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第2番 忌まわしき記憶
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大きな枝垂れ桜の下、3人並んで写真を撮る。真ん中にいる若き日の私の背中で恋人繋ぎをする、私のかつての親友と初恋の相手。
その光景を見て絶望し、叫び狂う私。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
どす黒い光が体を包み私はその場から消えた。
━━━━━━━━━━━━━━━
「はっ!?はぁ…はぁ…っ……なんだ夢か…。」
どうやら私は夢を見ていたらしい。
夢というものは、記憶の情報処理に伴って起きるものだと言う説があるが、何故こうも嫌な思い出を処理するのだろうか。早く忘れてしまいたいのに、夢で見るとつい昨日の事のように嫌なことが頭の中を駆け回る。
「まったく…なんで今更……。」
隣を見ると下着姿のシスターがすやすやと寝ている。
「…救世主様ぁ……。」
「……救世主か…本当はそんなものでは無い、ただの哀れな道化だというのにな。馬鹿馬鹿しい……。」
寝言を言うシスターの頬をつつく。
ふにふにと柔らかい、白玉のようだ。
そのまま白い下着に包まれた豊満な胸に手を伸ばす。
「ふぁ……。」
ごろんと寝返りをうち反対側を向く。
「チッ、なんだこの女。本当は起きてるんじゃあないのか。」
後ろから抱きしめ胸を鷲掴みにする。
張りの良い肌、程よい弾力、程よい柔らかさ。癖になる感触だ。
「んっ……んん…。」
ピクンと体を震わせ声を漏らすシスター。体を捻ったり私の手から逃れようともぞもぞと動く。
しっかり押さえ込みそのまま私は胸を揉み続ける。
「ぁ…っ……ん……んぅ…?」
しまった、どうやら目を覚ましたようだ。私は胸を触ったまま寝たふりをすることにした。
「めっ…メシア様!?やっ…ぁっ……。」
私の手を振り払いベッドから出るシスター。頬を赤く染めて手で胸を隠している。
「はぁ…はぁ……もう…メシア様ったら…!!あ、朝ごはんの準備をしないと…。」
そそくさと服を着て部屋を出る。
……何故私は今寝たフリをしたのだ、そのまま襲えばよかったものを…。
相変わらずのチキンである。
「……二度寝といくか。」
不貞腐れた私はそのまま二度寝することにした。シスターの女性特有のいい匂いに包まれながら…。
━━━━━━━━━━━━━━━
"ジュー"と卵を焼く音、"トントントン"と軽快なリズムで野菜を切る音が、教会の台所から聞こえる。教会のシスターが料理をしているのだろう。
私の名前はシスター。クロノシアの由緒ある小さな教会の修道女です。父は幼い頃に他界し、ずっと母に女手一つで育てられました。
とても優しく、おおらかで。自分のことよりも常に周りの人を優先する母は、私の目標で誰にでも胸を張って紹介出来る理想の母でした。
母は言っていました「この救世の書のとおり、いつか必ず#救世主__メシア__様が降臨され、世界を救いに…平和に導く#。」と…。
そんな母も1年前に病気で他界しました。今はこの私、シスターがこの教会を守り、人々を導いていくのです。
そして最近、ついに救世主様が降臨されたのです!
メシア様は救世の書に記されているように、その身に白き衣を纏われ、人智を超えた神の力を自在に操る方でした。その力を使い、何人もの迷える子羊を救い、導かれました。そのおかげか、段々とクロノシアの治安が良くなっていっています。この調子で世界が平和になるのもそう遠くないかもしれません。
…ただ、メシア様には少し手を焼く所があるのです。
まず1つ「我儘」。救世主と聞くと聖人君子と誰もが想像するはず。ですがこのメシア様は、民からの助けを求める声に対して、必ず大きな対価を求めるのです。
お金、食料、娯楽など様々な要求をします。確かにタダで何かをしてもらう、というのは虫のいい話なのかもしれません。しかしあまりにも度が過ぎているのです。そのため、泣く泣く諦める人もいますが、それでは世界は平和にならないので、その…私が……すみません!ちょっと言えないです!!
