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冒険、曹操

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「ただいま!」
 前回、巨大ボスたちに何回も何回も刺されて踏まれて、頭をかじられた妹の渋子が無傷で帰ってきた。
「おかえり! お姉ちゃんが渋子のために温かいお味噌汁を作ったわよ! 具は渋子の好きなタラよ! アハッ!」
「やったー! 温かいお味噌汁! 日向お姉ちゃん! ありがとう!」
 温かいお味噌汁にホッコリする妹。
「って、なるかいー!? 私はお姉ちゃんの性で死にかけたのよ!? いいえ! 正確には何回も死んだのよ! お姉ちゃんに私の気持ちが分かる!?」
「分かんない。だって死んだことがないんだもん。アハッ!」
「ダメだ、こりゃ。」
 呑気な渋野姉妹であった。
「もし無限蘇生スキルを習得していなかったら、今頃私はミンチになって、天国に召されている所だったのよ。」
「ごめんね。私が悪かったわよ。反省してるから、温かいお味噌汁も作ったんだから。許して。ね、ね。」
「もう! お姉ちゃんじゃなかったら絶対に許さないのに。」
 妹は渋々だが姉を許した。
「お姉ちゃん、次は何をするの?」
「そうね。外見と職業と装備とスキルを決めたから、やっぱり冒険かしら?」
「嫌よ!? もう家の外に出るのは懲り懲りよ!?」
「なに!? その姉を見る軽蔑の眼差しは!?」
 妹は疑いの眼差しで姉を見つめる。
「このゲームの本当のクエストはこれよ!」
 ジャンと姉は本来のデス・ゲームの概要を発表する。
「おおー!? 異世界戦国時代!?」
「そう! その通り! 私の開発していたゲームは、戦国時代のお城を異世界の騎士や魔法使いが攻めて、異世界のお城を戦国時代の武将が攻めて奪い合うというゲームだったのよ!」
 姉の開発していたゲームは、一言でいうと、異世界と戦国時代のカオスであった。
「スゴイ! お姉ちゃん!」
「もっと褒めて!」
「でも、どうしてデス・ゲームにしたの?」
「気分!」
「プレイヤー、確実に死ぬよ?」
「死にたくなかったら強くなれ! アハッ!」
 これでも姉の日向は優秀なプログラマーである。
「渋子、今できているのが異世界の聖剣エクスカリバー持ちのアーサー王が戦国時代でお城を一刀両断するのと、戦国時代の織田信長が異世界のお城を倒壊するまで鉄砲で撃ち続けるのと、どっちがいい?」
「お姉ちゃん、ちゃんとプログラミングは終わっているんでしょうね?」
 前科者の姉を疑惑の瞳で見つめる妹。
「もちろんよ!? 私を誰だと思っているの!? 天才ゲーム・プログラマーの日向様よ。ワッハッハー!」
 強がって胸を張り高々と笑う姉。
「じゃあ、これも出来上がってるの? 天才ゲーム・プログラマーさん。」
「え? 曹操?」
 渋子はアーサー王でもなく、織田信長でもなく、三国志の曹操を選択した。
「で、出来てるわよ。だって私は天才ゲーム・プログラマーだもの。」
(あの曹操は、これからの時代のために中国に媚びを売るために作ったプロトタイプ!?)
「なら曹操にする。」
(お姉ちゃんの進める物に出来上がっている物は、絶対にない!)
「アハッ! アハッ! アハッ!」
「アハッ! アハッ! アハッ!」
 笑顔でアハ交信をする渋野姉妹は怖かった。
 こうして初めてのクエストは、曹操に決まった。
 つづく。
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