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一章:精神病×難病×家庭教師

友人は大切に 03

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「行きたいなら行けば良いっしょ。行動を起こす前に頭で考えてっから不安なんだろ。考える前に動いちまえば、意外と不安もなく平気だったりすんよ」

頭だけを突っ込み、きょろきょろと首を動かした後で、七海は漸く中に入る。
有り難いお言葉付きだ。
俺も入室し、七海から離れ自分の席に向かう。
七海も己の机に鞄を置いていた。

「そう、ですよねえ。俺が考え過ぎなんだよな、きっと。取り敢えずのところ、勉強と授業日数を頑張りますか」

あはは、と息を漏らし首を掻く。
カバンを机の横に掛ける。

「お前は十分頑張ってんよ。無理してんじゃねぇか、心配になるぐらいに、さ」

七海も鞄を片付けている。
優しい声色で告げられたら、俺も嬉しくなる。
込み上げてくる熱い想いがある。
不覚にも目が潤んでしまった。

「まあ、授業日数は、足りないと卒業出来ねえからなあ。気を付けろよ」

七海はへらり、と笑い付け足した。
俺は神妙な顔で頷くのだった。




 あれから暫く、七海と他愛ない話をしていた。
教室にも生徒が増えてくる。
久しぶり、とか。
元気か、だとか。
大丈夫? とか。
クラスメイト達は、一様に声を掛けてきた。
腫れ物に触れるかのようだ。
どう接して良いのか解らないのだろう。


 前まではそんなことでさえ嫌だった。
普通にして欲しいのか、特別扱いして欲しいのか、自分でも解らなく、そんな状態に酷く腹が立った。


 椎名さんに出会って、出来ることを一生懸命やれば良いんだな、と思えるようになった。
自分には、何が出来て何が出来ないのかを把握して、出来ない部分を他人に補って貰う。
出来ることに関しては、自分でやる努力も必要だと、悟ることが出来た。


 其れだから、少しだけ楽になっていた。
気に掛けて貰えると言うことは、とても幸せなことなのだ。


 俺は確実に、椎名さんに会ってから変わったように思う。
考え方や姿勢、そう言ったものが前向きになった。
何故だろうか、と考えても答えは出ないが、椎名さんの存在がとても大きくなっているということは、俺にも解った。


 其れは、両親や七海、他の人間とは違う場所に、椎名さんが居着いているのだ。
この気持ちを何と言うのか、知りたいと思うようになっていた。
だが、幾ら考えたところで、俺にはさっぱり解らないのだ。


 七海に聞いてみよう。
そう思ったのは、本当に思い付きだ。
彼は、頭も良いし、人当たりも良い。
俺の中で信頼度はピカ一に高いのだ。
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