そして2つ目、メシア様は思っていたよりも…「ハレンチな方」でした…。
毎朝目覚めの口付けを要求してきたり…わ、私のスカートの中に入ってきたり…それに…………こ、これ以上は言えないですっ…!!
…それでも、メシア様はやっぱり救世主なんだって思うことの方が多いです。何度も民や私を救ってくれたからです。不治と言われた病を治し、天災を沈め、凶悪な賊を追い返したこともありました。
あの方がいれば、この世界は良い方向に向かうそんな気がするのです。
━━━━━━━━━━━━━━━
今日もまた、シスターの目覚めのキスで起きて、シスターの作った料理を食べ、様々な願いを持った迷える愚民を救済する。
絵に描いたような異世界転生の主人公だが、実際楽しくもなんともない。私の心が動くようなそんな出来事が起こらないのだから。
いつものように教会の玉座に腰掛け、静かに民が来るのを待つ。
その時だった「ダァン!!!」と大きな音を立てて大扉が開け放たれた。
「ここか?なんでも願いを叶えてくれるっていう救世主とか言う奴がいる教会は。」
二角帽を被り、眼帯をつけ、左手がフックの絵に描いたような海賊が。バンダナをつけシマシマの服を着た、これまた絵に描いたような手下を連れて入ってきた。
「か、海賊!?…ですが、ここに来られたからには皆子羊。何かお困りですか??」
狼狽えていたシスターだったが、気持ちを切り替え笑顔で尋ねた。
これがプロか。と率直に思った。
だが非力な女に屈強な海賊。どうなるかは目に見えていた。
「ほぉ、結構可愛いじゃん。今夜俺たちと仲良くやろうぜ~?」
「ふぇっ!?あ、あの…困ります…。」
「困りますぅ~…だってよ。はははは!!」
下卑た笑みを浮かべシスターに絡む海賊たち。シスターは俯いてもじもじしている。あんな見た目のヤツらにそんな風に絡んだらそうなる事くらい分かるだろうに、お人好しな女だ。
「おい、メシアさんよぉ~。頼みがあるんだよ。馬鹿でけえ船とありったけの武器を出してくれ。」
「なんで私がそんなものを出さなきゃいけないんだ?」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ!出せっつったらだせ!!この女の頭が吹っ飛ぶぞ!!!」
最初に入ってきた船長と思しき男が手下に指示を出し、シスターの頭に銃口を突きつけた。
「ひっ…!お、おやめ下さい……ここは神聖な場所…こ、このような行いは神に対する侮辱……。」
「てめぇは黙ってろ!ぶち殺すぞ!!」
涙目で騒ぐシスターの声を遮る海賊。
シスターが「助けてください……」というような目で私を見ているが、自業自得だし助ける義理もない。
「残念だが対価を払えないような輩にしてやる事は何も無い。とっとと帰って海の上でどんぶらこしてろ。」
そう言って帰らせようとする。
だがこういう輩がどういう事をしてくるからだいたい想像がついていた。
「おい、調子に乗ってんじゃねえぞタコが!!いいから要求したものを出せっつってんだよ!!!」
「断る。というかそれが人にものを頼む態度か?床に頭擦り付けて土下座でもしたら考えてやってもいいぞ。」
「そんなに死にたいか救世主さんよぉ。もういい、殺せ。この女は美味しくいただかせてもらうがな。」
シスターに向けられていた銃口が私の方に向けられ、引き金が引かれた。
「メシア様ぁっ!!」
シスターが叫びながら私に手を伸ばす。
こいつは私の力を見くびり過ぎている、今までだって何度も発砲されてきたが1発たりとも命中していないというのに。
いつものようにゆっくりと迫り来る銃弾に手をかざし念じる。
私の手から放たれたどす黒い紫色の光は銃弾を包み込み、軌道を反転させた。そのままシスターを取り押さえている手下の雑魚の眉間に命中する。
シスターの肩を掴んでいた手がダランと落ち、そのまま崩れるように頭から血を流しながら倒れた。
「な、何が起きたんだ!?」
