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閑話:アリスと兎と卒業式
アリスと兎と卒業式 01
しおりを挟む【アリスと兎と卒業式】
本日は晴天で御座いますよ。
顔を合わせた途端に、家政婦の長田(オサダ)が発した言葉である。
鉄仮面のように動かない顔で、お辞儀をしている彼女。
家政婦につきものであるメイド服も、ちゃっかり着ている。
しかしながら、ピチピチの女の子ではない。
もう結構な年齢だ。
部屋の前の廊下で、長田と挨拶を交わし、一階に降りて行く。
口許を押さえることなく、大きな口を開ければ、欠伸が溢れた。
洗面所に入ろうとしたところで、最近義理兄弟になった義弟の有住 翔(アリス ショウ)と八会わせた。
旧姓は阿東(アトウ)だった翔が、有住の姓になるのには一悶着あったのだが、それはまた別の話なので割愛させて貰う。
洗面所から出ようとしていた翔がふんわりと微笑んだ。
義兄となった有住 架(アリス カケル)は、その笑顔に弱かった。
翔は可愛い系男子で、犬に例えるならばチワワ、鳥に例えるならばひよこ、ウサギに例えるならばミニウサギ、ととにかく愛でたくなる容姿なのだ。
架の顔も自然と綻ぶ。
「おはよう、カケル。良く眠れた?」
「はよ。お前こそ、ちゃんと寝たのかよ? 今日は晴れ舞台だぞ。ヘマすんなよ」
「ふふ、僕がする訳ないでしょ? カケルじゃないんだから」
しかしながら、この可愛らしい生き物には、毒が備わっているようで、意外と毒舌で腹黒い。
どちらかと言えば強面の部類に入る、不良風に決めている架の表情がひきつった。
「俺だってヘマなんかしねぇよ。ただ証書を貰うだけだろ」
「そうだね。そのぐらいなら、カケルでも出来るか」
ごめんね、と謝っている翔であるが、完璧に楽しんでいた。
口許が緩んでいるのだ。
彼なりにテンションが高いようである。
そう思えば、少しの嫌味も流せるような気がする架であった。
「ったりめぇだろ」
にっ、と悪戯な笑みをみせると、頭一つ分小さな翔の額にコツンと拳を当てて、洗面所の奥に進んだ。
「先にご飯貰うね」
背中越しに声を掛けられ、「おう」と返事を返しつつ、無駄にでかい洗面台の前に立った。
洗面台に取り付けられた鏡に己の姿が映り込む。
白に近い金髪の髪に、ピアスを着けた耳、整えられた眉、今風にカットされた髪型。
パッと見は不良以外の何者でもない架だが、その実、意外と真面目な男である。
彼はおもむろにポケットに手を入れた。
取り出されたのは、昨今TV通販などで見掛ける、白髪に黒い粉末を掛けて黒髪にみせると言う商品だった。
一旦、それを鏡の前に置き、まずは手を洗い始める。
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