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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
凹凸の巡り合わせ 01
しおりを挟む【凹凸の巡り合わせ】
桜舞散る頃、其れは新生活の始まる4月の上旬。
神沼 明紫亜(カミヌマ メシア)は、周りの生徒から離れたところを歩き、入学式の行われる体育館を目指していた。
ふんふふーん、と鼻歌に合わせて、頭のマッシュルームが揺れる。
彼の奇抜な髪型は、視線を集めているが、当の本人は気付かない振りを続けていた。
昔からのことで慣れっこなのだ。
気にすることに意味はない。
それならば、気にしないのが最上の選択だろう。
明紫亜は、自分を偽るのが得意だった。
幼い頃から嫌なことは全て、笑顔とおとぼけで覆い隠してきた。
此方が笑えば、何となく収まるところへと行く。
とぼけてバカを演じれば、何となく上手く収まる。
そうやって彼は、己すらも騙しながら生きている。
それを嫌だとか、虚しいだとか、そういったマイナスの気持ちで受け止めたことはない。
明紫亜は非常に前向きで底抜けに明るい自殺願望者である。
しかしながら、自殺願望者の癖に中途半端に生きたいと願い、それ故に己が死んでしまわぬように、性格補正が掛かるようになり、いつしかそれが自然となっただけの話で、本来ならば、きっと他の自殺願望者のように絶望に押し潰されては泣きべそをかいているような人間ではある。
明紫亜とて、それは認識済みだ。
承知した上で、楽しいことを考える努力をしている。
辛いことなどあげたらキリがない。
それこそ最近、愛しいと思える人間に出逢えたのに、何処の誰とも解らず、このまま逢わずに終わるかもしれない、なんとも悲しい出来事があった。
けれども、性格補正とは素晴らしい出来で、マイナスに向かう本来の意識を押し込めてくれる。
――一度出逢えたんだから、確率の神様に僕は愛されていて、何処かでバッタリ、なんてこと普通にあるんじゃね? 寧ろ、それしかないよねー!
何処から湧いてくるのか謎な自信で、明紫亜の心の中は溢れていた。
早く逢いたいなあ、と頭の中で幸せな妄想が、もわんもわんと拡がっている。
勿論、明紫亜の幸せとは、通常とはそれなりに異なり、出逢った時のように互いの性癖を刺激し合い、性的に高め合っていくことであった。
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主義に反することは強要しない方がいいだろう。
彼の主義に適する人間になって、気持ち良く殺して貰えるように頑張るのだ。
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