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一章:親友の異変
光輝親衛隊 07
しおりを挟む二人がルームメイトだった時のことなのだろうか。
彼は悔しそうに拳を握っていた。
光輝の様子から察するに酷いことがあったのだろう。
「もしかして、兄弟の契りって……健ちゃんを守る為に?」
ふと思い至って首を傾ける誡羽に首肯してみせる光輝の顔には苦笑が浮かぶ。
「まあな。大切な弟分に何かしたら許さないぞって意思表示? 健はああ見えて何でもかんでも抱え込んで自分のせいだと自責するからさ。ただでさえ初めての寮生活で親元離れたばっかのナーバスな時期にネチネチと陰湿な嫌がらせしてくるんだ。俺も頭きて盛大に兄弟の契りを交して、その後は落ち着いたけど。ガキは単純に家族になれたってめちゃ喜んでたな」
昔を思い出して、はは、と笑う光輝は楽し気だ。
確かに、先程もどうしたら誡羽と家族になれるのかと気にしていた健のことだ。
相当はしゃいだに違いない。
安易に想像出来てしまい、誡羽もクスリと笑った。
「さっきも僕と家族になりたいって言ってたよ。えっ、と。光輝の、その、お嫁さんに僕がなったら、家族になれるね、って。健ちゃん、純粋だから否定しづらくてさ。後で光輝からそれとなく無理なんだって言っておいてよ。お前からなら健ちゃんもすんなり受け入れられるだろうし」
何とはなしに告げる誡羽の手を、表情を曇らせる光輝が掴む。
いきなりのことに彼を凝視してしまう。
「誡羽は、俺のお嫁さんになってくんないの?」
寂しそうな捨て犬みたいな顔で小首を傾げてくる光輝を狡いと思った。
いつもの自信満々な態度は何処にいった、と胸中で文句を垂れ、誡羽は口を開く。
「だって僕、男だし。同性婚は認められていないから現実的に考えて無理だろ。それに、光輝と健ちゃんだって本当の家族じゃないんだ。万に一つ結婚出来たとしても、家族にはなれないよ。……多分」
この男ならば、それでもどうにかしてしまいそうな気がして、最後は自信なく呟いた。
そっかあ、と笑顔を魅せる光輝に手を握られてしまう。
とくん、と高鳴った心臓を無視して振り解こうとした。
「ねえ、誡羽。男同士でも結婚出来るように頑張るからさ。もしも結婚可能になったら、俺のお嫁さんになってくれる?」
その手を更に握り込まれ、光輝の口元まで持っていかれる。
手の甲に触れた柔らかな感触に口付けられたのだと認識した。
甘い声色で、まるでプロポーズの台詞を言葉にする光輝が、いつものお巫山戯なのか、本気なのか、誡羽には判断がつかない。
「光輝のどあほう! 公衆の面前でプロポーズすんなや! こういうのはムードが大事やろうに! 全然なってへんわ!」
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