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全てを知る者
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※怒涛のネタバレ回
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我は運命の神。
創世主より、管理の神とともに数ある星の流れを紡ぐよう命じられた者。
海の星は科学を。
火の星は神秘を。
空の星は魔法を。
緑の星は概念を。
それぞれが与えられた術で星を短命にし、なおかつ延命させるのが創世主の命。
そのため、生命は決められた運命に従い生きていた。
その運命を定めたのが我だと言うに……!
概念の星において至高とされるのは、概念の外、既知の存在ではない者。
すなわち、既知外となるのだが。
……実際のところ、緑の星の神を嫌う海の星の神が当て字だということを伏せて概念にした名付けであった。
海の星の言語とは構造の異なる星を司る緑の星の神は、何も知らずにその名を誇っている。
しかし、まさかそんな腹黒い海の星の神があのような失態をしでかすとは思わなんだ。
神が人に憧れ創るようになった「我が子」
その存在に一番執着し愛を注いだのが、海の星の神だ。
存在を決める名付けにおいて、無条件に愛をもたらされる"幸福"を選んだまでは、まだ許された。
けれど、様々な愛を与えようと初期設定の性別を反転させ、星同士の干渉を妨げる壁に緩みを生じさせるなど。
あってはならないことだった。
……そして、それを利用し、自身の好奇心を満たすためだけに愛するふりをする緑の星の神が己が子を紛れ込ませた。
神の子は共鳴し合う。
それを運命と受け取った緑の愛し子は決して、絶対的悪ではなかった。
自己中心的ではあるが、定められた運命の分岐におけるひとつとしては、正しくあろうと動いていたのだ。
ただ、海の愛し子が過剰に愛されていることが災いした。
余計な加護は毒を惹き寄せる。
惹き込まれ否定された緑の愛し子は狂い、愛し子の想いを心に注がれた人間を排除しようとした。
それが、海の星では命を消すという方法であっただけ。
火の星ならば精神を侵され、緑の星ならば存在を消され、空の星ならば悪魔に捧げられていたであろう。
それらを全て嫌われ者の緑の星の神になすりつけ、自覚のない悪意を撒き散らす海の星の神には、我の言葉など通じない。
怠け者の空の星の神が諭すか、仲の良い火の星の神が気をそらすか。
事実上の厄介者は、海の星の神であった。
かわいそうな海の愛し子は輪廻を空の星に繋げてやった。
どの人生においても愛し子を庇護していた親となる存在と、どの人生においても愛し子と結ばれていた恋人となる存在も情けでつなげてやった。
その際、どうしても綻んでしまう壁を緑の愛し子が通過してしまった。
どうやら、紛れ込んだ原因の片棒を担ぐのが自身の部下であった管理の神が、火の星の神に唆され送り込んだようだった。
そうして、今世もまた愛し子問題が続くように思われた。
……ところが。
緑の愛し子に思えたその存在は、別の存在と混ざり合っていた。
結果、全く別の人間になってしまったのだ。
我も予想し得ないこの展開。
こんなことが出来るのは、創世主より他にいない。
文句も言えず、海の星の神を怒ることで鬱憤を晴らしていた我は、気付いた。
反転していたはずの海の愛し子の性別が、元に戻っていることに。
これはつまり、本来ならば加護の力で幸せになれたはずの海の愛し子が緑の愛し子に狂わされた理由。
加護の抑制が、解除されたということに他ならない。
となると、今世の海の愛し子はどんな神の子さえも虜にし、自らの幸せのための材料にしてしまえるほどの影響力を持つことになる。
三神間の愛の力の大小関係が、露わになってしまったことになる。
創世主はお決めになられたのだ。
どの星を残し、どの神を残し、次の舞台を作り上げるのか。
火の星は愛し子を見せるまでもなく星の寿命を奪われ競争から除外されてしまった。
火の星の神はシードの形で我ら主要ニ神と同じく、傍観の立場にいる。
この圧倒的海の愛し子有利の状況の中、どの神がどの星を司ることになるのか。
そしてどの星が消え、どの神が消えるのか。
それを知るのは、親としての愛を海の愛し子に向け、緑の愛し子が生まれる物語における悪役令嬢であった彼女。
現在のアルカザント王国王太子、マイナー=アルカザント第一王子のみだ。
※怒涛のネタバレ回
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我は運命の神。
創世主より、管理の神とともに数ある星の流れを紡ぐよう命じられた者。
海の星は科学を。
火の星は神秘を。
空の星は魔法を。
緑の星は概念を。
それぞれが与えられた術で星を短命にし、なおかつ延命させるのが創世主の命。
そのため、生命は決められた運命に従い生きていた。
その運命を定めたのが我だと言うに……!
