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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 81
しおりを挟む司破の両手に頬を包み込まれ目を合わせられる。
真剣な瞳に見詰められ、額同士が合わさった。
至近距離に見える司破の顔には微笑みが浮かぶ。
それはほんの僅かな微笑であったが、優しいものに思えた。
「本当に嫌なことは絶対にしない。本当に無理な時だけ『嫌だ』と言え。それ以外の『嫌だ』は受け付けないからな。本当に死ぬほど嫌なら、殴ってでも『嫌だ』と伝えろよ? 俺はメシアを愛したいだけで、傷付けたい訳じゃない。いつも愛を伝えてくれるお返しだ。ちゃんと受け取って欲しい。それとも、俺からの愛は要らないか?」
頬を擽る指が心地良くて目を細めてしまう。
その指に、すりり、と自分から擦り付けていた。
司破はいつも明紫亜を甘やかす。
甘えることを拒む頑なな明紫亜を蕩けさせて、自ずから甘えるように仕向けるのだ。
ズルい、と詰る明紫亜も本心では嫌がっていないのだから、本当は甘えたくて仕方がないのだと自覚する。
自覚してしまえば、自戒していた分だけ強く、甘えたくてどうにもならなくなった。
「司破さんの誕生日なのに。僕が貰っても、いいの? 司破さんの愛なら何でも欲しい。司破さんが、欲しい。好き、す、き。頑張るから、いっぱい、たくさん、僕のこと、愛して、下さい」
恐怖がないとは言わない。
愛して欲しいと思いながらも、愛されることが怖いのだ。
だが、明紫亜は恐怖に耐えてでも司破の愛を受け入れたかった。
喩え、挿入行為を伴わないとは言え、愛し合うだけの行為は明紫亜を絶望に陥れていく。
死にたくなる程の恐怖があった。
「メシア」
それでも、司破が名前を呼んでくれるだけで歓喜する。
触れたところから温かなものが流れ込んでくる。
大丈夫、と念じて司破の胸元に腕を伸ばした。
パーカーのジッパーを下げ、脱がしていく。
司破の肉体から滑り落ちたパーカーがベッドの上に転がる。
インナーのTシャツを脱ぐ司破と目が合った。
ふい、と視線を逸らし彼の裸体を見詰めた。
筋肉が綺麗についた体は憧れてしまう。
筋肉も脂肪も付き難い明紫亜の体は貧弱にしか見えない。
自分ではあまり好きではなかった。
司破のように屈強な肉体、とまでは望まないが、ある程度の筋肉は付けたいと思う。
それが無理な願いだと解っていても、願わずにはいられないのが男子心なのだ。
むむむむむ、とつい唸って司破の上半身裸を睨んでいた。
そんな明紫亜に苦笑を浮かべて司破が肌を合わせてくる。
素肌同士が触れ合う温かさに、ほう、と息を吐き出していた。
「メシアの乳首、小さいよな」
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