笑っている勝は、行動的なようだ。
雷紀は、ぶすっとした表情をみせてはいたが、腕を組み大人しく話を聞いていた。


　教室内である。
当然、他にも人間はいる。
話の内容が内容だ。
話し声は極力落とされひそひそと話すように、自然と皆の距離が縮まる。


　勝が俯き加減で首を左右に揺らす。

「返事、なかったんだよね。かと言って、此処で引き下がりたくもないし、彼の家、調べたんだ。今日、放課後、皆で行こう。雷紀君は、麻薬について詳しいだろうし。もしかすると、経験者の君には、和泉原君も何か話してくれるかなあ、という期待もあって。是非一緒に来て貰いたいんだ」

勝の目が、雷紀を捉える。
雷紀は口を歪めて疑問を口にした。

「なんでお前、そこまでして噂、調べてんの？」

ぱちぱち、と勝の目が瞬いた。
視線は繋がったまま、勝の眉尻が下がる。

「まあ、僕もいろいろと思うところがあって。ダメ、かな？」

はぐらかすように言う勝に、縋るように見詰められ、雷紀も言葉を返せなくなる。

「期待されても、何にも返せねえぞ。それでも良いなら、少しぐらい付き合ってやる」

後頭部をがしがしと乱暴に掻く。
必要とされるのは、悪い気はしない。
了承の意を勝に伝えれば、彼はほっと頬を弛ませた。

「ありがとう、雷紀君。じゃあ、放課後、五人で行こう。靴箱に集合、でいいかな？」

勝はぐるりと一同を見遣る。
皆が頷くのを見て、勝は大きく一度頷いた。

「第一回会議は無事に終了ね。ちょうど先生も来る時間だわ。学校側には怪しまれないように。これだけは皆、肝に命じておいて」 

ふう、と息を吐き出してあやが宣う。
悠理は珍しくも真剣な顔で頷いている。

「ユウリ、頑張るよ。良くわかんないけど頑張る！」
「ゆうちゃんは、そのまんまでいれば大丈夫だよ」

またもや始まりそうになるベタ甘劇場を雷紀が蹴散らす。

「いちゃこらは向こうでやりやがれ。迷惑だ」

しっしっ、と右手で払う仕草をすると机に伏せてしまった。
自然とその流れで解散となった。



　雷紀の机の周りは、一気に静かになる。
ＨＲが始まる少し前の出来事であった。