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序章:寮長様と小型わんこ
可愛いわんこ 02
しおりを挟む隣に目配せする響に頷く龍神は答えを口にして健に視線を投げた。
「おはよう、響君、龍君。健と知り合いなんだ?」
あれ、と軽く目を見張り龍神に問い掛けると、勝手に響の前に座った健が大きく首を縦に振る。
「和志! 龍たんとは去年おんなじクラスだったんだ! えっと、よく龍たんと一緒にいる子だよね? 俺、堀内 健! 健でいーよ。宜しくなっ」
ニッコニコの笑顔で響の前に掌を翳している健が微笑ましく映る。
控え目にハイタッチに応えた響が顔を赤くして口を開いた。
「僕は天星 響。龍君とは幼馴染だよ。健君は、佐倉の弟分、だよね? あの佐倉に気後れしないなんて凄いなあ。親衛隊も怖いしね」
微笑ましそうに健を見る響に、ほっこり、と和んでしまう。
健は、きょとん、と首を傾けて「何が?」と口にした。
「佐倉の兄(あん)ちゃんに気後れなんてしないよ。だって家族だもん! ……親衛隊も佐倉の兄ちゃんが守ってくれるから平気。時々ちょっとだけ、ほんのちょっぴり凹むけど」
にかり、と脳天気に笑ったかと思えば、寂しそうに目を伏せて箸を手に取る健を見て、和志の胸がざわつく。
龍神の隣、健の正面に座り、知らず知らず伸びていた手で柔らかな髪を撫でる。
「なっ、なんだよ、和志! ガキ扱いすんな! ちょっとだけなんだからなっ! べ、別に布団に潜って泣いたりなんかしてないんだからなっ!」
ブンブン、と首を振り嫌がる健にどす黒い感情が芽生えた。
光輝には「ガキ」と呼ばせ、寧ろ喜んで甘えているのに、和志には頼ることをしない。
面白くなかった。
はじめて幼馴染に憧憬以外の得体の知れない感情を抱いた瞬間だった。
「堀内。お前、相変わらず親衛隊に嫌がらせされているのか? 佐倉と兄弟の契を交わして落ち着いたんだろ? ……ああ、嫌がらせとも呼べないような小さい悪意か」
龍神のあまり動かない表情が若干歪む。
意外と健のことを気に入っているのか心配している様子である。
「んー、まあそんな感じ。実害はないけど。無視されたりとか。わざとなのか解らないけどぶつかってこられたり。陰でなんかコソコソ言われてる感じもする。でも、佐倉の兄ちゃんに言う程のことでもないし」
龍神は光輝と健が兄弟の契を交わした事情に詳しいように思えた。
和志は噂でしか耳にしていない。
光輝との付き合いは長いが、何でもかんでも話す男ではないのだ。
「龍君は詳しく知ってるんだね」
意識せずに出た台詞には、若干の棘が含まれていたかもしれない。
ハッ、として龍神に視線をやれば、軽く笑われた。
「当時クラスメイトだった」
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