11 / 33
一章:精神病×難病×家庭教師
友人は大切に 04
しおりを挟む昼休みに入り、俺はゆっくりと立ち上がる。
ずっと座っていた後に立つと、足の違和感が強いために良くふらついてしまう。
よっ、と小さく声を溢し、片手に弁当箱を持ち、ひょこひょこと七海の机まで歩いて行く。
七海は近くの席の生徒と話していたが、俺に気付くと、話を切り上げたのだろう、片手にコンビニ袋を下げて近付いて来る。
「メシ、食い行くか。歩ける?」
「おう、大丈夫大丈夫! どこ行く?」
足を軽く引き摺る俺に、七海の眉は下がる。
心配ないと笑顔を向けるが、七海の表情は冴えない。
「中庭にでも行くか」
「ああ、職員室の前の?」
「そっ。先生の目に着きやすいから、あんま人いねえのよ。穴場中の穴場。悪さをしなきゃね。それに、ツウリの場合、何かあった時に大人の目が届いてる場所のが良いっしょ?」
へらへらとしているが、やはり七海は色々なことを考えてくれている。
大人だ。
俺は頷いて踵を返した。
七海と並んで教室を出て行く。
中庭には、ベンチやカフェにあるような丸いパラソル付きのテーブルが幾つかある。
それでも、あまり人がいないのは、職員室の前だからであり、利用者の殆んどが教員であるからだ。
今日も先生達の姿はちらほらと伺えたが、生徒の姿は少数であった。
生徒会の人間や委員長クラスの真面目な生徒の姿は、少しだけ確認出来た。
真面目な人間にとっては、居心地が良いようだ。
俺達は、端っこのテーブルに荷物を置き、向き合う形で腰を落ち着かせた。
俺は弁当の包みを開き、七海はがさごそと袋の中からパンを取り出した。
頂きます、と手を合わせてから箸を手に取った。
パンの包装を豪快に破り、パンにかぶり付いた七海の口がもぐもぐと動いている。
ごくん、と飲み込んだ七海は、袋の中から有名どころのお茶のペットボトルを取り出して一口飲んでいる。
母親特性の弁当をつついている俺をまじまじと見詰め、七海が口を開いた。
「ツウリって、育ちが良いよな。毎回そうやって挨拶するし」
「いや、別に良くはないよ。母さんが煩いだけだって。そんなことより、七海に聞きたいことがあるんだけど」
俺は照れから俯いた。
いきなり何を言い出すんだ、と胸中で文句を言うも、悪い気はしない。
俺は視線だけ七海に向けて本題に入ろうとした。
「ん? 何だよ、唐突に。彼女はいないから、いつでも告白OKだぞ?」
「違うから。そうじゃなくて。ある人に出会ってから、考え方とか姿勢が前向きになったり、その人のこと特別だって想う気持ち。何て言う感情なのか解るか?」
1
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる