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スプライト

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「ルシファー様! あなたを好きになりました!」
 僕は一目ぼれした。
「ダメなんです。私は子持ちの女なんです。」
 相手は元唯一無二の絶対神ルシファーであった。
「え!? 子持ち!?」
 とてもじゃないが子供を産んだ女性には見えなかった。
「それは僕を諦めさせるために嘘をついているんですね!?」
 僕は騙されるものかと踏ん張った。
「息子です。」
 扉を開けるとルシファーの息子のマイケルが意識不明のままベットで寝転がっていた。
「ほ、本当だったのか!?」
 ヘタレの僕の気持ちはくじけてしまった。
「はい、悪しからず。」
 意気地なしの僕だった。

「情けない。」
「最低。」
「おまえ、ゴミだな。」
 カスピル、ロロド、ヒャッキーの子供たちにハリウッド修道院の裏の迷子の森で、僕はケチョンケチョンにいじめられていた。
「そこまで言わなくても。ガーン。」
 初めての失恋に、どこまでも追い打ちを受ける僕。
「クスクス。」
 どこかからか笑い声が聞こえてくる。
「あ!? スプライト!?」
 現れたのは草の妖精スプライトだった。
「お兄さん、子供3人に脅されて悔しくないの? 存在価値がないよ。」
「ガーン! 妖精にまで言われた!?」
 元地球の神の僕の面目や立場はなかった。
「そうよね。まずルシファー様を好きになっても、告白する勇気のあるものはいないわ。」
「ガーン!」
「カスピルの言う通り。ルシファー様に手を出そうとしたのが、アナスタシアとペリーヌにバレたら、確実に命はないね。」
「ガーン! ガーン!」
「死にたくなかったら逃げた方がいいぞ。あ、もう無理か。」
「ガーン! ガーン! ガーン!」
 僕の心は傷だけ何本もの釘がハンマーで撃ちつけられたように痛かった。
「あるよ。一つだけ。」
 その時、スプライトが口を開いた。
「え?」
「ルシファー様と結婚する方法が。」
「なにー!? 本当か!? ルシファー様と結婚する方法があるというのか!?」
 沈み込んでいた僕の心は簡単に再生した。
「教えろ! 教えてください! どうすればいいんですか!?」
 僕はスプライトに鬼気迫る表情で尋ねる。
「ルシファー様が天界の神の座を捨てた理由って知ってるか?」
「知らん!」
「ルシファー様が想像妊娠で産んだ息子のマイケルが戦いで生死の境を彷徨っていた。ルシファー様は息子の命をつなぐために、天界の神の座を捨てて看病してるんだ。」
「想像妊娠? どういうこと?」
「気にするとこはそこか?よく考えろ。神をやっている時の指先一つで世界を滅ぼしていたルシファー様を抱ける男がいると思うか?」
「無理だ。怖すぎる。」
「話を戻すが、マイケルの意識が戻れば、ルシファー様は、おまえのものになるということだ。」
「おお! そういうことか!」
 僕の初恋が赤い糸一本でつながれていた。
 つづく。
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