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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 67
しおりを挟む学校の資料で解ることは決して多くはない。
まず、明紫亜と同じ静岡市の出身であること。
父親は随分と歳のいった老人で、母親とはかなり歳が離れていた。
元々は市議会議員を務めていた人物で、衆議院議員を経て、今は地元で県議会議員をしている御年75歳の父と、療養中だという37歳の母の間に杉木は生まれている。
兄弟姉妹はおらず一人っ子。
母は鬱病を患っている。
地元のエスカレーター式の私立に幼稚園から中学まで通っていた。
明紫亜とは別の学校で、住んでいる町も違う。
司破の力で解るのはその程度である。
実業家で全国各地に様々な人脈を持つ祖父ならば、何かしらの情報を手に入れられるのかもしれない。
だが、司破は其処までするつもりはなかった。
それよりも、何故杉木がわざとビーカーが破裂するように仕向けたのか、そちらの方が今の司破にとっては問題だ。
明紫亜と杉木が保健室に向かった後で、原因究明のために簡単にだが、調べて解ったことがある。
飛び散ったビーカーの破片と液体から、微量ではあるが検出されない筈の薬品が出てきたのだ。
明紫亜の班の人間に聞き取り調査をしたところ、ビーカーに液体を入れたのは杉木だったという。
ビーカーに触れた人間は、杉木のみであったと、班の人間は証言していた。
詰まりは、状況から考えると杉木がビーカーを破裂させようと、化学反応を引き起こす薬品を混入させた疑いが強いのだ。
あの時、杉木は明紫亜に触れていた。
本来ならば、明紫亜は慣れていない人間に触られることを嫌っている。
しかし気が動転した明紫亜は、触られることに拒否を示さなかったのだ。
もしそれが狙いだとするならば、矢張り杉木は明紫亜に近付きたいと思っているのだろう。
スマホを手に取り、LINE画面を開いた。
マッシュルームのイラストが笑っているアイコンをタップし、メッセージを送る。
何故だかとても明紫亜が足りていない。
物足りなさを感じていた。
明紫亜に出逢った時、性的な意味で彼に触れたのはただの気紛れだった。
自分は人を殺すことに快感を覚え、明紫亜は殺されることに快感を覚える。
こんなにも性癖がマッチングすることもない気がしたのだ。
あの時は此処まで彼に溺れてしまうとは思ってもいなかった。
ノーマルな性的行為を怖いと言う明紫亜は、快感が強くなるとアブノーマルな行為を求める。
司破としては拒むことでもなければ、寧ろ司破自身も愉しんでいたりする。
その点に関しては、元々の性癖が合致している分、問題にもならない。
問題となるのは、明紫亜の心の傷なのだ。
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