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実はいい人。

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 ここは渋谷のマンションの屋根裏部屋。
「じゃんけん!?」
「頭でも打ったんですか!? エルメス様!?」
「あのね。私は元気です。」
 渋井栞の人類ゲームの最初のお題が、じゃんけんであることに、ケーリーとバーキンが驚いた。
「仕方がないじゃない。エンターテイメントを考えたら、全世界を巻き込むスケールで、大人も子供もお姉さんも、おじいちゃんとおばあちゃんも参加できるゲームを考えないといけないんだから。」
 栞は考え抜いて、じゃんけんを思いついたのだった。
「なんと優しいお心遣い!?」
「じゃんけんなら、おじいちゃんとおばあちゃんも安心して参加できますね。」
「私の心は宇宙のように無限に広いのよ。エッヘン。」
 栞の宇宙にはブラックホールがたくさんありそうだが。
「じゃんけんこそ、ゲームの中のゲームよ!」
 高齢者のおじいちゃんとおばあちゃんにも優しい栞の真心。まさに愛
 人類は生き残ることが出来るのだろうか?

 ここは渋井家。
「やったー! 勝った!」
 谷子は父親の谷男とじゃいけんして勝利した。
「すごいわね! 谷子ちゃん!」
 母親の谷代も喜ぶ。
「私は達成するまで続ける! どんな困難も乗り越えてみせる!」
 9才の小学生の谷子は諦めない心と、どんな困難にも立ち向かう勇気を持っている。
「よし。これで谷子も10勝で、家族は全員10勝したな。」
「そうね。同じ人間とじゃいけんを繰り返してはいけないという条件はなかったものね。」
「きっと、魔法少女さんは、いい人なんだよ。」
「まぬけなだけじゃないか?」
「キャッハッハ!」
 谷子ファミリーは大喜びだった。
「あ!? いけない!?」
 谷子は何かを思い出したかのように玄関のドアから飛び出して行った。
「はあ! はあ!」
 谷子はマンションの階段を駆け上がり、10階にたどり着いた。そして、10階に一部屋しかないドアのチャイムをピンポーンと押した。
「は~い。おや? 谷子ちゃん。」
 部屋の扉が開き、中からおばあちゃんが出てきた。
「おばあちゃん! 谷子とじゃんけんしよう!」
 谷子は一人暮らしのおばあちゃんを心配して10階まで駆け上がってきたのだった。おばあちゃんの名前は松トウ。一人暮らしをマンションの10階でしている、マンションのオーナーである。
「じゃんけん? どうしたの?」
「あれ? おばあちゃんはマイナンバーアプリの魔法少女のゲームの挑戦状を知らないの?」
「アプリ? 私はスマホなんか触らないからね。」
「あのね。とりあえず、おばあちゃんが10回じゃいけんで勝つまで続けるよ。」
「はいはい。谷子ちゃんが遊んでくれるのね。うれしいわ。お礼に高級寿司の出前でも取ろうかね。」
「やったー! お寿司だ! わ~い!」
 谷子は大喜びである。
「お寿司を食べ終わったら、本でも読んでいくかい?」
「おばあちゃん! 大好き! おばあちゃんは谷子のおばあちゃんだよ!」
 おばあちゃんも幸せな気持ちになった。

 ここは渋井家。
「遅いな・・・谷子の奴は?」
「もう夜ですよ。早く帰って来てくれないと、煮干しが冷めちゃいますよ。」
 父と母は谷子が高級寿司を食べているとは夢にも思わなかった。

つづく。
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