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一章:SとK
担当医 03
しおりを挟む受付嬢は、すぐにと言っていたが、実際は解らない。
前の人が押せば、自然と遅くなる訳だ。
何人待ちなのかが解れば、少しは予想も立てやすいが、そういう訳にもいかない。
いつも待ち時間には、考え事をしている。
今日は、何となくサンとの出逢いを思い出していた。
僕は、人間が嫌いだった。
嫌い、と言うよりも、苦手に近いのだが。
物心がつく頃には、己の置かれている立場に、否応なしに気付かされた。
他の人間にとっては、幸せな家庭も当たり前のものなのだろう。
しかし、そんなものはありはしないのだと、僕に限っては幼いながらに悟っていた。
人間は気持ちが悪い。
付き合いのある人間も、無い人間も、不特定多数の人間全てが、嫌悪の対象になっていた。
当然、生き難い。
家にいるのは地獄。
外に出ても辛い。
身の置場所が、僕には無かったのだ。
其れが、どういった訳か、気持ちの悪くない人間に出逢った。
七歳の頃である。
彼は、変わり者だった。
クラスで僕と彼だけが浮いていたように思う。
誰とも付き合おうとしない共通項があっても、馴れ合う訳でもなく、ただ好んで独りぼっちになっている人間が、クラスに二人いた。
其れだけのことだったのだ。
彼の名は、河東 参。
後に大親友になる男である。
サンは昔から、物事に対して冷めていた。
尖ったナイフのような眼差しを全てに向けていた。
サンにとっても、世間全部が敵だったのだ。
僕はそんなサンのことを、気に入っていたし、気になってもいた。
しかし、僕と言えば今も変わらないが、自分からは行動を起こせない、他人の顔色を窺いオドオドしている、そんな人間なのだ。
当然、サンに話し掛けられる訳もなく、又、サンから話し掛けてくる訳もなく、僕達はただ日を重ねた。
仲良しゴッコをしたい訳ではないのだ。
僕としては、話せなくても良いだろうと、思い始めた頃だった。
其れは入学から二ヶ月が経とうとしていた5月下旬だったか。
梅雨に入る直前の、蒸し暑いジメジメとした非常に嫌な気候が続くある日のことだ。
僕とサンは、突然だが友人になった。
サンはこの頃から既に厭味の塊であった。
それ故に、彼はクラスメイトから厭われていた。
僕も浮いてはいたが、人畜無害という点で放置されているようなものだった。
しかし、サンはと言えば、口を開けば人を泣かし、不愉快にし、怒らせていたものだから、当然ながら、攻撃の対象となっていたのだ。
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