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2話 下の名前×出逢い
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「ただいまー」
「お帰りー賢ちゃん」
「あら、聞いてたより遅かったわね」
「あぁちょっと色々あって・・・」
僕には二人の姉と母方の叔母がいる。
長女の結衣姉は既に地元の大学を卒業して今は東京の喫茶店で働いている。次女の碧姉はバイトをしつつ、東京の専門学校に通っている。そして柚希叔母さんはシンガーソングライターとして活動していたけど、今は普通のOLとして働いている。
「賢斗、新しい高校はどうだった?」
「うーん何ていうか・・・」
「あっ、さてはまた大会のことがバレて、みんなにすごいちやほやされちゃったんでしょ?」
「う・・・うん・・」
転校生である僕が大人でも出場は困難とされる大会の優勝者だったという話題がクラス中、いや学校中に広まるのに時間は掛からなかった。
それもそのはず、クラスで一番明るくおしゃべりな怜人の余計な一言から始まったのだから。
おかげで帰りたくても学校中の生徒たちから問い詰められるせいで、中々帰れなかった。
「もうちょっと自信持ちなさいよ、私の自慢の甥っ子なんだから」
「私達二人の自慢の弟だし。ね、結衣姉?」
「そうね、賢ちゃんは小さい頃から技術が得意だもんね」
「あーもうやめてよ三人とも!少し勉強するから邪魔しないでね」
僕は照れ隠ししながら2階にある自分の部屋に向かっていった。実はこう見えて技術だけでなく、5教科の成績は秀才とも言える程だ。
まぁ自分で言うことじゃないけれど。
「ハァ、まさか転校初日からさっそく有名人になっちゃうなんて・・・
久しぶりに音楽でも聞いて落ち着こうかな」
スマートフォンに赤色のイヤホンをスマホに繋げて両耳に着けた後、音楽を選んで再生させた。
再生させた曲は人気上昇中の双子のアイドル、篠崎まこと篠崎みなみこと『Love☆ColorS』の曲だ。
「・・・やっぱりこの二人の曲は聞いてるだけで癒されるなぁ」
この曲は小学校の頃から聞いていて、この曲を聞いたのがきっかけで好きになりライブに行ったり、CDを買ったりしていた。
かつてはオタクで勉強はほとんどしてなくて、今とは全く程遠い生活をしていた。
でも小学5年生の頃にテレビで「あなたは人生を変えてみませんか?」というバラエティ番組を見て、オタクのままではこの先の人生で損してしまうかもしれないと考えて、一度オタクであることを封印。
これまでの授業範囲を猛勉強した結果、もはや実力テストで一、二を争う程に至った。
とは言ったものの、技術が得意なのは元からで母さんと叔母さん曰く「父さんに似たんだと思う」らしい。
確かに父さんはゲームのプログラミングやムービー制作が凄く上手かったってことは聞いているけど、はっきり言ってそれが影響しているのか、僕自身もよく分からない。
「そろそろ始めようか、宿題!」
イヤホンを両耳から外して電源を切った後、鞄から筆箱とノート、そして教科書を取り出し、机の上に置いた。そして宿題に指定されたページとノートを開き、黙々と難しそうな問題を解き始めた。
◇◇◇◇
「よし、これで宿題はおしまい。意外と簡単に出来たなぁ」
今日出された国語と数学の宿題はややレベルが高かった。国語は文章問題に加え漢字や古文の難しい所だけまとめてあったけど、以前勉強していたからすぐに解けた。数学はこれまでやった計算式と図形だったけど、元々計算といったものが得意だったから解くのは簡単だった。
「これぐらいならこれからの勉強面では問題無しだね。
あとは学校での生活と人間関係だな」
(そういえば今日は転校したばかりだったからどんな人がいるのかまだはっきり分かんないや。あれぐらい賑やかな人がたくさんいれば、とんでもなく恐ろしい人もいるのかなぁ?あぁどうしよう!何か不安になってきた。いじめられたりしないかなぁ?)
「賢ちゃーん!風呂空いたから入りなさーい」
「あ、はーい唯姉!分かったよー!」
(ま、そんなに深く考えても仕方ない。明日学校行ってみれば分かることなんだ、今日の所はゆっくり休もう)
◇◇◇◇
「ふあぁ・・・まだ眠たいなぁ・・・」
賢人はミルクココアの紙パックを飲みながら学校までの道がある住宅街の中を歩いていた。中学の時から背を伸ばしたくて飲んでいるが、普通のミルクじゃお腹を壊すかも知れない。だから間を取ってミルクココアをチョイスしている。しかも朝から飲んでおくと気持ちが和らぐから、賢人にとってそれはもう幸せだ。
「結衣姉たち、今日は遅くなるから一人で先に夕飯食べててって言ってたなぁ。帰りに何か買おうかなぁ?」
賢人の両親は賢人たちが小さい頃から仕事で家を空ける事が多くて、家族全員揃う事が少なかった。
父親はゲーム会社のエグゼクティブディレクター、母親は芸能事務所に所属する声優かつ歌手というそれぞれ異なる仕事をしている。別に不仲という訳でもなく仕事熱心なのは息子として誇りに思うが、たまには家族全員で過ごしたいと常に思っている。
「山本くーん!」
後ろから自分を呼ぶ声がしたと思って振り返ってみたら、昨日挨拶をしてくれた委員長の真依が少し息を切らしていた。
「あっ、桐谷さん!おはよう!」
「おはよう!偶然だね!」
「っていうか桐谷さん今日は歩きなんだ?」
(昨日家に帰っている途中で桐谷さんがバスに乗っていく姿をたまたま見たから、バス通学だと思っていたんだけど・・・)
「うん、いつも乗っているバスが遅れて乗れなくなって。歩いて学校に向かってたら山本くんを見かけてね・・・」
「あっそうなんだ」
「うん、それにしても昨日は大変だったね?」
「あぁ、まぁね。怜人の奴が余計なこと言うから正直あんな風にちやほやされるのは嫌いじゃないんだけど、恥ずかしくなって・・・」
「ごめんね、池崎くんはあんな感じで他人をイジったりからかうのが好きなの。でもいつも明るくて面白いからみんなに慕われているの」
「へぇー」
(あいつはただのイジるのが好きだけじゃない奴なんだなぁ・・・。ってか何無意識に昨日会ったばかりの女の子と仲良く会話してんだ僕!?」
(ふふっ、山本くんってけっこう恥ずかしがり屋なのかな?)
