上 下
37 / 101

第6Q モルドレッド

しおりを挟む
「カムランの戦い? 聞いたこともない。」
 渋子は戦いの名称に興味を持ち始めた。
「私と袁紹が戦ったのが官渡の戦いだ。」
「呉と戦った赤壁の戦いなんていうのもあります。名称になると歴史に残りますし、人々が言いやすかったり、覚えやすかったりしますよね。」
「そういうものなんだ。」
 改めて戦いに名称を付けることの意義を思い知る渋子である。
「うちは簡単よ。ソウちゃんの戦い、シバちゃんの戦い、アーちゃんの戦いだから。アハッ!」
「な、なんと!?」
「どうしたの?」
 渋子の無意識に恐怖するソウちゃん、シバちゃん。
「殿!? 今、アーちゃんと言いましたか!?」
「え? ・・・・・・はあ!? 言った!? 言ってしまった!?」
 大変なことに渋子は気づいてしまった。
「な、何を言ってるの!? 私が言ったのは、アイドルグループ48の不動のセンターのアーちゃんよ!」
 渋子の苦し塗れの言い訳だった。
「呼んだ?」
「え?」
 その時、どこかからか声がする。
「アーちゃんだよ。」
 現れたのはアーちゃんこと、アーサー王だった。
「ギャアアアアアアー!? お化けー!?」
「あ、アーサー王だ!?」
「出たな!? 第二形態隠しめ!?」
 アーサー王の登場に驚きを隠せない渋子たち。
「私のアーサー王クエストなんだから、私を第1クエストから登場させてくれないと、私のファンが増えないじゃないか! これだけ悲劇の出生の秘密のある私なのに読者や視聴者の親しみも共感も同情も得られないじゃないか!」
 そのメインのクエストのキャラクターは最初から登場させろというのが、アーサー王の正当な言い分である。 
「なんで不忠を働いたランスロットが第1クエストで私より早くに登場するんだ!? ああ! 知っているよ! 私よりもランスロットの方が人気があることくらい!? どうせ、どうせ私なんか妻に浮気される情けない男だもん。ウエ~ン!」
 自虐的なアーサー王は泣き出してしまった。
「ご、ごめんなさい。アーちゃん。」
「すまん。自分の出番ばかり、自分のことばかり考えて。」
「なんて可愛そうなアーサー王。私たちは友達になろう。」
 渋子たちは自身の傲慢さを反省し、泣き崩れているアーサー王に手を差し伸べる。
「ありがとう! 渋子王! ありがとう! みんな! やったー! 私にも友達ができたぞ! ワッハッハー!」
 アーサー王は立ち直りも早かった。
「僕はアーサー王から奥さんを奪ったモルドレッドだぞ! ここはカムランだ!」
 第6クエスト、間男モルドレッドを倒せ!
「これから歓迎パーティーよ! 邪魔しないで! ポイッ。」
 渋子はモルドレッドにアトミックボムを投げた。
「ギャアアアアアアー!?」
 跡形もなくモルドレッドは吹き飛んだ。
「まずはビールで乾杯! 飲み会の基本でしょ!」
 いつも通り渋子の去った後にはキノコ雲しか残らない。
 つづく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした

仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」  夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。  結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。  それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。  結婚式は、お互いの親戚のみ。  なぜならお互い再婚だから。  そして、結婚式が終わり、新居へ……?  一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

処理中です...