上 下
4 / 63

4

しおりを挟む
朝、清々しい朝。私は町を救った英雄として、町で一番のホテルに泊まっている。そして目覚めと共に窓を開けた。

「げっ!? なんで、あんたたちがいるのよ? ここ3階よ!?」
「俺たちは不死身だ!」
「さあ! 楽しい冒険に出かけよう!」

俺とくまぴょんは不死身だった。正確には呪われているので死ねないだけである。

「キャアアア! 痴漢よ! 痴漢!」
「え?」
「まさかのパターン化!?」
「痴漢はどこだ!? 我々はカトリーヌ・ねこぴょん様、親衛隊である!」
「出た・・・。」
「しかも前より人数が増えていないか?」
「カトリーヌ・ねこぴょん様を痴漢からお守りしろ!」
「おお!」
「突撃!」
「ギャアアア!?」

大部隊になっていた、ねこぴょんの親衛隊に、また俺たちは殺されかけた。

「死ねないっていうのも辛いな・・・。」
「温かい味噌汁が飲みたい・・・。」

バタ。いつでも俺とくまぴょんは前向きだった。



「それでは、希望の星! 女魔法剣士、カトリーヌ・ねこぴょん様の出陣式を行います!」

私は町人たちに歓迎されながら、旅に出る日を迎えた。

「おまえの名前はねこぴょんだろうが?」
「英雄になれば、好きな名前を付けれるのよ!」
「何を!? サイコロの目は絶対である!」
「黙りなさい。奴隷ストーカー。」
「はい・・・。」

俺とくまぴょんは首輪に繋がれていた。

「なぜ、私たちがこうなったのか、説明しよう。」

くまぴょんは親切だった。

「ねこぴょん!」
「キャアアア! 痴漢!」
「我々はカトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊である!」

私が町を歩いていても。

「ねこぴょん!」
「キャアアア! 痴漢!」
「我々はカトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊である!」

私が服を着替えていても。

「ねこぴょん!」
「キャアアア! 痴漢!」
「我々はカトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊である!」

私がトイレに入っていても。

「ねこぴょん!」
「キャアアア! 痴漢!」
「我々はカトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊である!」

私がお風呂に入っていても。

「そう、私たちは、うさぴょんの出したサイコロの目の呪いによって、ねこぴょんと仲間になったので離れることが出来ないのです。」
「俺たちより、ねこぴょん親衛隊の方が痴漢ではないか!?」

その通り。

「いいのよ。だって私の親衛隊なんだから。」
「おお! カトリーヌ・ねこぴょん様! 万歳!」
「どこまでもついて行きます!」
「この命尽きるまで、お守りします!」
「カトリーヌ・ねこぴょんお姉さま! キャア!」

この時、ねこぴょん親衛隊は100人を超える初心者冒険者の集団に成長していた。

「なんちゅう、カリスマ性だ・・・。」
「私たちの首輪ファッションはコスプレイヤーの間ではやるかな?」
「そっちかい!?」
「思ったより、ねこぴょん親衛隊の登場回数が多いな?」
「ああ、俺たちよりも目立っている!? どうする!?」
「そろそろ何か対策を立てなければ、私たちが埋没してしまうぞ!?」

俺とくまぴょんは危機感に襲われていた。

「それではカトリーヌ・ねこぴょん様、町を出て冒険の旅に出発しましょう。」
「あなたは?」
「私は、カトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊、隊長セーラです。こちらは私のメイドのバッキ―です。」
「カトリーヌ・ねこぴょん様、よろしくお願いします。」
「よろしくね。」

遂にカトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊は、親衛隊長と、そのメイドキャラまで排出する名門親衛隊に成長した。

