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一章:SとK
仲直り 03
しおりを挟む二年で一度クラスが離れたボク達ではあったが、変わらずに交流はあり、と言うよりも、お互いに他に友人も出来ず、一年を過ごした。
良くクロの家に遊びに行き、17時前には帰るという日々を送っていた。
17時になると父親が帰ってくるのだと言う。
会わせたくない、とクロに言われ、16時半には家を出るようにしていた。
クロの母親は、家に居る時と居ない時とあった。
外でパートとして働いているそうだ。
そうして三年になり、ボク達はまた同じクラスになるのだった。
其れは、体育の授業の前の休み時間のこと。
クロは良く体育を休んでいたのだが、この日は体育をやるようで、一緒に体操着に着替えていた。
クロの着替え方は、まるで高学年の女子のようで、体操着で体を隠しながら作業を行う。
不思議に感じてはいたが、クロの不思議なところを気に入っていたので、理由は尋ねなかった。
プールは必ず休むことと関係があるのだろう、と思いつつ自分の着替えを進めていく。
ばさり。
そんな時である。
上半身裸のクロが体操着を落としたのは。
音がして視線を遣る。
慌ててしゃがみ込み、体操着を拾い上げるクロ。
ボクを見上げてきた。
様子を窺っている。
ボクはなに食わぬ顔で、何も見ていない雰囲気を醸し出す。
クロの口からほっと息が漏れた。
クロはしゃがんだまま急いで体操着を身に纏う。
珍しく、ボクは動揺していた。
一瞬だった。
ほんの一瞬だ。
見えてしまったのだ。
クロのお腹が、有り得ない色に変色しているのが、目に入った。
幼いボクでも理解出来る。
あれは殴られた痕だ。
この場で問い質してしまいたい衝動に襲われる。
だが、他の生徒もいる教室内だ。
憚れた。
ボクは既に頭の中で答えを導いている。
父親に会わせたがらないクロ。
友人になったあの日、ガキ大将に言っていた言葉が頭を過る。
まるで自分が殴られ慣れている、そんな台詞であった。
立ち上がったクロは、体操着を整えている。
ズボンを脱げば、短パンが現れた。
クロの体は細い。
体操着から覗く腕も足も折れてしまいそうである。
頭の中がごちゃごちゃとしてはいたが、ボクも体操着に着替える。
下を脱ぎ短パン姿になった。
「行こうか、クロ君」
「うん。でも、気が重いなあ」
クロに声を掛け、教室を出るべく踵を返す。
クロの表情は浮かないが、後に着いてくる。
運動神経が皆無に等しいクロは、体育が嫌いなのだと言う。
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