概念の星において至高とされるのは、概念の外、既知の存在ではない者。
すなわち、既知外となるのだが。
……実際のところ、緑の星の神を嫌う海の星の神が当て字だということを伏せて概念にした名付けであった。
海の星の言語とは構造の異なる星を司る緑の星の神は、何も知らずにその名を誇っている。
しかし、まさかそんな腹黒い海の星の神があのような失態をしでかすとは思わなんだ。
神が人に憧れ創るようになった「我が子」
その存在に一番執着し愛を注いだのが、海の星の神だ。
存在を決める名付けにおいて、無条件に愛をもたらされる"幸福"を選んだまでは、まだ許された。
けれど、様々な愛を与えようと初期設定の性別を反転させ、星同士の干渉を妨げる壁に緩みを生じさせるなど。
あってはならないことだった。
……そして、それを利用し、自身の好奇心を満たすためだけに愛するふりをする緑の星の神が己が子を紛れ込ませた。
神の子は共鳴し合う。
それを運命と受け取った緑の愛し子は決して、絶対的悪ではなかった。
自己中心的ではあるが、定められた運命の分岐におけるひとつとしては、正しくあろうと動いていたのだ。
ただ、海の愛し子が過剰に愛されていることが災いした。
余計な加護は毒を惹き寄せる。
惹き込まれ否定された緑の愛し子は狂い、愛し子の想いを心に注がれた人間を排除しようとした。
それが、海の星では命を消すという方法であっただけ。
火の星ならば精神を侵され、緑の星ならば存在を消され、空の星ならば悪魔に捧げられていたであろう。
それらを全て嫌われ者の緑の星の神になすりつけ、自覚のない悪意を撒き散らす海の星の神には、我の言葉など通じない。
怠け者の空の星の神が諭すか、仲の良い火の星の神が気をそらすか。
事実上の厄介者は、海の星の神であった。
かわいそうな海の愛し子は輪廻を空の星に繋げてやった。
どの人生においても愛し子を庇護していた親となる存在と、どの人生においても愛し子と結ばれていた恋人となる存在も情けでつなげてやった。
その際、どうしても綻んでしまう壁を緑の愛し子が通過してしまった。
どうやら、紛れ込んだ原因の片棒を担ぐのが自身の部下であった管理の神が、火の星の神に唆され送り込んだようだった。
そうして、今世もまた愛し子問題が続くように思われた。
……ところが。
緑の愛し子に思えたその存在は、別の存在と混ざり合っていた。
結果、全く別の人間になってしまったのだ。
我も予想し得ないこの展開。
こんなことが出来るのは、創世主より他にいない。
文句も言えず、海の星の神を怒ることで鬱憤を晴らしていた我は、気付いた。
反転していたはずの海の愛し子の性別が、元に戻っていることに。
これはつまり、本来ならば加護の力で幸せになれたはずの海の愛し子が緑の愛し子に狂わされた理由。
加護の抑制が、解除されたということに他ならない。
となると、今世の海の愛し子はどんな神の子さえも虜にし、自らの幸せのための材料にしてしまえるほどの影響力を持つことになる。
三神間の愛の力の大小関係が、露わになってしまったことになる。
創世主はお決めになられたのだ。
どの星を残し、どの神を残し、次の舞台を作り上げるのか。
火の星は愛し子を見せるまでもなく星の寿命を奪われ競争から除外されてしまった。
火の星の神はシードの形で我ら主要ニ神と同じく、傍観の立場にいる。
この圧倒的海の愛し子有利の状況の中、どの神がどの星を司ることになるのか。
そしてどの星が消え、どの神が消えるのか。
それを知るのは、親としての愛を海の愛し子に向け、緑の愛し子が生まれる物語における悪役令嬢であった彼女。
現在のアルカザント王国王太子、マイナー=アルカザント第一王子のみだ。
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