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ついに俺たちは冒険の旅に出た。イチの町からニの町

「ワンワン!」
「キャンキャン!」

俺とくまぴょんは、カトリーヌ・ねこぴょん様の奴隷犬として旅に出たのだった。

「おかしい!? 何かがおかしい!? 俺たちが主役だったはずだ!?」
「その通り。なのに、なぜ私たちは犬をやっている。しかも首輪までつながれて・・・。」
「俺は天下無敵のサイコロ士! うさぴょんだ!」
「私は至上の祈りシャーマン! くまぴょん!」
「俺たちがカッコよく活躍する物語だったはずだ!?」
「どうして私たちの明るい未来が奪われなければいけない!?」

俺とくまぴょんは現状に不満を抱いていた。

「ギャア!?」
「うさぴょん!?」

俺の首輪が何者かに引かれた。

「そこ、うるさい。」

首輪を引いたのは、冷たく冷ややかに笑う、カトリーヌ・ねこぴょん様であった。

「こら!? ねこぴょん!?」
「やめろ!? うさぴょん!? 落ち着くんだ!?」
「何か言いたいことがあるのか?」
「・・・ありません。」
「はい。ございません。アハハハハ。」

その時、運よく我々は魔物の群れに襲われる。

「何事だ!?」
「はい。カトリーヌ・ねこぴょん様 親衛隊長のセーラです。前方からアリさんの大軍に襲われています。」
「アリなど、全員で戦えば負けるはずはない! レベルアップの経験値にするがいい!」
「はい。かしこまりました。全軍! かかれ!」
「おお!」

カトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊とアリさんの大軍との戦いが始まった。

「ほほ~、これは見ものですね。」
「俺たちは高みの見物だな。」

俺とくまぴょんは首輪で繋がれているので、戦闘には参加できない。まあ、もともと戦うジョブではないのだが・・・。ははは。

「死ね! アリ!」
「燃えろ! アリども!」
「回復は任せて!」
「アリアリ!」

カトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊とアリの大軍の死闘は熾烈を極めた。

「アリアリ!」
「うわあ!? やられた!?」
「おい!? 大丈夫か!? 死ぬな!?」
「い・・・いやだ・・・死にたくないよ・・・バタ。」

親衛隊はたくさんの死傷者を出しながら戦っていた。

「セーラ。」
「はい。カトリーヌ・ねこぴょん様。」
「戦況が思わしくないな。どういうことだ?」
「我々は初心者の集まりです。戦っているのは勇者や暗黒騎士であってもレベル1でしかありません。僧侶や賢者であっても、ヒールしか使えませんから。」
「ふ~ん。面白くない。戦況は?」
「死者25人の生き残り75人といったところでしょうか?」
「このままでいくと勝敗はどうなる?」
「順調に経験値を稼いでいる者は、初期戦闘ですがレベル5に達する者もいるかと。ただ・・・。」
「ただ、なんだ?」
「はい。親衛隊の損害も死者50人近くになるかと。」
「全滅ならぬ半壊か。ふ~ん。」
「申し訳ございません。旅に出る前にしっかりと訓練をしてレベルを2、3上げておけば、アリさん相手に、ここまでの苦戦はなかったのですが。」
「おまえが謝ることは無い。訓練でレベル上げをする前に旅に出た私が悪いのだから。」
「そんな、もったいないお言葉を!?」
「こうなったら私が出るしかないかもな。」
「カトリーヌ・ねこぴょん様が自ら!? い、いけません!? そのようなことは!?」
「これも親衛隊を率いる者の義務というものだよ。」