「なんであいつが生きててこっちがやられてるんだよ!!」
今目の前で起きた光景を理解出来ず狼狽える海賊たち。その隙をついて光のごとき速さでシスターをこちらに抱き寄せた。
「メシア様…っ!!ありが━━━━━」
「礼はいい。夜にでもまた楽しませてもらおう。お前は私のモノなんだからな?」
「ひゃいっ!?うぅ……//」
にやにやと笑いながら囁く私の言葉を理解したシスターは、顔を赤くして俯く。
自分に心酔している女がいる、というのは素晴らしいことだ。あのままあの世界で惰性で生きていてもこんなにも良い体験は出来なかっただろう。今夜もこの女を好き放題に犯してやる。
「お、おい!何勝手に盛り上がってんだ!!てめぇらはもう終わりなんだよ!!野郎共!!!その2人をぶち殺せ!!!!!!」
「「「「うおおおぉおおぉ!!!」」」」
怒号を挙げならがら私とシスターを取り囲み、銃口やら刃を向ける海賊たち。
「め、メシア様っ…!!ど、どういたしましょうか…!?」
「黙れ、怖いのなら目を瞑っていろ。」
そんなやり取りをしていると、海賊たちが一斉に発砲し、刃を振り下ろしてくる。「ひっ!!」と短い悲鳴をあげ、目をキュッと瞑るシスターをよそに、向かってくる銃弾、刃に私は冷静に対応した。
振り下ろされる刃を、銃を持つ海賊に向けるよう念じ、迫り来る銃弾は剣を持つ海賊に向かうよう念じた。
「チェックメイトだ。」
そう一言呟くと、海賊たちは銃弾に撃ち抜かれ、刃で切り刻まれ倒れた。
「な…何がっ…。」
「さて、あとは船長1人な訳だが、とっとと帰った方が身のためだぞ。」
「くっ…調子に乗ってんじゃあねぇ!!俺様は海賊のキャプテンだぞ!!!舐めんな!!!!!!」
走りながら剣を抜き斬りかかってくるキャプテン。私は倒れている海賊の手から剣を取り、相手の剣を受け止めた。
「キィン」と甲高い音が響き渡る。
「ぐっ…こ、このっ!!」
「その程度か、海賊。」
怒りに身を任せ力を込める船長だったが、私の能力によって格段に力を上げた私には適わない。
そのまま鍔迫り合いを押し切り、船長の剣を弾き飛ばす、その衝撃で船長は大きく尻もちをついた。
「フン、いい姿だなぁ。船長さんよ。」
「う……た、助けてくれ!!もう二度とここには来ねえからよぉ!!!」
剣先を首元に突きつける私を見て、泣いて懇願する船長。
「なるほど、もう二度と来ないのか。ならとっとといけ。」
「ひっ…ひぃぃ!!」
走って逃げさる船長。さっきまで威勢よく吠えていたのに滑稽な姿だ。
その船長に向かって大きく剣を振り、勢いよく衝撃波を飛ばした。
「刃の衝撃波、なんてな。とっとと逝け。」
その衝撃波は船長の首をはねた。首を失った船長はその場で倒れた。
「神聖な教会に死体の山、か。汚らわしい…。」
私はラブクラフトに念じ、散らばる死体と大量の血を消し去った。
ふとシスターの方を見やると、まだ目を瞑って震えていた。
「おいシスター。…おい、聞いているのか?」
「えっ…あ…メシア様…。あ、あれ?海賊は…?」
「私が天に導いてやった。これで今日の仕事は終わりだな。」
「さすがメシア様です!!また…迷える子羊を救済されたのですね…!!」
なんとも幸せな思考の持ち主だ、海賊どもは私が消したともつゆ知らず。こいつはそういう人間なのだろう。全ての人間が幸せになれる、そう思うような大バカなのだ。
「そんなことはどうでもいい。シスター、腹が減った。何か作れ。」
「は、はいっ!!かしこまりましたっ。」
いつものように純粋無垢な笑顔を向けるシスター。こいつの飯はなかなか美味い。
ゴミクズのような人生を送ってきたが、今はそれなりに充実している。…そう思うようにしなければ劣等感で頭がおかしくなる。
この愛の架け橋さえあれば、私は世界の頂点として立つことさえできる。気に入らないものは消し、気に入ったものは全て私のモノ。そんな世界だって作れる。
私は救世主様なのだから。そう心に言い聞かせ、救済を続けていく。
