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二章:訪れた変化

神父の場合 03

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 次の日、息子は恋人と共に自ら命を絶った。
同意の上の心中であったのか、無理心中だったのかは解らない。
ただ一言、俺達は人間だ、と書かれた紙が遺されているのみであった。


 私は大事な家族を喪って初めて気付いたのだ。
間違っていたのは私の方なのだと。
息子を追い詰めたのは、間違いなく私なのだ。
あの時、病気だと認めていたならば、最悪な結末は回避できた筈である。


 今更、遅すぎるとは思ったのだが、息子の恋人が言っていた病気を調べてみた。
統合失調症、という名を彼は挙げていた。
書籍や医師を訪ね調べてみれば、症状が息子と合致していたのだ。
やはりこの病気だったのか、と己の過ちを悔いた。
悔いても悔いても、罪の意識は薄れず、私は医療の勉強をすることを決めた。
独学で調べたり、講習会に参加したりと色々した。
そんな噂がミルの事件では役に立ったのだろう。
警察から相談され、彼の件は私に一任されるようになったのだ。




 フィンもまた、己の存在を呪い続ければ、息子のように精神を病んでしまうのではないか、と。
私はそれを恐れていた。
だが、何の因果か、彼はミルに惹かれているようであった。
誰のことも敵と認識していた彼が、ミルを頻りに気に掛けているのだ。
どういう意味合いがあるのかは、まだ解らないが、補い合うべき二人であると、そう私は感じていた。
お互いに癒えない傷を抱えた者同士、助け合えるのではないかと、そう思ったのだ。


 そんな時だった。
フィンが家出をしたのだ。
私はフィンをミルに、ミルをフィンに託してみることにした。
フィンはミルに恋心を抱いていると言った。
陰ながら二人を見守ることが、私の責務なのだと、自然と思えたのだ。
ミルは神父見習いという立場であることを悩むであろう。
フィンとの関係に頭を抱えることもあるだろう。
それでも、彼等ならば乗り越えられると、私は信じたかった。


 どうか彼等は幸せな未来を掴めますように、そう祈り続けて3年が経とうとしていた。
ミルは20歳に、フィンは15歳にと成長し、二人の微妙な攻防は3年間変わることなく続いているようだった――。
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