SとKのEscape

Neu(ノイ)

文字の大きさ
上 下
96 / 97
二章:悲劇の日から

悪夢と白井教授 01

しおりを挟む


2.押し込めた劣情
【悪夢と白井教授】


 人形かと錯覚させる美貌を持った男は、透き通る白い肌に白に近い頭髪で、瞳は赤味が強かった。
サラサラの髪を自然に流している彼は中性的で女性にも見える。
照須 月(テラス ユエ)という存在を知ったのは、川路 深黒(カワミチ ミクロ)が17歳の時だった。


 その日、僕は幼馴染の河東 参(カトウ サン)と本屋に行く約束をしていた。
高校生になったサンと、中学を卒業し就職した僕との関係は、今までと変わることなく続いている。
休みの日にサンと会うことだけが楽しみだった。
サンと過ごす時間だけを心の支えにして生きていた。
心を委ねられる唯一の存在がサンであり、彼がどんなに毒舌で偏屈で暴言ばかりを言う男でも、僕にとっては一緒にいて落ち着く人間なのだ。
鬱の傾向にある僕をどうにか現し世に繋ぎ止めてくれる。
サンでなくては駄目だった。


 約束の時間より三時間も前に施設を出た僕は、何度か訪れたことのあるサンの高校にやって来ていた。
待ちぼうけを食らうことを解っていて早く出て来たのは、時間に余裕を持たせないと不安で気持ちが不安定になりそうだったからだ。
何かあったらどうしよう、とありとあらゆる不測の事態が脳裏を埋め尽くして悶々としてしまうので、いつも待ち合わせの時には何時間も前に発つようにしている。
それだけで精神が落ち着く理由は解らないし、予定よりも早くに支度をしないといけないのは、それはそれで大変ではあるのだが、どうしよう、と漠然とした不安に苛まれるよりはずっとマシだった。


 私立の進学校は、立派な校門を有している。
趣のあるレンガ造りの壁には圧倒されてしまう。
いつも校門近くのバス停に設置されているベンチに座りサンを待つ。
この日もベンチに腰掛け、以前サンから勧められた本を鞄から取り出した。
ファンタジーに分類される、少年少女の冒険を画いた革命と恋愛の物語だった。
彼にしては珍しいチョイスだと思ったが、案外楽しく読んでいる。
サンが読む本は医学書が多く、僕には理解出来ない。
彼が物語、況してや恋愛物を読むだなんて、と最初は驚いたが、聞けばサンも知人から勧められて読み始めたのだと言う。

「言っておくがね。ボクが自発的に恋愛話を選んだ訳ではないよ。頭のイカれた変人がしつこく勧めてくるものだからうっかり読んでしまってね。意外と面白かったし、こういう系統なら君でも楽しく読めるかと思っただけだ。大体、恋愛などという現象は子孫繁栄の為に脳が作り出すまやかしに過ぎないのであって、そんなものに現を抜かす行為は愚行としか言いようがないね」

そう言っていたサンを思い出す。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

おとなのための保育所

あーる
BL
逆トイレトレーニングをしながらそこの先生になるために学ぶところ。 見た目はおとな 排泄は赤ちゃん(お漏らししたら泣いちゃう)

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

処理中です...