睡眠薬

Neu(ノイ)

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睡眠薬

睡眠薬に溺れるように僕に埋もれたら良いのに

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 解っているのでしょうか。
君が軽い気持ちで摂取している睡眠薬は、とても怖いのだと。


 寝れない、そう言って君は僕の布団に潜り込む。
今までは、すぐに薬にと手を出していた。
僕がそれを止めたのだ。


 副作用で手を震わせて、真っ直ぐに歩けない君を見るのが辛かった。
いきなり人を蹴っておいて、そのことを忘れている君は、明らかにおかしい。


 それだから、僕は君から薬を取り上げた。
医者から何を言われたのか知らないが、心が満たされていれば、人は自然と眠ることが出来る。
僕は、君を抱き上げて、ベッドに放った。
吃驚した顔が滑稽で、息を吐き出すだけの笑みを投げる。

「僕が薬の替わりになってあげるよ」

優しく囁いて、君の隣に座った。
そっ、と腕を伸ばす。
君の頭を撫でて、そのまま背中に添わせた。
抱き締めるようにして横になる。
君は震えていたけれど、決して離しはしなかった。
腕に閉じ込めて、君の頭を胸に抱いて。
大丈夫だよ、と耳元で囁いた。


 それからだ。
君は眠れなくなると、僕のところにやってくる。
あどけない顔を晒して、僕の腕の中で眠るのだ。
他の男に抱かれた体を、無防備に預ける。
僕の気持ちなど知らないで、今日も君は、誰とも知らない奴に抱かれたのだろう。


 満たされない君は、セックスに依存して、睡眠薬に頼る。
決して僕を誘惑しないのは、それだけ僕を大事に思っているのか。
はたまた、僕のことは生理的に受け付けないのか。
どちらなのかは解らない。


 君は知らない。
僕が君を犯したくて堪らないことを。
愛しくて気が狂いそうなことを。
他の男に貫かれて悦ぶ君を、癒せるのは僕だけだと。
気休めにもならない優越感を、お守りのように胸にしまいこむ僕は、愚かだろう。


 僕に溺れたら良い。
睡眠薬を頼るぐらいなら、僕を頼れば良い。
他の男のところに行くよりも、僕のところにおいでよ。
優しく抱き締めてあげるのに。
睡眠薬に溺れるように、僕に埋もれたら良いのに――。


睡眠薬【完】
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