上 下
84 / 91

84話

しおりを挟む
「……とりあえず上がってください。さすがに先輩たちを立たせてるわけにはいかないので」

 真希もさすがにこのまま立ち話をさせるのは先輩に失礼だと思い、中に入れる。

「ありがとう北野後輩。上がらせてもらうよ」
「それじゃーお邪魔しまーす」
「清美。もう少し礼儀正しくできないのですか。全く、もう高校三年生ですよ。お邪魔します北野さん。次は連絡しますので、中に入ったらラインでも交換しませんか?」
「そうですね。せっかくだから交換しますか」

 紗那と麗奈は礼儀正しく中に入るのだが、清美だけは言動が小学生だった。
 麗奈の言う通り、清美の将来が心配である。

「まぁーまぁー友達の家なんだから」

 麗奈が清美に説教するものの、清美は全く反省していなかった。
 これには麗奈も紗那も頭を抱えていた。
 その後、三人を家の中に入れた後、真希は三人のためにコップと麦茶を用意する。

「ありがとう北野後輩」
「ありがとー北野ー」
「ありがとうございます」
「いえ。せっかく焼きそばとかたこ焼きとか買ってきてくれたので礼には及びません」

 三人が真希にお礼を言うと、平静を装いながら答えるも真希は照れていた。
 嬉しそうな表情で『ありがとう』を言われると真希だって嬉しい。
 それに久しぶりに普通に紗那たちと話せて楽しかったというのもある。
 真希は少しだけ紗那との気まずさを忘れることができた。

「それじゃー早速、北野後輩とルインを交換するか。連絡手段がないと困るからな」

 今回のことも含め、真希と連絡手段がないと困ることが分かった四人は、それぞれルインのIDを交換した。
 真希の連絡先に増える『鈴木紗那』と『黒木麗奈』と『沢田清美』の文字。
 気のせいか、スマホが少し重くなったような気がする。
 まさか家族以外の連絡先が増えるとは思っていなかった真希は新鮮な三人の連絡先を見て、少しだけ頬が緩んでしまう。

 それに加え、四人のグループルインも作った。

「これでいつもで連絡取れるね」
「そうですね。これでいつもで連絡が取り合えますね」
「……これで北野後輩といつでも連絡が取り合えるのか……楽しみだな」

 清美と麗奈は楽しそうに談笑し、紗那も嬉しそうになにか呟いている。

「これからはいつでも北野後輩と話せるな」
「そうですね……っ」

 真希と連絡先を交換して嬉しそうな紗那の表情を見て、相づちを打つ真希だったが不意に紗那の唇を見てしまい、あの時のキスを思い出す。
 キスを思い出した瞬間、また気まずさも思い出す。
 そのせいで真希は不自然に紗那から視線をそらしてしまった。
 視線をそらされた紗那もまた意識してしまい、真希から視線をそらしてしまう。
 そのことに紗那から先に視線をそらした真希は気づいていない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

好感度MAXから始まるラブコメ

黒姫百合
恋愛
「……キスしちゃったね」 男の娘の武田早苗と女の子の神崎茜は家が隣同士の幼馴染だ。 二人はお互いのことが好きだったがその好き幼馴染の『好き』だと思い、恋愛の意味の『好き』とは自覚していなかった。 あまりにも近くにいすぎたからこそすれ違う二人。 これは甘すぎるほど甘い二人の恋物語。

楠葵先輩は頼られたい

黒姫百合
恋愛
「これからはもっとたくさん楠先輩と思い出を作っていきたいです」  教室に友達がいなかった高校一年生の男の娘、中村優(なかむらゆう)は居心地が悪くなり当てもなく廊下を歩いていると一人の少女にぶつかる。その少女は高校三年生の女の子でもあり生徒会長でもある楠葵(くすのきあおい)だった。  葵と出会った放課後、優は葵に助けられたお礼をするためにシュガーラクスを持っていく。葵は優の作ったシュガーラクスを気に入り、また作って来てほしいとお願いする。 それをきっかけに優は葵とどんどん交流を重ね、しまいにはお泊り会も? 後輩に頼られたい女の子と友達作りが苦手な男の娘のラブコメが今、始まる。

柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合
恋愛
「何度も言うが私は青春が嫌いだ」 高校一年生の男の娘、柊瑞希は青春が大嫌いだ。 理由はそんな安っぽい言葉で自分の人生や苦悩を語ってほしくないからである、 青春なんていらない。 瑞希はそう思っていた。 部活も時間の無駄だと思った瑞希は帰宅部にしようとするものの、この学校には帰宅部はなく瑞希はどこかの部活に入るように先生に言われる。 それと同じタイミングで瑞希と同様部活は時間の無駄だと考える少女が先生と言い争っていた。 その後、瑞希は部活をしない部活を創立し、二人の女子と交流を持つようになり……。 ひねくれ男の娘が少しずつ大切なものを知っていく物語が今、始まる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...