68 / 91
68話
しおりを挟む
まだ朝の時間や昼休みの短時間ならまだしも、春祭りは完全にプライベートで長時間三人といることになる。
三人のプライベートな関係に割り込めるほど真希は厚かましくはない。
それに紗那たちにとっては高校生最後の春祭りだ。
もし、自分が参加して最高の春祭りに泥を塗ることはしたくない。
真希も真希なりに紗那たちに気を使ったのだが、紗那の思いとは見事にすれ違い、そのすれ違いに真希は気づくことができなかった。
その後、清美が働いているというファミレスに到着し中に入る。
「いらっしゃいませ……北野と紗那じゃなん。珍しいね、二人がプライベートでも一緒なんて」
店に入ると店員として働いている清美がお客様を案内するためにやって来た。
清美は二人一緒に客としてファミレスに来たことに驚いている。
「たまたま駅で一緒になったので、成り行きで一緒に昼食を食べようとなったんです」
「そうそう。駅で北野後輩に会って一緒にご飯を食べに行くことになった時はあたしも驚いた」
「そうなんだ~へぇ~」
真希と紗那はたまたま一緒になったということを伝えると、なぜか清美はニヤニヤしている。
あの顔は全く信じていない顔である。
「ほらっさっさと案内しろ。サボってると怒られるぞ」
「はいはい。ではお客様二名様案内しまーす。こちらへどうぞ」
バイト中に油を売っている清美に紗那が一喝するも清美に軽く流される。
バイト中ということもあり、さすがに紗那の忠告を無視して根掘り葉掘り聞いてくることはないだろう。
「それでそれで本当にたまたまなの? 本当は二人で遊びに出かけていてお腹が減ったからここに来たんじゃないの?」
「しつこいぞ清美。たまたま北野後輩とは一緒になって来ただけだ。こんなことになるなら違うところに行けばよかったな」
「……さっき鈴木先輩が言ったことなんとなく分かりました。これは面倒ですね」
席に案内するわずかな時間さえも紗那と話したいのか、清美はあれこれ紗那に聞いてくる。
さすがの紗那もウザいのか、少し怒っているようだった。
駅で会った時、友達が働いている店に行くことに抵抗はないのかと聞かれたがその意味が分かった気がする。
これは面倒くさい。
「まぁーそういうことにしておくよ」
清美は一人納得しているが絶対、真希たちの意図が伝わっていないことは誰が見ても明らかである。
「本当に偶然、北野後輩と会っただけなんだが」
「分かってる分かってる。隠さなくても大丈夫だから。二人ってここまで仲が進展してたんだね。頑張れ紗那」
「お前、絶対なにも分かってないだろ」
いくら紗那が偶然だと伝えても、清美は聞く耳を持たない。
なにを勘違いしているのかまでは分からないが、勘違いしていることだけは真希でも分かる。
紗那も呆れて声を荒げているが、清美は反省するどころかニヤニヤしている。
三人のプライベートな関係に割り込めるほど真希は厚かましくはない。
それに紗那たちにとっては高校生最後の春祭りだ。
もし、自分が参加して最高の春祭りに泥を塗ることはしたくない。
真希も真希なりに紗那たちに気を使ったのだが、紗那の思いとは見事にすれ違い、そのすれ違いに真希は気づくことができなかった。
その後、清美が働いているというファミレスに到着し中に入る。
「いらっしゃいませ……北野と紗那じゃなん。珍しいね、二人がプライベートでも一緒なんて」
店に入ると店員として働いている清美がお客様を案内するためにやって来た。
清美は二人一緒に客としてファミレスに来たことに驚いている。
「たまたま駅で一緒になったので、成り行きで一緒に昼食を食べようとなったんです」
「そうそう。駅で北野後輩に会って一緒にご飯を食べに行くことになった時はあたしも驚いた」
「そうなんだ~へぇ~」
真希と紗那はたまたま一緒になったということを伝えると、なぜか清美はニヤニヤしている。
あの顔は全く信じていない顔である。
「ほらっさっさと案内しろ。サボってると怒られるぞ」
「はいはい。ではお客様二名様案内しまーす。こちらへどうぞ」
バイト中に油を売っている清美に紗那が一喝するも清美に軽く流される。
バイト中ということもあり、さすがに紗那の忠告を無視して根掘り葉掘り聞いてくることはないだろう。
「それでそれで本当にたまたまなの? 本当は二人で遊びに出かけていてお腹が減ったからここに来たんじゃないの?」
「しつこいぞ清美。たまたま北野後輩とは一緒になって来ただけだ。こんなことになるなら違うところに行けばよかったな」
「……さっき鈴木先輩が言ったことなんとなく分かりました。これは面倒ですね」
席に案内するわずかな時間さえも紗那と話したいのか、清美はあれこれ紗那に聞いてくる。
さすがの紗那もウザいのか、少し怒っているようだった。
駅で会った時、友達が働いている店に行くことに抵抗はないのかと聞かれたがその意味が分かった気がする。
これは面倒くさい。
「まぁーそういうことにしておくよ」
清美は一人納得しているが絶対、真希たちの意図が伝わっていないことは誰が見ても明らかである。
「本当に偶然、北野後輩と会っただけなんだが」
「分かってる分かってる。隠さなくても大丈夫だから。二人ってここまで仲が進展してたんだね。頑張れ紗那」
「お前、絶対なにも分かってないだろ」
いくら紗那が偶然だと伝えても、清美は聞く耳を持たない。
なにを勘違いしているのかまでは分からないが、勘違いしていることだけは真希でも分かる。
紗那も呆れて声を荒げているが、清美は反省するどころかニヤニヤしている。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
好感度MAXから始まるラブコメ
黒姫百合
恋愛
「……キスしちゃったね」
男の娘の武田早苗と女の子の神崎茜は家が隣同士の幼馴染だ。
二人はお互いのことが好きだったがその好き幼馴染の『好き』だと思い、恋愛の意味の『好き』とは自覚していなかった。
あまりにも近くにいすぎたからこそすれ違う二人。
これは甘すぎるほど甘い二人の恋物語。
楠葵先輩は頼られたい
黒姫百合
恋愛
「これからはもっとたくさん楠先輩と思い出を作っていきたいです」
教室に友達がいなかった高校一年生の男の娘、中村優(なかむらゆう)は居心地が悪くなり当てもなく廊下を歩いていると一人の少女にぶつかる。その少女は高校三年生の女の子でもあり生徒会長でもある楠葵(くすのきあおい)だった。
葵と出会った放課後、優は葵に助けられたお礼をするためにシュガーラクスを持っていく。葵は優の作ったシュガーラクスを気に入り、また作って来てほしいとお願いする。
それをきっかけに優は葵とどんどん交流を重ね、しまいにはお泊り会も?
後輩に頼られたい女の子と友達作りが苦手な男の娘のラブコメが今、始まる。
柊瑞希は青春コンプレックス
黒姫百合
恋愛
「何度も言うが私は青春が嫌いだ」
高校一年生の男の娘、柊瑞希は青春が大嫌いだ。
理由はそんな安っぽい言葉で自分の人生や苦悩を語ってほしくないからである、
青春なんていらない。
瑞希はそう思っていた。
部活も時間の無駄だと思った瑞希は帰宅部にしようとするものの、この学校には帰宅部はなく瑞希はどこかの部活に入るように先生に言われる。
それと同じタイミングで瑞希と同様部活は時間の無駄だと考える少女が先生と言い争っていた。
その後、瑞希は部活をしない部活を創立し、二人の女子と交流を持つようになり……。
ひねくれ男の娘が少しずつ大切なものを知っていく物語が今、始まる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる