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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 27
しおりを挟む「そうと決まれば早速、電話するかな。明紫亜、ありがとう」
照れたように笑い小畑が立ち上がる。
ぼふんと明紫亜の髪に掌を埋めた。
電話のあるキッチンに向かう小畑の背中を眺め、明紫亜はゆっくりと息を吐き出す。
一つの推測を頭の中で遊ばせる。
このタイミングで小畑の仕事場にどうしても働きたいという不良っぽい人間が現れた。
単なる偶然ならばいいが、探りを入れるために仕向けた人間の可能性もある。
その可能性を考えながらも、小畑に雇うのを辞めろと言わなかったのは、彼が雇いたいと思ったのならば、そうするのが正解だと思ったからだ。
小畑が冷子以外のことで悩むのは、彼にとってはいい傾向である。
そして明紫亜は、小畑に探りを入れられても何も出て来ないことを知っていた。
小畑には司破とのことは隠し通すつもりでいる。
この屈強な男は、見た目に似合わず女子力の高い乙女で、最大級に鈍感で純粋だ。
小畑には悪いが、事が落ち着くまでは騙すしかない。
司破の兄にしても、念の為に探りを入れる程度のことでしかないだろう。
小畑の知り得ている明紫亜の情報など、興信所を雇えば知れる程度のものだ。
それだから、泳がせておいても問題ないと判断していた。
明紫亜を調べると言うのなら、体質や母にされたことは知られてしまう可能性が高い。
それは足掻いてもどうにもならないことである。
そんなことはどうでも良かった。
ある意味、明紫亜は司破の兄に期待しているのだ。
彼が明紫亜の父親に関して、何かしらのヒントを掴めたとしたら、それを知りたいと思う。
今まで父親のことは何一つとして情報がなかった。
少しでも父親のことが解るのなら、それはそれとして喜ばしいことである。
しかしながら、父親のことを知りたいと思うのは、何も会いたいなどと言う憧憬からではない。
寧ろ明紫亜に父親への憧れはない。
母に何があったのかを知りたい。
己の存在が何であるのか、そこに決着をつけたいだけだった。
明紫亜の気持ちが前に進むためには必要なことなのだ。
電話口で話している小畑の声を聞きながら立ち上がりキッチンに向かった。
そこを突っ切り奥の階段を上がり自室に入る。
鞄を置き手早く私服に着替えた。
もう4月とは言え、まだ肌寒い。
無地で黒い薄地の長袖を着る。
灰色の厚い生地でお腹の部分に英字がプリントされているパーカーをその上に羽織った。
下はジーパンに替える。
よし、と無意識に呟いているのに気付き、これから司破に会えることに喜び過ぎだと苦笑した。
司破と出逢って、明紫亜の世界は激変したのだ。
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