上 下
1 / 1

愛が胸に響くんだけど。

しおりを挟む



愛が胸に響くんだけど。





「申し訳ないが、婚約を破棄させて頂けないだろうか」


そう、本当に申し訳なさそーな表情で今にも泣きそうな耳まで赤い堪え顔を見せられて。


だっぱーん!!と、愛がわたくしの胸を波打たせた。


(うぐっ……?!!)


わたくしの返事を待つ第二王子殿下の心臓のあたりから、渦状のの魔力波にも似た暖かな波が流れてくる。


最初の、決壊したダムから流れ込んでくるような愛ではなく、慢性的に抱き続ける愛おしさのようなものを伝えてくる。


(ん?ん?婚約破棄だよね……?)


泣きそうな顔に付け加え、何故か伝わるようになった恋愛の類の愛情。


事情がありますと自白しているようなものではないだろうか。


「理由を教えていただけますでしょうか」


「ッ、それは……セバス、皆を下がらせてくれ」


「承知致しました」




「理由は……すまない、貴女を責めるわけではないことを知っていて欲しい」


「承知致しましたわ」


「では……こほん、貴女の幸せのためだ」


「婚約破棄はわたくしの望むところではありません。却下」


「却下?!いや、しかしそれでは貴女が想う人と思いを通わせることが…」


「現状維持が1番その道に近いのですが」


「ッ、だが、兄上は先日婚約破棄を……!!」


「あんなクソッタレ腹黒陰険野郎には微塵も興味なくてよ?」


「だから貴女も候補に……ん?!クソっ……淑女がそのような言葉遣いを!!」


「想い人と結ばれるためならば婚約破棄も手段のうちと言い切った殿下と良い勝負ですわ」


「いやッ、俺は別に自分が好いた女と結ばれたいわけではなく……!!」


「ではわたくしのことをどう思っておりますの?簡単に婚約破棄できるような魅力のない女ですか」


「違うッッ!!シャルルはこの世で1番魅力的で聖母のような淑女だ!!!」


「あら、お褒めいただきありがとうございますわ。それでどうして婚約破棄などと?」


「それはだから、シャルル嬢は兄上を想っていて……!」


「お待ちください殿下。とりあえず、あのような鬼畜をわたくしがお慕い申し上げているなどという妄想はおやめくださいまし」


「鬼畜?!シャルル嬢は兄上にどんな人物像を抱いておられるのか?!」


「能力あるわたくしの愛しい殿下を馬車馬の如くこき使う憎き独裁者ですわ」


「だから言葉遣い……って、愛しい?」


「ええ。わたくし、愛が重すぎることに定評がございますの。それゆえに敬遠されることもしばしば。ですから、殿下とは一方的な好意の押し付けで成り立った婚約だと思っておりましたわ」


「……過去形だ」


「そうなんですの。婚約破棄を言い渡された瞬間でしょうか、わたくしの破棄を拒絶する感情と同調した魔力がこの世界に干渉したようで……何故か、殿下のわたくしへの愛を魔力波のように感じ取れるようになりましたの」


「愛?!え、いま……ダダ漏れ?!!」


「入り口が破壊された瞬間の愛の威力は凄かったですわ……この国一の魔力耐性を誇るわたくしが隠しきれぬほどの衝撃を受けましたもの。いまもずっと、殿下の愛に包まれておりますのよ?時に声も聞こえますわ……萌えってなんですの?萌ゆるのは緑のみと思っておりましたが…」


『シャルルのまっすぐな瞳綺麗すぎる……小顔に大きい瞳……萌え…』


「うわあぁぁ!なんか!さっきの心の声が漏れてる気がする!うわーん!!」


「あぁっ、愛おしい……泣き虫殿下、最高…」


「レオン、何をしている」


「あ、兄上…」


「わたくしが王太子殿下をお慕いしているという微塵も可能性のない突拍子もない勘違いをされていたので、否定していたところですの」


「凛々しい見た目と幼い中身が好きな脳内熟女のこいつがそんなわけないだろ」


「うるさい、陰険伊達メガネ。わたくし、メガネはあまり好きでないんですの。殿下の目が悪くなったら、王太子殿下の目を治療の際に使わせていただきますわね。同じ色ですもの、誰にもわかりませんわ」


「相変わらず扱いの差が露骨だなロリコン」


「ロリコンは少女愛ですの。正しくはペドフィリアですわ、知ったかぶり脛齧り」


「兄上、ほんとはあまり勉強が得意ではないんだからこれ以上は…」


「ッ、天然を盾にしやがって嫌味な女だ!」


「天然が勝手に盾をしてくださるのですわ。行きましょう、殿下。今夜は王族教育のため城に泊まることにします。二度と婚約破棄など言い出さないようわたくしの愛を注ぎ込んで差し上げますわ」


「えっ…」


『愛を注ぎ込む?!き、キスしてくれるとか?……いやいや、落ち着け俺。そういうのは男の俺がリードしてだな……はぁあああイケメンシャルルちょー萌え…』


(純情か。結婚前だし、未通のままでいなきゃいけないんなら、殿下を貫いて差し上げようかしら……名案だわ)






「はぅっ、そこは……!」


「ここがいいんですの?」


「んぁあっ……だめ、だっ…」


「だめ、ですの?殿下が気持ちよくないのでしたら、用意したバイブなるモノも不要ですわね…」


「いるっ、いるからぁっ……んぅっ……うぅっ、それ挿れてぇ…」


「ふふ、かわいい殿下……一生可愛がって差しあげますわ」


「んぁっ、ぁっ……はんっっっ!!!」







影「これを報告する、のか…」

影「シャルル嬢はタチで殿下はネコですって?笑えないな」

影「シャルル嬢の口癖は

"隠居したい……殿下を可愛がるだけの存在になりたい…"

だぞ。危険はないと判断していいんじゃないか?」

影「それなら確かに、第二王子殿下をのし上がらせて後ろから操るなんていうこともしなさそうだな」

影「実際能力も大したことないしな。殿下がらみならあんなに天才なのに……魔力耐性以外なんもないしな」

影「結論。シャルル嬢は殿下大好き、か」

影「「報告しづらい…」」

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

【完結】それぞれの贖罪

夢見 歩
恋愛
タグにネタバレがありますが、 作品への先入観を無くすために あらすじは書きません。 頭を空っぽにしてから 読んで頂けると嬉しいです。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

もうすぐ、お別れの時間です

夕立悠理
恋愛
──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。  親友の代わりに、王太子の婚約者となった、レオーネ。けれど、親友の病は治り、婚約は解消される。その翌日、なぜか目覚めると、王太子が親友を見初めるパーティーの日まで、時間が巻き戻っていた。けれど、そのパーティーで、親友ではなくレオーネが見初められ──。王太子のことを信じたいけれど、信じられない。そんな想いにゆれるレオーネにずっと幼なじみだと思っていたアルロが告白し──!?

私の完璧な婚約者

夏八木アオ
恋愛
完璧な婚約者の隣が息苦しくて、婚約取り消しできないかなぁと思ったことが相手に伝わってしまうすれ違いラブコメです。 ※ちょっとだけ虫が出てくるので気をつけてください(Gではないです)

処理中です...