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一章:精神病×難病×家庭教師
嫉妬ですか? 03
しおりを挟む恥ずかしさに頬が朱に染まる。
さり気なく視線を逸らした。
「ねえ、つぅ君。俺みたいなおじさんが好きになっても、許されるかな? 嫌じゃない?」
「……や、じゃない。嫌じゃないよ」
心臓が煩くて、真っ赤になったままの頬は熱を帯びているのか熱かった。
逸らした視線も戻せずにいる。
椎名さんの指が頬を撫でた。
聞きたいような確認するのが怖いような、その言葉を口にしていいのか、俺は悩んでいた。
俺のこと好きなの、とハッキリさせたい気持ちもあれば、このまま有耶無耶にしてしまいたい気持ちも抱いている。
「そっか、良かった」
椎名さんの安堵した声に目線を向ければ、彼は顔を綻ばせていた。
こつん、と額がぶつかる。
視界一杯に椎名さんの優しい顔が広がった。
「何が良かったの?」
思わず尋ねてしまったのは、彼の真意が知りたかったからだろう。
「おじさんは嫌かなって思ったから言わないでいようかなとも思ったんだ。つぅ君に嫌われたくないし」
吐息が顔に掛かる距離で、椎名さんが微笑んでいる。
見詰めてくる視線が甘いような気がした。
「嫌いになんて、ならないよ。椎名さんは、大事、だから」
そっ、と目線を下に逸らす。
ぽつりぽつり、と消え入りそうな声色で、ゆっくりとした口調で告げていく。
「うん。ありがとう。俺も、つぅ君が大事だよ」
手に温もりを感じた。
椎名さんの手に包み込まれた掌は、とても暖かくて、何故だか泣きたくなる。
そんな最中に、雰囲気をぶち壊すかのようにそれは鳴り響いた。
着信音である。
マナーモードにしていなかったようだ。
ゆったりとした動きで椎名さんの手が離れていく。
電車の中で鳴らなくて良かったと思いながら、急いでポケットの中から携帯を取り出した。
発信元は七海のようだ。
「出てもいい? 友達」
恐る恐る椎名さんを窺えば、首肯を返された。
表情は読み取れない。
それでも、切れない内にと通話ボタンを押した。
「も、もしもし?」
『おお、出た出た。今電話大丈夫か?』
雑音の混じる声は、どうも苦手である。
電話は得意ではない。
「家庭教師の人、来てくれてるから、手短になら」
『おー、今日だった? 悪いね、邪魔したか』
七海はいつもと変わらない。
のらりくらりとした返答に、数時間前に好きだと言われた事実が幻のようにも感じられる。
「邪魔って訳じゃ。それより用件なんだよ? 七海バイトじゃないの?」
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