その光景を見て絶望し、叫び狂う私。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
どす黒い光が体を包み私はその場から消えた。
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「はっ!?はぁ…はぁ…っ……なんだ夢か…。」
どうやら私は夢を見ていたらしい。
夢というものは、記憶の情報処理に伴って起きるものだと言う説があるが、何故こうも嫌な思い出を処理するのだろうか。早く忘れてしまいたいのに、夢で見るとつい昨日の事のように嫌なことが頭の中を駆け回る。
「まったく…なんで今更……。」
隣を見ると下着姿のシスターがすやすやと寝ている。
「…救世主様ぁ……。」
「……救世主か…本当はそんなものでは無い、ただの哀れな道化だというのにな。馬鹿馬鹿しい……。」
寝言を言うシスターの頬をつつく。
ふにふにと柔らかい、白玉のようだ。
そのまま白い下着に包まれた豊満な胸に手を伸ばす。
「ふぁ……。」
ごろんと寝返りをうち反対側を向く。
「チッ、なんだこの女。本当は起きてるんじゃあないのか。」
後ろから抱きしめ胸を鷲掴みにする。
張りの良い肌、程よい弾力、程よい柔らかさ。癖になる感触だ。
「んっ……んん…。」
ピクンと体を震わせ声を漏らすシスター。体を捻ったり私の手から逃れようともぞもぞと動く。
しっかり押さえ込みそのまま私は胸を揉み続ける。
「ぁ…っ……ん……んぅ…?」
しまった、どうやら目を覚ましたようだ。私は胸を触ったまま寝たふりをすることにした。
「めっ…メシア様!?やっ…ぁっ……。」
私の手を振り払いベッドから出るシスター。頬を赤く染めて手で胸を隠している。
「はぁ…はぁ……もう…メシア様ったら…!!あ、朝ごはんの準備をしないと…。」
そそくさと服を着て部屋を出る。
……何故私は今寝たフリをしたのだ、そのまま襲えばよかったものを…。
相変わらずのチキンである。
「……二度寝といくか。」
不貞腐れた私はそのまま二度寝することにした。シスターの女性特有のいい匂いに包まれながら…。
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"ジュー"と卵を焼く音、"トントントン"と軽快なリズムで野菜を切る音が、教会の台所から聞こえる。教会のシスターが料理をしているのだろう。
私の名前はシスター。クロノシアの由緒ある小さな教会の修道女です。父は幼い頃に他界し、ずっと母に女手一つで育てられました。
とても優しく、おおらかで。自分のことよりも常に周りの人を優先する母は、私の目標で誰にでも胸を張って紹介出来る理想の母でした。
母は言っていました「この救世の書のとおり、いつか必ず#救世主__メシア__様が降臨され、世界を救いに…平和に導く#。」と…。
そんな母も1年前に病気で他界しました。今はこの私、シスターがこの教会を守り、人々を導いていくのです。
そして最近、ついに救世主様が降臨されたのです!
メシア様は救世の書に記されているように、その身に白き衣を纏われ、人智を超えた神の力を自在に操る方でした。その力を使い、何人もの迷える子羊を救い、導かれました。そのおかげか、段々とクロノシアの治安が良くなっていっています。この調子で世界が平和になるのもそう遠くないかもしれません。
…ただ、メシア様には少し手を焼く所があるのです。
まず1つ「我儘」。救世主と聞くと聖人君子と誰もが想像するはず。ですがこのメシア様は、民からの助けを求める声に対して、必ず大きな対価を求めるのです。
お金、食料、娯楽など様々な要求をします。確かにタダで何かをしてもらう、というのは虫のいい話なのかもしれません。しかしあまりにも度が過ぎているのです。そのため、泣く泣く諦める人もいますが、それでは世界は平和にならないので、その…私が……すみません!ちょっと言えないです!!
