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84話

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「良いですよ。それじゃーあたしも密樹先輩と呼んで良いですか」
「もちろんだとも。密樹先輩、なんか良いな……」

 あまり親しくない人から名前呼びをされたくないとは茜は思っていないので、密樹が名前呼びをしたいならそれに反対する理由がなかった。
 それに最近、苗字呼びは距離が遠くて寂しいと思っていた。
 だから、密樹のこの提案は茜からしても嬉しい提案だった。
 茜に名前呼びをされた密樹は本当に嬉しそうに、頬を赤く染める。
 その後、ジェットコースターに乗った二人は係委員に安全ベルトを確認され、ジェットコースターが発進する。

「あたし、ジェットコースターは好きなんですけど。この上ってる時っていつも緊張するんですよ」
「分かる。落ちるまでなぜか緊張するんだよね」
「ですです。それなのに早苗に言うと、『えっ、上ってる時も楽しいじゃん』って言われるんですよ。……あっ、すみません、また早苗の話をしてしまって」
「別に大丈夫だよ。それだけ茜さんは武田さんと仲が良いってことだし」

 茜たちを乗せたジェットコースターがゆっくりと上っていく。
 ここの心情の話をすると密樹も茜と同じ側の人間だったらしく、意気投合する。
 それが嬉しくて茜は思わず早苗のことまでも話してしまう。
 しかし途中で密樹に早苗の話題は禁句だと思い謝罪する。
 さすがに自分が好きな人の前で、カップルのように仲の良い早苗の話をされて良い気分な人はいないだろう。
 密樹は特に嫌そうな表情はしていなかったが、いつもより言葉が硬かった。
 その後、二人で絶叫しながらジェッタコースターを乗り、楽しんだ。

「楽しかったね」
「そうですね。密樹先輩がはしゃいでる姿ってなんだか新鮮です。学校では真面目というか優秀なイメージがあったので。こんなにはしゃぐ密樹先輩は新鮮でした」
「新しい私を知ってもらえて良かったよ。私も楽しそうな茜さんを見れて嬉しかったし」

 ジェットコースターを乗り終えた後、茜と密樹は感想を語り合う。
 いつもは真面目で優秀な密樹しか知らなかった茜は、はしゃいでいる密樹にギャップを感じた。
 でもそれは悪い意味ではなく良い意味でのギャップであり、生徒会長と言えども茜と同じ高校生ということを感じ、改めて親近感がわく。
 密樹も普通の高校生だ。
 密樹も密樹で、楽しそうにはしゃいでいる茜を見て喜んでいた。

「……今度は、早苗も含め三人、……いや、ミチルや渚も含めて五人で来れたら良いな~……」

 二人は二人で楽しいのだが、早苗を含めた三人で来たり、ミチルや渚も含めて五人で来たらもっと楽しいだろうなと茜は考える。
 でもそれは無理だろう。
 早苗とは喧嘩をしているし、早苗と密樹は恋敵だ。
 多分、二人が仲良くなることはできないだろう。
 それが歯痒かった。
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