遂にカトリーヌ・ねこぴょん様が玉座から立ち上がった。

「ああ~。退屈だな。アリなんか俺がサイコロを振れば一瞬で片付くのに。」
「だよね。私たちは天下無敵のサイコロシャーマンだからな。ホストクラブでも開店するか? かなりの儲けがあるだろう。」
「ハハハハハ! それいいね。ピンドン! ピンドン!」
「あ!? ・・・。」
「ドンペリコール! ハハハハハ! どうした? くまぴょん? 急に大人しくなって?」
「楽しそうだな? いかさまサイコロ士。」
「ギョ!? ねこぴょん!?」
「ねこぴょんではない。カトリーヌ・ねこぴょん様と呼べ。飼い主の名前を忘れたのか?」
「は、はい・・・カトリーヌ・ねこぴょん様・・・。」
「それでいい。ペットは素直が一番だ。」
「カトリーヌ・ねこぴょん様。何なりとお申し付けください。」
「くまぴょんは実に賢いな。あっちとは大違いだ。」
「はい。私はカトリーヌ・ねこぴょん様に命を捧げました。カトリーヌ・ねこぴょん様のためなら何でもやらせていただきます!」
「ハッハッハ! かわいい奴だ。」
「ワン!」
「この裏切り者!?」
「生き残るためには、長い者に巻かれるしかないだろう!?」
「見損なったぞ!? くまぴょん!?」
「なんとでも言え!」
「全て聞こえているぞ?」
「ギャア!?」
「お許しください!? カトリーヌ・ねこぴょん様!?」
「許すか許さないかは、おまえたち次第だ。私のためにサイコロを振ってくれるのか? 降らないのか? どっちだ?」
「サイコロを振らせていただきます!」
「良い目が出るように祈らせてもらいます!」

俺たちに拒否権はなかった。サイコロを振るのを断って殺されるか、犬として生き残ることを選ぶか、その二択しかないのであった。どちらもイバラの道である。

「サイコロを振らせて、俺の右に出る者はいない!」
「私に祈らせて、良い目が出ないはずがない!」
「我々は、天下無敵のサイコロ士!」
「決まった! 俺、カッコ良すぎる!」
「私たちは二人で一人だな。」
「わっはっは!」
「はあ!? ねこぴょんが睨んでる!?」
「うさぴょん!? 早くサイコロを振るんだ!?」
「おお! 任せとけ!」

決めゼリフに決めポーズも決まった所で、いよいよサイコロを振る。

「何が出るかな? 何が出るかな? ヤッホー! ヤッホー!」
「神様! 仏様! サイコロ様! 良いサイコロの目をお出しください!」

光輝くサイコロ。俺のサイコロを振る腕と、くまぴょんの祈りが天に通じたのである。

「死んだ者は全員生き返り、カトリーヌ・ねこぴょん様の全体攻撃で一撃でアリさん部隊を撃破!」

サイコロの目に細かく長い文章が刻み込まれていた。

「さすが俺だ! なんて良い目を出したんだ!」
「いやいや! 私の祈りが神に届いたのだ!」
「わっはっは!」

俺たちは自画自賛した。

「死んだ私のカワイイ僕たちよ! 生き返るがよい! 魔法剣リザレクション!」

カトリーヌ・ねこぴょん様の魔法剣が光り蘇生魔法を剣に宿し、大地に寝転がる死者の亡骸に魔法の光を放つ。

「こ、ここは?」
「私は死んだんじゃ・・・?」
「い、生きてる!? 生きてるぞ!?」

死者たちは生き返った。

「皆の者! これもカトリーヌ・ねこぴょん様のおかげである! 感謝せよ!」
「カトリーヌ・ねこぴょん様! 万歳! カトリーヌ・ねこぴょん様! 万歳!」
「どういたしまして。」

辺りは生き返ったカトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊員のコールで湧き上がっていた。

「次のサイコロの予言は、全体攻撃か? ブリザードでいいだろう。アリさんなんか凍えてしまえ! 魔法剣ブリザード!」

アリさんたちは一瞬で凍りついた。辺りは氷河に覆いつくされたようだった。

「おお! 奇跡だ!」
「カトリーヌ・ねこぴょん様がアリを退治してくださったぞ!」
「カトリーヌ・ねこぴょん様! 万歳!」
「これは私の勝利ではない。私たちの正義だ。」
「おお! なんと謙虚な! 私たちは、どこまでも、ついて行きます!」
「カトリーヌ・ねこぴょん様! 万歳!」

軽く手を上げて微笑むカトリーヌ・ねこぴょん。 

「俺のサイコロが・・・。」
「私の祈りが・・・。」

俺とくまぴょんはピエロさ。主人公が表に立つ時代は、もう古いのさ。・・・たぶん。

つづく。
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