そして2つ目、メシア様は思っていたよりも…「ハレンチな方」でした…。
毎朝目覚めの口付けを要求してきたり…わ、私のスカートの中に入ってきたり…それに…………こ、これ以上は言えないですっ…!!
…それでも、メシア様はやっぱり救世主なんだって思うことの方が多いです。何度も民や私を救ってくれたからです。不治と言われた病を治し、天災を沈め、凶悪な賊を追い返したこともありました。
あの方がいれば、この世界は良い方向に向かうそんな気がするのです。
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今日もまた、シスターの目覚めのキスで起きて、シスターの作った料理を食べ、様々な願いを持った迷える愚民を救済する。
絵に描いたような異世界転生の主人公だが、実際楽しくもなんともない。私の心が動くようなそんな出来事が起こらないのだから。
いつものように教会の玉座に腰掛け、静かに民が来るのを待つ。
その時だった「ダァン!!!」と大きな音を立てて大扉が開け放たれた。
「ここか?なんでも願いを叶えてくれるっていう救世主とか言う奴がいる教会は。」
二角帽を被り、眼帯をつけ、左手がフックの絵に描いたような海賊が。バンダナをつけシマシマの服を着た、これまた絵に描いたような手下を連れて入ってきた。
「か、海賊!?…ですが、ここに来られたからには皆子羊。何かお困りですか??」
狼狽えていたシスターだったが、気持ちを切り替え笑顔で尋ねた。
これがプロか。と率直に思った。
だが非力な女に屈強な海賊。どうなるかは目に見えていた。
「ほぉ、結構可愛いじゃん。今夜俺たちと仲良くやろうぜ~?」
「ふぇっ!?あ、あの…困ります…。」
「困りますぅ~…だってよ。はははは!!」
下卑た笑みを浮かべシスターに絡む海賊たち。シスターは俯いてもじもじしている。あんな見た目のヤツらにそんな風に絡んだらそうなる事くらい分かるだろうに、お人好しな女だ。
「おい、メシアさんよぉ~。頼みがあるんだよ。馬鹿でけえ船とありったけの武器を出してくれ。」
「なんで私がそんなものを出さなきゃいけないんだ?」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ!出せっつったらだせ!!この女の頭が吹っ飛ぶぞ!!!」
最初に入ってきた船長と思しき男が手下に指示を出し、シスターの頭に銃口を突きつけた。
「ひっ…!お、おやめ下さい……ここは神聖な場所…こ、このような行いは神に対する侮辱……。」
「てめぇは黙ってろ!ぶち殺すぞ!!」
涙目で騒ぐシスターの声を遮る海賊。
シスターが「助けてください……」というような目で私を見ているが、自業自得だし助ける義理もない。
「残念だが対価を払えないような輩にしてやる事は何も無い。とっとと帰って海の上でどんぶらこしてろ。」
そう言って帰らせようとする。
だがこういう輩がどういう事をしてくるからだいたい想像がついていた。
「おい、調子に乗ってんじゃねえぞタコが!!いいから要求したものを出せっつってんだよ!!!」
「断る。というかそれが人にものを頼む態度か?床に頭擦り付けて土下座でもしたら考えてやってもいいぞ。」
「そんなに死にたいか救世主さんよぉ。もういい、殺せ。この女は美味しくいただかせてもらうがな。」
シスターに向けられていた銃口が私の方に向けられ、引き金が引かれた。
「メシア様ぁっ!!」
シスターが叫びながら私に手を伸ばす。
こいつは私の力を見くびり過ぎている、今までだって何度も発砲されてきたが1発たりとも命中していないというのに。
いつものようにゆっくりと迫り来る銃弾に手をかざし念じる。
私の手から放たれたどす黒い紫色の光は銃弾を包み込み、軌道を反転させた。そのままシスターを取り押さえている手下の雑魚の眉間に命中する。
シスターの肩を掴んでいた手がダランと落ち、そのまま崩れるように頭から血を流しながら倒れた。
「な、何が起きたんだ!?」