「では、偉大なる冒険の旅にレッゴー!」
「おお!」
「カトリーヌ・ねこぴょん様! 万歳!」

私は町人たちに祝福されながら、100人を超える親衛隊を引き連れて旅路に出発する。

「カトリーヌ・ねこぴょん様、どうぞサイコロを。」
「うむ。苦しゅうない。」
「ニヤ。」

俺はどさくさに紛れてねこぴょんにサイコロを渡すことに成功した。

「んん!? なんでサイコロがいるのよ!?」
「はっはっは! 遅かりし由良之助! まんまと俺の策にはまったな! ねこぴょん!」
「本性を現したわね!? 魔王の手先め!?」
「その通りだ! バレたか!?」
「いいえ。違います。私たちは魔王の手先ではなく、魔王に追われている呪われた逃亡者です。」

くまぴょんは親切なナイスガイだった。

「こんな魔王の心臓のサイコロなんて返すわよ! んん!? 手から離れない!?」
「はっはっは! そのサイコロに触れた者は、サイコロを振るまで手からサイコロが離れないのだ!」
「そんな・・・呪われている・・・。」
「はい。呪われて1020年です。」
「ラーメン屋か?」
「中華料理は4000年の歴史だろうが。」
「はい。その通り。」

俺とくまぴょん、そして、ねこぴょんの複雑な会話を聞き込んでいる親衛隊長と、そのメイドがいた。

「なんなのこの人達は!?」
「お嬢様!? なんだか怪しい関係ですね!?」
「そうね。ただの飼い主と猟犬2匹ということではなさそうね。」
「はい。お嬢様。」
「このバカうさぎとバカくまを利用すれば、邪魔者カトリーヌ・ねこぴょんを倒せるかもしれない!」
「お嬢様の夢が実現するのですね!」
「そう、私が勇者として旅立ちの町から旅立ち、魔王を倒し、この荒んだ世界に平和をもたらし、人々に感謝され、お金持ちになるという夢!」
「さすが! お嬢様!」
「その夢をスタートから邪魔したカトリーヌ・ねこぴょん・・・あなただけは許さない! 絶対に許さない!」
「おお! お嬢様が燃えている!」
「私の夢を邪魔する者は英雄だろうが、魔王だろうが、ぶっ殺す!」
「お嬢様!? 言葉使いが!?」
「あら? いけない。私としたことが。ほっほほほ。」
「はい。それでこそ、いつものお嬢様です。」

これがカトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊の隊長セーラと、そのメイドのバッキ―の真の姿であった。

「それでは気を取り直して振ってみよう!」
「カトリーヌ・ねこぴょん様 サイコロ出陣式の始まりです!」
「こうなったら、やぶれかぶれだ! えい!」
「何が出るかな! 何が出るかな! ヤッホー! ヤッホー!」

ねこぴょんはサイコロを振った。

「2!? 2歩進むってこと!?」
「ぶ、ぶー! 不正解!」
「どういうことよ!?」
「私が説明しよう。」

くまぴょんは親切だった。

「始まりの町が、イチ、という名前であるならば、次の町の名前が、ニ、という可能性もあるということです。」
「じゃあ!? 私が呪われたり、サイコロを振った意味がないじゃない!?」
「そういうこと。」
「そういうことじゃない!? 親衛隊のみなさん! この狼藉ものを懲らしめてやりなさい!」
「はい! カトリーヌ・ねこぴょん様! 親衛隊長セーラが命じる! 親衛隊員よ! かかれ!」
「おお!」

親衛隊が俺とくまぴょんに襲いかかる。

「ギャアアア!? お許しください!? ねこぴょん様!?」
「許してほしければ、カトリーヌ・ねこぴょん様と言いなさい!」
「まさかの親衛隊オチとは!? グワアアア!?」

俺とくまぴょんは生死の狭間をさまよった。

「ああ・・・死にたい。死んでラクになりたいよ。」
「明日の私は何をしているんだろう・・・バタ。」

改めて、ねこぴょんが出陣の号令をかける。 

「行こう! ニの町へ!」
「おお!」

こうしてカトリーヌ・ねこぴょんと親衛隊は、うさぴょんとくまぴょんを踏んで旅立った。

つづく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

処理中です...