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41話

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「そういうわけじゃない」

 紗那は勘違いをしている二人の間違いをただす。
 清美も麗奈もまるで自分のことのように紗那を心配し怒ってくれる。
 本当に良い友達を持ったものだ。

「そうですか。あれは本当にひどかったですから」
「さすがにあたしもあれだけはもうコリゴリだよ」

 麗奈も清美も去年、ひどい目に遇ったのでそういうことで悩んでいないことが分かり少しだけ安堵している。

「それで紗那はなにに悩んでるわけ? もしかして好きな人でもできた?」
「いや、そうじゃない。北野後輩のことで悩んでいるのだが、少し聞いてくれるか?」

 的外れなことを言っている清美を否定しつつ、紗那は今悩んでいることを二人に相談する。
 二人は頷き、黙って紗那の相談を聞いた。

「確かに最近北野、元気ないかも」
「そうですね。最近の北野さんは少し暗いような気がします」

 紗那が話し終えると二人とも思うところがあったらしく、紗那に同調する。

「もしかしてあたしがウザすぎるのが原因か。よく北野後輩にウザいウザいと言われていたがそこまで悩んでいたとは気づかなかった」
「気休めとかじゃないんだけどそれは違うと思うよ。北野だったら絶対『ウザいので話しかけないでください。本当にウザいです、マジでウザいです』とか言って遠慮なしに紗那に言って拒絶してくると思う」
「清美の言う通り北野さんだったら間違いなくそれで悩んでいたら紗那に文句を言うはずです。文句を言わず悩んでいるということは紗那のせいではないと私は思います」

 紗那が真希の悩んでいる理由を推測するものの、清美と麗奈に一蹴されてしまう。
 言われてみればその通りで、真希は良い意味で紗那に遠慮も忖度もしない。
 もし紗那に嫌なことをされていたら文句の一つや二つすぐに言ってくるはずだ。

「……確かにそうかもしれない」

 紗那も思わず納得してしまった。

「っていうか紗那はどうして北野になにで悩んでいるのか聞かないの? あたしたちがここで北野がなにで悩んでいるのか考えても北野じゃないんだから分かるわけないじゃん」
「珍しく馬鹿な清美がまともなことを言いますね。でも清美の言うとおりです。もし北野さんの力になりたいならなにに悩んでいるのか聞くべきです。でなければ紗那も私たちもなにもできません」
「馬鹿は余計だー麗奈ー」

 清美は麗奈に『馬鹿』と言われて文句を言っているがそんなことは些細なことなので無視しても大丈夫だろう。
 清美も麗奈も言っていることは正論である。
 真希のために力になりたいのに、そもそも真希がなにに悩んでいるのか分からない時点で今の紗那にできることはない。
 それに気づかないほど紗那は視野狭窄に陥っていた。

「そうだな。まずは北野後輩がなにに悩んでいるのか分からないとあたしたちも動けないな。ありがとう二人とも。おかげで自分の間違いに気づけたのよ」

 清美と麗奈のおかげで自分がまずなにをするべきかが分かった。
 どうすれば良いかと悩んでいた自分が恥ずかしい。
 持つべきものはやっぱり友達だと紗那は二人を心の中で感謝した。
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