「なんであいつが生きててこっちがやられてるんだよ!!」
今目の前で起きた光景を理解出来ず狼狽える海賊たち。その隙をついて光のごとき速さでシスターをこちらに抱き寄せた。
「メシア様…っ!!ありが━━━━━」
「礼はいい。夜にでもまた楽しませてもらおう。お前は私のモノなんだからな?」
「ひゃいっ!?うぅ……//」
にやにやと笑いながら囁く私の言葉を理解したシスターは、顔を赤くして俯く。
自分に心酔している女がいる、というのは素晴らしいことだ。あのままあの世界で惰性で生きていてもこんなにも良い体験は出来なかっただろう。今夜もこの女を好き放題に犯してやる。
「お、おい!何勝手に盛り上がってんだ!!てめぇらはもう終わりなんだよ!!野郎共!!!その2人をぶち殺せ!!!!!!」
「「「「うおおおぉおおぉ!!!」」」」
怒号を挙げならがら私とシスターを取り囲み、銃口やら刃を向ける海賊たち。
「め、メシア様っ…!!ど、どういたしましょうか…!?」
「黙れ、怖いのなら目を瞑っていろ。」
そんなやり取りをしていると、海賊たちが一斉に発砲し、刃を振り下ろしてくる。「ひっ!!」と短い悲鳴をあげ、目をキュッと瞑るシスターをよそに、向かってくる銃弾、刃に私は冷静に対応した。
振り下ろされる刃を、銃を持つ海賊に向けるよう念じ、迫り来る銃弾は剣を持つ海賊に向かうよう念じた。
「チェックメイトだ。」
そう一言呟くと、海賊たちは銃弾に撃ち抜かれ、刃で切り刻まれ倒れた。
「な…何がっ…。」
「さて、あとは船長1人な訳だが、とっとと帰った方が身のためだぞ。」
「くっ…調子に乗ってんじゃあねぇ!!俺様は海賊のキャプテンだぞ!!!舐めんな!!!!!!」
走りながら剣を抜き斬りかかってくるキャプテン。私は倒れている海賊の手から剣を取り、相手の剣を受け止めた。
「キィン」と甲高い音が響き渡る。
「ぐっ…こ、このっ!!」
「その程度か、海賊。」
怒りに身を任せ力を込める船長だったが、私の能力によって格段に力を上げた私には適わない。
そのまま鍔迫り合いを押し切り、船長の剣を弾き飛ばす、その衝撃で船長は大きく尻もちをついた。
「フン、いい姿だなぁ。船長さんよ。」
「う……た、助けてくれ!!もう二度とここには来ねえからよぉ!!!」
剣先を首元に突きつける私を見て、泣いて懇願する船長。
「なるほど、もう二度と来ないのか。ならとっとといけ。」
「ひっ…ひぃぃ!!」
走って逃げさる船長。さっきまで威勢よく吠えていたのに滑稽な姿だ。
その船長に向かって大きく剣を振り、勢いよく衝撃波を飛ばした。
「刃の衝撃波、なんてな。とっとと逝け。」
その衝撃波は船長の首をはねた。首を失った船長はその場で倒れた。
「神聖な教会に死体の山、か。汚らわしい…。」
私はラブクラフトに念じ、散らばる死体と大量の血を消し去った。
ふとシスターの方を見やると、まだ目を瞑って震えていた。
「おいシスター。…おい、聞いているのか?」
「えっ…あ…メシア様…。あ、あれ?海賊は…?」
「私が天に導いてやった。これで今日の仕事は終わりだな。」
「さすがメシア様です!!また…迷える子羊を救済されたのですね…!!」
なんとも幸せな思考の持ち主だ、海賊どもは私が消したともつゆ知らず。こいつはそういう人間なのだろう。全ての人間が幸せになれる、そう思うような大バカなのだ。
「そんなことはどうでもいい。シスター、腹が減った。何か作れ。」
「は、はいっ!!かしこまりましたっ。」
いつものように純粋無垢な笑顔を向けるシスター。こいつの飯はなかなか美味い。
ゴミクズのような人生を送ってきたが、今はそれなりに充実している。…そう思うようにしなければ劣等感で頭がおかしくなる。
この愛の架け橋さえあれば、私は世界の頂点として立つことさえできる。気に入らないものは消し、気に入ったものは全て私のモノ。そんな世界だって作れる。
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