上 下
43 / 91

43話

しおりを挟む
 それから三日間。
 陽子はもっと真希と仲良くなるために他愛無いことでも話しかけ、それを目撃した愛理が真希を睨んだり邪魔をするということが続いた。
 愛理は自分になんの恨みがあるのだろうか。ストレスである。
 そのせいで真希の心労が溜まり、今ではウザい先輩紗那よりも愛理の方が悩みの種だった。

「おはよう真希ちゃん」
「……おはよう」

 朝教室に入ると陽子に朝のあいさつをされる。
 もちろん、無視をするほど常識知らずではないためあいさつを返す。
 声が小さくなったのは、度重なる愛理の精神的なストレスのせいで疲れているせいだ。
 愛理は陽子に話しかけられる真希が気に食わないのか、朝から睨んでいる。
 ヤバい女である。
 ちなみに今朝、妙に紗那たちがソワソワしていたのは気のせいだろうか。

「愛理ちゃん、睨んじゃダメでしょ」
「別に睨んでないから」

 陽子も最近は愛理が真希のことを睨んでいることを知ったからか、しっかりと愛理に注意する。
 愛理はそれも気に食わないのかムスッとして顔をそむける。
 あれで睨んでいないなら、睨んでいる顔を見てみたいものだ。

「なんで愛理ちゃん、最近あんなに機嫌が悪いんだろう」

 最近愛理の機嫌が悪いことにストレスを感じていたのは真希だけではなかったらしい。
 陽子もまた愛理の不機嫌さを悩んでいた。

「なんで機嫌が悪いかは分からないが、牧野が私に話しかけるのが気に食わないのだろう。牧野が私と話している時結構機嫌悪いよ、桐谷って」
「確かにそうだよね……私の気のせいじゃなかったんだ……。それにしてもなんでだろうね?」
「さぁー、桐谷じゃないから知らん」

 真希だって愛理がどうしていつも機嫌が悪いのかなんて分からない。
 幼馴染の陽子ですら分からないなら真希が分かるわけないだろう。
 陽子も真希と陽子が話している時に愛理が機嫌が悪くなることには気づいていたらしい。
 なら、あまり話しかけてこないでほしい。
 今も愛理が睨んでいるせいで、ストレスで体調がおかしくなりそうだ。

「それが分かっているなら話しかけないでもらえるか。今も睨んでるから」
「うぅ~、私は真希ちゃんと話したいのに」

 真希が席に着いた後も話しかける陽子にこれ以上話しかけるなと言うものの、涙目で我がままを言われる。

「陽子、来週の春祭りの話してるんだから戻ってきなさい」
「はーい。ちょっと待って」
「ちょっと待ってじゃないでしょ。陽子がいないと話が進まないんだからすぐに戻ってきなさい」
「うん、分かってるけど最近愛理ちゃん怒りすぎ。なんでそんなに怒ってるの?」

 陽子を真希に取られたくないという独占欲が強いのか愛理も最近、陽子にも厳しい言葉を投げかける。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

好感度MAXから始まるラブコメ

黒姫百合
恋愛
「……キスしちゃったね」 男の娘の武田早苗と女の子の神崎茜は家が隣同士の幼馴染だ。 二人はお互いのことが好きだったがその好き幼馴染の『好き』だと思い、恋愛の意味の『好き』とは自覚していなかった。 あまりにも近くにいすぎたからこそすれ違う二人。 これは甘すぎるほど甘い二人の恋物語。

楠葵先輩は頼られたい

黒姫百合
恋愛
「これからはもっとたくさん楠先輩と思い出を作っていきたいです」  教室に友達がいなかった高校一年生の男の娘、中村優(なかむらゆう)は居心地が悪くなり当てもなく廊下を歩いていると一人の少女にぶつかる。その少女は高校三年生の女の子でもあり生徒会長でもある楠葵(くすのきあおい)だった。  葵と出会った放課後、優は葵に助けられたお礼をするためにシュガーラクスを持っていく。葵は優の作ったシュガーラクスを気に入り、また作って来てほしいとお願いする。 それをきっかけに優は葵とどんどん交流を重ね、しまいにはお泊り会も? 後輩に頼られたい女の子と友達作りが苦手な男の娘のラブコメが今、始まる。

柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合
恋愛
「何度も言うが私は青春が嫌いだ」 高校一年生の男の娘、柊瑞希は青春が大嫌いだ。 理由はそんな安っぽい言葉で自分の人生や苦悩を語ってほしくないからである、 青春なんていらない。 瑞希はそう思っていた。 部活も時間の無駄だと思った瑞希は帰宅部にしようとするものの、この学校には帰宅部はなく瑞希はどこかの部活に入るように先生に言われる。 それと同じタイミングで瑞希と同様部活は時間の無駄だと考える少女が先生と言い争っていた。 その後、瑞希は部活をしない部活を創立し、二人の女子と交流を持つようになり……。 ひねくれ男の娘が少しずつ大切なものを知っていく物語が今、始まる。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...