あべらちお

Neu(ノイ)

文字の大きさ
上 下
7 / 242
一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

やじるし 05

しおりを挟む


パタパタとスリッパを鳴らし、入口を抜けて直ぐに設置されたソファーにボスンと腰を降ろす。
目の前の壁際にはテレビがあった。
ソファーの後ろ、部屋の奥にはキングサイズのベッドが一つ。
シンプルな造りのラブホである。
少年は立ち上がり、今度はベッドにダイブした。
ボフンッ、と音がして少年の体は何度か小さく弾み、その後マットに沈んでいく。

「こういうところ、初めてか?」
「それは勿論。キノコな僕は童貞さんですよ」

あまりのはしゃぎように、青年は苦笑を浮かべた。
殺してくれなどと衝撃的な台詞を吐く割に、中身はまだ幼い。
顔を上げた少年は、俯けから仰向けにゴロリと寝返りを打って体勢を変えると、にししと笑い、自身の頭髪を指差した。
確かに、茶褐色のその髪は、ふんわりと丸いフォルムでマッシュルームにも見える。
眉毛の少し上で揃えられているぱっつんカットな前髪も、どこか笑いを誘う。
堪え切れない笑い声を上げる青年は、自分が他人と笑っている異常さに気が付く。

「お前、楽しいな。誰かといて、楽しい気分になるのは、初めてかもしんねえ」

複雑な表情で青年もスリッパを履いてベッドに足を向けた。
ダイブした勢いで脱げた少年のスリッパを揃えた後、寝転がる彼の隣に腰を落ち着かせる。

「それは多分、偽らなくてもいいから、楽なんですよ」
「え?」

ふふ、と優しく笑う少年が宣い、青年は目を瞬かせた。
少年のその顔持ちは、子供の癖に大人びていて、きっと世の中の色々な出来事も醒めた目で見詰めているのだろうと推測された。

「人様に言えないような性癖は、隠そうとするでしょ? 偽りながら生きていたら、それは息も詰まって楽しく感じないです。でも、僕には隠す必要がないから、それだけ心に余裕も出来て楽しめる。……のかなあ、って推測です」

てへぺろっ、と巫山戯て舌ベロを覗かせ、額に拳をコツンと宛てている少年は、年端もいかぬのに、恐らくは真理をついている。
そして、巫山戯た行動も青年に気遣ってのことなのだ。

「可愛くねえんだよ」

面白くねえな、と一人呟き、スリッパを脱ぎ捨てベッドに上がり込む。
少年を跨ぐようにして、彼の顔横に両手を着いた。

「あら、早速セックスですか?」

緊張した様子もなくケロリと言葉を吐く少年は、愉しそうに笑っている。
ちげぇよ、と軽い力で頭突きをかませば、少年はうっとりとした顔を向けた。

「では、殺してくれるんですか?」

恍惚の表情で尋ねる言葉は、熱を帯びている。
その顔は、少年にしては淫靡で、頭がクラリとする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...