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22 けつい

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 ケケは、ニコが戻ってからさらに翌日になって戻ってきた。

「教会を潰す? ケケッ、願ってもない、最高だ! もちろん、命に代えてもやり遂げるゼ!!」

「あわわ」

 いつになくテンションが上がったケケが、ルルのことを空に放り投げ、竜の姿となりキャッチして、飛び回り始めた。


「ケケッ、皆殺しだゼ、皆殺しだ!!」

 うきうきなケケは、高い空を旋回しながらさらに上昇する。


「ケケ、め! ルル、とてもしぬ!」

「へっ? あ、あぁごめんごめん」

 正気に戻ったケケは、すぐに地上に戻ってくれた。

 危うく窒息しかけたルルは、急いでケケから飛び降りて、ぷくっとふくれながらジャックの上いつものばしょに戻った。


「悪かったよ、ついつい気分が上がったんだ。それで、どうするって? 詳しく聞かせてくれよ。教会の奴らを皆殺しにするんだよな? なっ??」

(ケケ、にんげんころすの、すきなのか)

 ケケは目を輝かせて、身を乗り出している。


「ケケ。チビ、どこいった?」

「あぁ、オレについてきたチビな。多分、コボルトと一緒にいるんじゃねーかな? 誰かに踏み潰されてなければ」

「ん。みんな、あつめる」

 ルルは頷き、ジャックのツノをぺちぺち叩いて言う。


「今から作戦会議か、いいな! よし、オレは一旦温泉に行ってくるから、どこに集合するか教えてくれ」

「いまから」

「え?」

「いますぐ。おんせん、むり」
「え……いや、ルル。オレついさっきまで火山にいたんだぞ? あの埃っぽいところに。確かにオレはそんなに汗はかかない体質だけど、さすがにお風呂なしはちょっと、せめてシャワーくらいは……」


「ジャック。ニコ、どこ?」

 ルルはケケを無視してジャックに話しかけた。

「めぇ」
「ん。よんで」
「めぇえええ!!!」

『ヨンダ?』
「よんだか?」

 ジャックの遠吠えにより召喚されたポポは、屋根の上から現れた。


 ルルはそれを見上げて、「ん」と頷く。

「みんな、あつめて」

『ワカッタヨ!』
「ふむ、ワラワとポポなら、皆に伝えられるな。場所はどうする?」

「どこでもいい」

「なら、坂の上の社にしようか。あの場所は広いからな、ワラワらが集合するのにもちょうどいい。いくぞ、ポポ!」
『イクゾ!』


 ポポはポンポン跳ねた後、べちゃっと溶けて屋根を伝い、雨どいを伝って水路に入っていった。

「……すごいな、スライムにあんなに機動力があるなんて、知らなかったゼ」

 ケケが感心したように言う。


「スライム、からだ、じざいにかえる。ほうほう、まなべば、はやくなる」

「って言っても、そんなの誰も思ってなかったワケだろ? オレもそうだし、ポポ自身だって知らなかったはずだ。ルルは知ってたのか?」

「……ん」

「不思議だなァ。ルルは魔物の潜在能力みたいなのを、見抜く力があるのかもな。なァ、オレも何か、強くなれる方法ないか?」

「……」

 ルルはケケのことを一瞥し、しばらく考えていたが、目を逸らし、ジャックに跨った。


「……ケケ、しらない」

「しらない? いや、いくらなんでもそんな投げやりなことあるか?」

「……ケケ、つよい。まもるひつよう、ない」

 ルルはそう小さく呟いた。


「……ケケッ、そうだな。信頼、されてんだなオレ?」

「ん。しんらい、してる」

「ケケケッ、そうかそうか。嬉しいゼ」


 ケケはうんうんと頷いて、竜の姿へと変化した。

「トコトコ地面を歩くのもいいけど、ここは坂になってて疲れるからな。一緒に飛んでいこうゼ」

「……ん」

 ルルが頷くと、ケケは大きな目を細め、ルルをジャックごと持ち上げ、空へと舞い上がった。


「教会はオレの大好きなのカタキなんだ。ずっと、ずっと、ずうっと、ぶっ潰したいと思ってたんだゼ」

「……ルル、へいわなせかい、めざしたい」

「ケケッ。分かってるゼ。でもヤツラは、争いを望んでるだろ? この戦いは避けられないんだゼ」

「……ん」


 それはルルも知っていた。
 

 奪われたものを取り返すには、奪うしかない。

 平和を勝ち取るには、敵を排除しなければならない。


 それをルルは知っていた。

 その背中に背負った古めかしい魔銃と、どうにか半分くらいねじ込んだカートリッジが、やけに重く感じた。
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