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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 23
しおりを挟むけれども、司破から齎される性的行為は、嫌悪としてではなく快感として捉えられる。
それはつまり、司破とならば性交も可能かもしれないということだ。
それはそれとして事実なのだろう。
気持ちの整理さえつけば明紫亜でもセックスが出来るかもしれない。
正直、自分を慰めることでさえ、気持ち悪くてあまりやりたくない行為であった。
出来ないと思っていたことが出来るようになるかもしれないと言うのは、確かに嬉しいものである。
だが、司破と一つになりたいと想う気持ちは、決してセックスがしたいという物欲的な気持ちではないのだ。
気持ちを繋げた先にある『何か』を知りたい。
その『何か』の為に人は体を繋げるのか、単なる動物の本能でしかないのか。
出来ることならば、司破との肉体関係に本能は持ち込みたくはなくて、それでも実際は互いの欲求を満たすための行為であることに違和感を拭えずにいる。
ただ快感に流されての行為ではなく、其処にちゃんとした理由が欲しかった。
しかし、逆に言うならば、明紫亜はとっくにそれが無理だと解っているのだ。
幼い頃、幾度となく繰り返し目撃した母の情事に、快楽以外の理由など存在しなかった。
毎回違う男と肌を合わせ悶える彼女の中に、恋愛という感情はまるでなかったし、それは男の方も同様であるように明紫亜には思える。
一緒にいるための手段ではなく、単なる性欲を発散させるためのツールがセックスだったのだ。
そう思ってきたからこそ、明紫亜はその行為に嫌悪を覚えるし、司破との関係がそうなってしまうことを心の何処かで恐れている。
明紫亜と司破は、全く両極端に位置していた。
或いは一番遠い存在かもしれない。
だからこそ、互いのやじるしが嵌り合うのだろう。
ベクトルの向く方向が互いを向き合っているのは、対極に位置しているからなのだ。
解り合えるのに、実のところ一番離れている。
近い存在なのだと思うのは、ただの思い込みで、本当は誰よりも距離があった。
それ故に、常に飢餓感に襲われる。
足りないと思ってしまう。
もっともっと彼のことを知りたい、近付きたい。
司破の一番になりたかった。
もしもセックスに意味を持たせるとするならば、司破に近付く為に必要な行為なのだろう。
自分の中を司破で埋め尽くし、彼のことだけを考えて生きていけたら、それは幸せなのかもしれない。
けれど、『何か』が違うような気がしてしまう。
その『何か』こそが明紫亜の向き合うべき過去であり、自分自身で受け止めない限りはセックスなど無理なのだと解っていた。
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