あべらちお

Neu(ノイ)

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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

秘密の関係(勉強合宿編)12

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隣でシートベルトをしている義一郎は、子供みたいにはしゃぐ明紫亜を微笑ましそうに見ている。

「ありがと、ギーチ。でも、今日は何だか大丈夫な気がするんだ」

未だに車に弱いと思っている義一郎に若干の罪悪感が湧いたが、明紫亜は否定もせず外を眺めたまま、くふり、と笑う。

「つぅか、メシア。まだ出発もしてないのに外見てて楽しいのか?」

後ろから涙夏の呆れた声が聞こえてきた。
どうやら彼も窓側に座るらしく、窓と座席の隙間から涙夏の顔が見える。

「楽しいよ? 丸井ちゃんが四苦八苦して荷物を乗せてるのとか。運転手さんの手際の良さとか。バスに荷物を乗せてるとこ、見たことないから新鮮なんだ」

嗚呼、と納得したような涙夏の感嘆する声が耳に届いた。


* * * * * *


 心地良い揺れの中で名前を呼ばれている気がした。
んんんんん、と唸り薄っすらと瞼を押し上げる。
目の前には義一郎の眼鏡が似合う線の細い顔があった。
彼の肩に凭れ掛かり寝ていたようだ。

「おはよ、メシア。もうすぐ着くから支度しようか」
「ん。僕、寝てた?」

ぐっすりだったよ、と笑う義一郎から体躯を離していく。
何故か後ろから、どんより、と暗く湿った気配を感じ、座席の間から後ろを窺った。

「二人共、どうか、した?」

漫画ならば頭上から線が描かれているような落ち込み具合を放つ愛弥と涙夏に問うと、義一郎に頭を撫でられる。

「いいんだよ、メシア。二人は反省中だから」

顔を横に向けた明紫亜の目に、にこり、と有無を言わせない義一郎の笑みが映る。
いつもよりも迫力が5倍増しだった。

「う? うん。大丈夫ならいいけど」

反省中と言うことは、また明紫亜で興奮した二人が義一郎に怒られたのだろう。
深追いしても良いことはなさそうだと判断し車を降りる準備を始めた。




 バスを降りると其処は、山の中腹にある駐車場で、此処から山道を歩いて宿泊先に向かうと言う。
背に負ったリュックの肩ベルトを掴み隣の義一郎と「寒いね」と話す。
バスの中でジャージを着て正解だった、と提案してくれた義一郎に感謝を告げると、彼は照れて俯いてしまう。
とても照れ屋な義一郎を、可愛らしいなあ、とほっこりしていた矢先、後ろからタックルを受け前のめりになった。

「なっ、なな、何? アミちゃん、どうし、たの?」

勢いを殺せず一歩二歩と前に進んだ明紫亜が後ろを振り向くと愛弥が鼻息を荒くして立っている。
若干の狂気を感じ、ゆっくりと義一郎の背中に隠れに向かう。

「お兄ちゃんが寂しそうに見てるぞ? 可哀想だろ」
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