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一章:精神病×難病×家庭教師
嫉妬ですか? 04
しおりを挟む『んー、バイト前。ほら、昼言ってた話。USJ行けそうだって報告。明日にでも皆に声掛けてみるわ』
「え、マジ!? でも、無理しなくても」
一瞬、嬉しさに笑みが浮かぶも、すぐに眉を顰めた。
電話口で七海が笑うのが解った。
『バーカ、気にすんなって言ったろ。臨時収入、入ることになったんだよ。七海君は優秀なんだ』
ぬはははは、と偉そうな笑い声が聞こえてくる。
思わず表情が綻んだ。
嬉しかったのだ。
お礼を言おうと口を開いた時、携帯の向こうで七海が宣った。
『ああ、それから。ワ、タ、ル……だろ? ちゃんと名前で呼べよ』
ぶはっ、と吹き出してしまった。
椎名さんが此方を怪訝な目で見ている。
「なっ、ななな、七海!」
『わー、たー、るー』
抗議する声を上げれば、窘めるように声色が低くなった。
椎名さんの前で七海の名を呼ぶのは非常に恥ずかしい。
だが、七海も引きそうになかった。
「わ、わた……る?」
顔が熱い。
恥ずかしさから俯き加減でそう口にした。
その時だった。
手元から携帯を取り上げられる。
え、と隣を振り向くと、怖い顔をした椎名さんが、俺の携帯を持っていた。
理解が追い付かないままで、目の前で椎名さんは通話口に向かい喋り出す。
「もしもし、お話の途中でごめんね。今勉強中だから、そろそろ良いかな?」
頭の中は真っ白で、俺は何も考えられずに、ただ眺めていた。
七海がなんと答えたのかは解らないが、通話の切られた携帯が俺の元に戻ってくる。
「告白された友達って、今の子?」
静かに問われた内容に、条件反射で頷いていた。
そっか、と呟いた椎名さんは、そのまま黙り込んでしまう。
「あ、あの。勉強、しようか」
沈黙に堪えきれずに机に向かおうとして、腕を掴まれた。
「つぅ君は、彼のこと好きなの?」
「ゆ、友人として、だよ。七海にも言ったし、それで良いって」
眉が切な気に寄せられている。
椎名さんは悲しそうな顔で聞いてきた。
俺は首を横に振った後で、椎名さんの目を見詰めた。
掴まれている腕が放される。
「ごめんね。勉強、続きしようか」
力無く笑って椎名さんはそう告げた。
俺はどうしたら良いのか解らずに、ただ言われた通りに机に向かう。
嫉妬ですか、と聞きたくて、けれども言葉は出ていかなかった。
椎名さんは俺を好きだと言ってくれたが、必ずしもその好きがイコールで俺と同じものとは限らない。
俺自身、好きがどういった好きなのか、まだ答えは見付かっていないのだ。
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