上 下
28 / 101

アメリカへ行く者

しおりを挟む
「沖縄の病院で入院したいな。」
 決勝戦で体を壊した那覇は東京の病院に入院した。
「那覇、元気か?」
「監督! みんな!」
 那覇の病室を具志堅監督と沖縄代表チームの仲間がお見舞いに来てくれた。
「おまえの優勝記念メダルだ。」
「ありがとうです。」
 決勝戦。那覇は早々にリタイアしたが、沖縄代表は大阪代表を130対121で辛くも逃げ切った。
「じゃあ、我々は帰るから、那覇、ゆっくり入院していろ。」
「待ってー!? 待ってください!? 僕を置いていかないで!? 僕を一人にしないで!? 一人になったら生きていけないです!?」
 沖縄代表チームの面々は病院から空港へ行き、那覇を置いて沖縄に先に帰って行った。
「そんなことはないよ! 那覇くん!」
「スティーブンさん!?」
 次に現れたのはメジャーリーグのスカウトのスティーブンだった。
「那覇くん、ケガの様子はどうだい?」
「1週間の入院で寝てれば治るそうです。」
「それは良かった。あ、これはお見舞いのメロンだ。」
「メロン!? そんな高級フルーツを!? スティーブンさん、あなたは良い人だったんですね!」
 那覇はスティーブンをコミュニケーションに問題がある人物だと誤解していた。その誤解を解いたのは高級メロンだった。
「でも、すまない。今回、ケガをした那覇くんをアメリカに連れていくことはできないんだ。」
(なんだと!? 俺の怪我は一週間で治る程度の軽い怪我だぞ!? 俺をアメリカに連れていけ!?)
 俺はアメリカに行けなくなって激怒した。
「ありがとうございます! 僕はスティーブンさんのことが大好きです!」
 アメリカに行かなくてよくなったので、那覇は昇天するように喜んだ。
「そして今回、那覇くんの代わりにアメリカに行く選手を那覇くんに教えよう。」
「どうせ僕がダメなら千代田くんでしょ?」
「違う。彼だ。」
 スティーブンは極秘資料を那覇に差し出す。
「西表先輩!?」
 なんとアメリカ行きをゲットしたのは西表先輩だった。
「彼は今大会で18ホームランの大会新記録。アメリカの上層部が彼の打撃センスを高く評価してね。来シーズンは少年野球のアメリカンリーグでプレーしてもらうことになった。」
(なんで西表先輩なんだ!? 俺のボールをバットに当てたことすらないのに!?)
 俺は西表先輩はアメリカでは通用しないと思った。
「そうですか。西表先輩なら僕の球も取れるし、120キロまでのピッチャーのボールならホームランを打てる頼もしい先輩です。」
 那覇は最初は怖かったが野球を共にすることによって、頼れる西表先輩のことが大好きになっていた。
「先に言っておくよ。那覇くん。彼を取ったのは、来年、君をスカウトするための布石だ。彼がいれば安心して那覇くんもアメリカにやって来れるだろ。」
「すいません! すいません! ごめんなさい! 許してください!」
 あくまでも那覇はアメリカには行きたくなかった。
「だって沖縄が大好きです。」
 気弱な那覇は沖縄でゆっくり生きたかった。
 つづく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...