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出会わせたのは私だった

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 ここは渋谷区の明治神宮の入り口。
「怪獣ちゃん、お正月は明治神宮でお参りよ。」
「わ~い。栞お姉ちゃんとお参り。楽しいな。」
 16才の谷子は姉の栞と一緒に明治神宮に初詣に来ていた。渋井家は家族で明治神宮にお参りするのが恒例であった。しかし、栞が家族に加わったことにより、母、谷代は郵便配達員の父、谷男の帰りをお家で待つことにした。
「それにしても人が多いわね。」
 元旦の明治神宮は日本で一番参拝者が多く、人々の波に渋井姉妹は呑み込まれて引き離されていく。
「お姉ちゃん!? 助けて!?」
「怪獣ちゃん!?」
 大好きな妹と引き離されてしまうと感じて、妹を救うために魔法少女の栞は魔法を使うことを決意する。
「私と怪獣ちゃんの姉妹愛を邪魔する人間は消えてしまえ! 必殺! ブラックホール! エル・エル・エルメス!」
 突如、明治神宮にブラックホールが現れて、一般の参拝客を異次元に吸い込む。
「大丈夫? 怪獣ちゃん。」
「怖かったよ! お姉ちゃん!」
 人ごみに離れ離れになった姉妹が感動の再会を果たす。
「やっぱり無理! 困っている人を助けるよりも、怪獣ちゃんを助けることを優先してしまう!」
 栞は自問自答する。今年のテーマは、少し世の中に良いことをしようかなっと元旦の原宿の自動車テロ事件の時に思ったが、やはり大好きな怪獣ちゃんの笑顔を守りたいという気持ちの方が強かった。
「もう大丈夫よ。明治神宮に人はいなくなったから、ゆっくりと二人っきりで参拝できるわよ。」
「やったー! 明治神宮を貸し切りだね!」
 渋井姉妹は仲良く歩き始めた。
「そうはさせないわよ!」
 その時、誰もいなくなった明治神宮に女の声が響き渡る。
「この声は!? ルイヴィトンでもない!? でも聞いたことがあるような!?」
「お、お、お姉ちゃん!? この声は!? まさか!?」
 そこに明治神宮の石の道に一人の女の子が現れる。
「私のことを忘れたとは言わせないわよ!」
「ドキ子ちゃん!?」
「土器ドキ子!?」
 なんと現れたのは谷子のクラスメートの土器ドキ子だった。ドキ子が生まれた応募要項は、恋愛コンテストの「ドキドキする。」からである。
「渋井家がお正月には明治神宮に初詣に来ることは過去作を読んでリサーチ済みよ!」
 過去作、ラブ・ブック(渋井谷子の奇跡)、帰って来た渋井谷子の奇跡、絶賛公開中。
「一番で会いたくない相手に出会ってしまった!?」
「なぜドキ子には消えないの!?」
 戸惑う渋井姉妹。ドキ子は存在自体が強力なので、敢えて魔法少女にする必要がない。
「それは、それは私たちが友達だからよ!」
 過去作を読み返すとドキ子の初登場は14話くらい。谷子の家族と大家さんのおばあちゃん以外では最長の出演キャラクターである。
「私たち友達だったの!?」
 ドキ子の発言に谷子も予想外だったので驚く。
「しまった!? 化け物に怪獣ちゃんの初めて書いたポップに魔法をかけた本を買わすんじゃなかった!?」
 犯人は栞であった。栞は大好きな怪獣ちゃんが初めてのアルバイトで、初めて書いた本のポップに素敵な魔法をかけた。カワイイ女の子が買ってくれますようにと。それから離れられないのである。
「何を言っているの? ドキ子と谷子ちゃんはマブダチ! 親友よ! 切っても切っても再生するんだから!」
 切っても元通りにくっつく。まさにゾンビ・フレンド。谷子とドキ子の友情は、金太郎飴を超える。
「さあ! お賽銭箱のお金を盗みに行くわよ! ドキドキ!」
 注意。お賽銭箱からお賽銭を盗む行為は犯罪です。良い子はマネしないでね。
「お姉ちゃん!? 怖いよ!?」
「大丈夫!? お姉ちゃんが守ってあげるからね!?」
 素晴らしき渋井姉妹の姉妹愛。そして谷子に憑りつく、福の神、貧乏神、ドキ神であった。
「かわいいドキ子の出番がもっと増えますように。ドキドキ。」
「神様は本当にいるのですか? どうか私を土器魔人からお救い下さい。」
「我が妹に危害が及びませんように。」
 こうして無事に、お正月行事、初詣が終わったのでした。

つづく。
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