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一章:恋に堕ちた悪魔の子

看病をする場合 02

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神父はミルの全身を拭き終えると、ミルの寝間着なのだろう、衣服を着せていく。
慣れた手付きだ。

「慣れているんだね、神父様」
「そうかな。ミルは良く倒れたり、気を失ったり、していたからね。自然と慣れてしまったようだ」

俺は何も出来ずにただ見ているだけの状況に、歯痒さを覚えた。

「ミルは、助かる?」
「はは、大丈夫だよ。元々あまり体が強くないからね。ちょっとしたことでダウンしてしまう子だ。暫く安静にしていれば、じきに良くなるさ」

不安気な顔をしていたのだろう。
神父は俺を安心させようとしてか、微笑みを向けてきた。
手は素早く動き、ミルは着替え終わっていた。


 神父の野太い腕が、ミルの細っこい首の裏に回された。
顔が上向き、口が僅かに開いた。
その隙間に、どろりとした濃い緑色の物体を流し込む。
絶対に不味いと解る物体が、匙に掬われて、ミルの咥内に吸い込まれていく。
見ているだけで口の中が苦くなるような気がした。
慣れてしまっているのだろうか、ミルは何事もなく其れを嚥下したようだ。
喉仏が、ごくりと上下する。

「その、地獄の使者も逃げ出しそうな薬、神父様が作ったの?」
「あはは、言ってくれるね。これでも少しばかり医学をかじっているんだ。不味そうに見えるかもしれないが、これがまた特効薬なんだよ」

一言で表すと、胡散臭い。
そう思ったのが顔に出たようだ。
神父はもう一口二口と、ミルに薬を与えながら眉尻を下げた。
それでも、俺と会話が成立するのが嬉しいのか、心なしか表情は柔らかい。

「多分、飲んだ瞬間、即死だ、絶対」

ぼそり、と呟けば、神父が苦笑を溢すのが目に入った。


 薬を全てミルの体内に収めると、神父は部屋を出て行った。
片付けてくる、と一言添えて、彼は部屋を後にした。
またもや俺とミルの二人きりになる。
近付いて顔を覗き込む。
先程よりは顔色も良い。
呼吸も落ち着いていた。
何を飲ませたのか、気にはなったが、敢えて気にしないことにする。
勧められたら目も当てられない。

「んっ……ぅ、フィ、ン……くん?」
「気付いたの、お兄さん。大丈夫?」

うっすらとミルの目が開く。
正直驚いた。
本当に何を飲ませた、神父。
とざわめく胸中は無視する。
しゃがみ込めば、ミルの顔が近くなった。

「ぼ、く。たお……れ。フィン君。ありが、とう」

起き上がろうとするミルの上体を押さえ付ける。

「安静にしてなよ。神父様もそう言ってた。……礼を言うのは、俺の方でしょ、お兄さん。ごめんね、俺のせいだ」
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