あべらちお

Neu(ノイ)

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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

凹凸の巡り合わせ 29*

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唇を噛み締めて、必死で堪える。
司破の手は好きだ。
触られると幸せが体中を巡っていく。
愛しい人に、優しく触れて貰えるという事が、幸せで嬉しくて、もっともっと、と貪欲に求めてしまうのが恐ろしくて、逃げたくなる時がある。
許容しきれない幸せと快感が綯い交ぜになって明紫亜を責めた。
汚い自分は、求めてはいけないのに、もっともっと、司破が欲しくなる。
体中を弄(まさぐ)って、司破で一杯にして貰いたい。
頭の中から、他のもの全て、余計なもの一切を消し去って、司破だけに溺れたい。


 手を伸ばして、司破の髪を掴んだ。
怖い、逃げたい、もっとして、と頭の中がグチャグチャで支離滅裂で、明紫亜は涙ぐむ。

「司、破さん」

乳首を歯で挟まれ上に引かれた。
じんじんと痛んで、其処は敏感に刺激を吸収して、赤く色を変え固くなる。
反対の尖りも、指で弄られて、キュンと上を向いていた。

「なに」

司破が顔を上げる
乳首を歯に挟んだまま顔を上げて、含み笑いと共に、明紫亜を窺う。

「セックス、するの?」

これは、擬似プレイではなくて、それならば、こういう行為を言葉に表すのに、それしかなかった。
司破の唇に、ちゅう、と乳首を吸われ、ひゃん、と変な声が飛び出す。

「しねぇよ、馬鹿キノコ」

くつくつと笑う司破の手が、胸から伸びてきて、頭を、ぼふんと叩かれた。

「入れられんの嫌なんだろ? それに、するなら俺の家だ。こんなボロ屋でやったら崩壊すんぞ。今日は擦り合うだけ、な」

なぁんだ、と残念そうに言葉を返して、それでも本当は安心していて、くたりと笑う。
擦り合うのは、気持ち良かった。
司破の昂ぶりを感じると、嬉しくなった。
ちゃんと役に立てていると実感出来るのは、明紫亜にとっては重要なことなのだ。
うん、と肯定を示して口元を両手で押さえる。
ぎゅう、と目を瞑った。

「……ああくそ、キノコの分際で」

いつものように悪態を吐かれて、吐息が乳首を擽った。
熱い舌に潰され、転がされ、反対側は指で抓られる。

「ぁ、っ、は、っ、ん、ん、っ、っ」

足先が、ぴんと伸びた。
びくびく、と体が震える。
ふぁあ、と手の隙間から息が逃げていく。
気持ちが良いのは、それを齎すのが司破だから、なのだ。
慣れた人間には触れられても平気だが、性的な興奮を抱いたことはなかった。
逆に想像すると、平気だったものもダメになる。
人間全部が酷く醜悪に思えた。
それをセックスに溺れた人間を見て育ったからだと、環境のせいにするつもりはない。
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