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一章:責任取ってね?
神沼が大変です 04
しおりを挟む「あ、ああ、ごめんね。何処かで、会ったことがあるような気がして。知り合いだったかな?」
うーん、と唸り義一郎の手を放す倫成の顔を眺め、義一郎も首を傾ける。
パンフレットで見た以外に会った記憶はなかった。
「いえ、全く覚えがないです。人違い、ですかね?」
「そっか。引き止めちゃってごめんね。神沼君のこと、宜しく頼んだよ」
照れたように笑う倫成に頷き、では、とその場を後にした。
* * * * * *
エレベーターで宿泊部屋の階まで上がり、明紫亜と二人部屋の番号を探し出す。
事前に渡されていたカードキーで扉を開けると、扉から真正面に見える窓際に置かれたソファーに明紫亜が座っていた。
「あ、委員長。遅かったね」
ぐったりと背凭れに肢体を預ける彼の顔が此方に向く。
二つあるベッドの一つには明紫亜の荷物が置いてあり、義一郎は何もない方に自分の荷物を置いた。
「委員長、ベッド、好きな方でいいよ。荷物退かすしさ」
ソファーから立ち上がった明紫亜が近寄って来る。
何処か覇気のない顔が義一郎に向く。
気怠げに、それでも彼は、くたりと笑った。
「こっちで大丈夫。神沼、体調悪いんだろ? 少し横になってたら?」
んー、と考えるような声を出しながらベッドに倒れ込む明紫亜は、それでも首を横にと振る。
「少し気分悪いだけだから。取り敢えず、見学させて貰うよ」
大丈夫、と笑って体を起こそうとしている。
義一郎は心配でハラハラとしてしまい、挙動不審に目があちこちに動いてしまう。
「で、でも、顔色、あんまり、良くないよ?」
わたわたと両手を上下させながら告げると、明紫亜は双眸を瞬かせ、ふんわりと微笑んだ。
その優しくて柔らかな表情に、義一郎の胸はドキリとときめいた。
いつもの元気一杯な笑顔も素敵だが、大人な雰囲気を醸し出す微笑みも、両極端な筈なのに彼には似合っている。
「ありがとう、委員長。でも、少しでも顔は出したいんだ。参加したって言う、その気分だけでも味わいたくて。本当に無理だったら、ちゃんと休ませて貰うから、ダメ、かなあ?」
上目遣いに、くたりと首を傾ける明紫亜に、義一郎はもう何も言えなくなってしまう。
胸がトクントクンと高鳴っていた。
ぎゅ、と左胸を左手で押さえる。
「わかったけど。無理はしないって、約束だからな?」
赤くなる顔を隠すように俯き加減でそう宣えば、彼の嬉しそうな、えへへ、と言う笑いが聞こえた。
「ん、約束する。委員長、大好きだよ!」
そっと目線を上げると、満面の笑みを浮かべる明紫亜に目を見詰められる。
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