「「・・・・・・」」
急に二人の間に沈黙が出来たかと思いきや、突然真衣が口を開いて言った。
「ねぇ山本くん、せっかく同じクラスになれたんだから下の名前で呼び合わない?」
「はい?」
(え?え?何?下の名前で!?いやいやちょっと待って!こっちは女の子に馴れてないというのにそれはいきなり過ぎるよ!!)
「いや、まだお互い何も知らないのに馴れ馴れしくするのは・・・」
「一回だけで良いから呼んで欲しいの・・・」
(う・・・そんな泣き出すような顔しないでよ。可愛くてしょうがなくなるじゃん・・・)
「じゃあ・・・ま、真依ちゃん・・・・・・」
「っ・・・!!
((は、恥ずかしいーーーーーー!!!))
「あっ真依ーおはよう!一緒に学校行こう!」
「じゃあまた後でね、賢人くん」
「う、うん・・・」
そう言って真依は赤くなった顔を隠しながら、数十メートル先にいる友達の方へ走り去って行った。
「う、嘘やろ・・・マジで?
ほんの数分前までの出来事がまるで幻覚のように思えた。賢人にとって、家族以外の女の人に下の名前で呼ばれたのは小学生以来だ。
しかも、久しぶりにそう呼んでくれた人が転校先のクラスの委員長を務める一人の女の子であるため、色々なことがごっちゃになって頭の中が真っ白になってしまった。
「あぁもう気にし過ぎてもしょうがない!僕も早く学校行こう!」
◇◇◇◇
さっきの桐谷真依のことが気になりつつ何とか学校に到着して校門を通った後、着いた直後に飲み干したミルクココアの紙パックをゴミ箱に捨て、自分の教室があるB校舎に向かう途中・・・
「あっ見て!賢人くんだ!」
「マジ!?うち今日早退しようと思ったけどやめとこ!」
「きゃあーこっち見たー!可愛いー♥」
2階の窓から女子達が僕を見て嬉しそうにはしゃいでいるのが分かった。
いくら学校中に僕の話題が広まったとはいえ、やっぱり恥ずかしい。恥ずかしさを隠しながら中央の中庭を通り過ぎそうになった時、噴水の前で人だかりができているのが見えた。しかもやけにザワついていた。
その中に怜人と伸之の姿が見え、何だろうと思いつつ人だかりの中に入っていき、二人に声をかけた。
「怜人、斎藤さん。朝から一体何の集まりなの?」
「おぉ賢人、これには訳があってだな・・・」
「そんな難しく言う事じゃないだろ、怜人。なーに、大したことじゃない。見てりゃ分かるよ」
説明するのが下手くそな怜人の代わりに斎藤さんが冷静に言った。
背が低いだけあって中々生徒たちが注目しているものを捉える事が出来なかったが、僅かな隙間に入っていき、最前列の中に入っていき皆の視点を集中させている一人の男子生徒が見えた。何だか緊張している様子だった。
(あの人は確か2年C組で、サッカー部の伊達智則先輩だ。昨日帰ろうとしたらたまたま部活で女子達にちやほやされている所を見かけたし、
女子生徒からも人気があることも聞いていたから知ってはいたけど、そんな人がこんな朝早くから一体何をするつもりなんだろう?)
「あっ、来たよ!皆、道を開けるんだ!」
一人の男子生徒が声に反応して皆一斉に噴水から距離を取り始めた。何かすごい人が来るのかと思い、賢人もさりげなく同化して距離を取った。すると、渡り廊下から一人の女性が歩いてくるのが見えた。
(うわぁ・・・)
思わず見上げてしまいそうに感じさせる程高い身長。
ほんの少しだけ赤紫がかかったブロンドの髪。
真面目さと賢さを引き出すような大きい黒渕眼鏡。
そして眼鏡を通して見える紫色の瞳。
全てが可憐に見えて一瞬モデルではないかと、思わず見とれてしまった。
しかし賢人はまだきづいていなかった。
彼女との出逢いが自分自身の学園生活を狂わせてしまうことになったことを・・・
「お帰りー賢ちゃん」
「あら、聞いてたより遅かったわね」
「あぁちょっと色々あって・・・」
僕には二人の姉と母方の叔母がいる。
長女の結衣姉は既に地元の大学を卒業して今は東京の喫茶店で働いている。次女の碧姉はバイトをしつつ、東京の専門学校に通っている。そして柚希叔母さんはシンガーソングライターとして活動していたけど、今は普通のOLとして働いている。
「賢斗、新しい高校はどうだった?」
「うーん何ていうか・・・」
「あっ、さてはまた大会のことがバレて、みんなにすごいちやほやされちゃったんでしょ?」
「う・・・うん・・」
転校生である僕が大人でも出場は困難とされる大会の優勝者だったという話題がクラス中、いや学校中に広まるのに時間は掛からなかった。
それもそのはず、クラスで一番明るくおしゃべりな怜人の余計な一言から始まったのだから。
おかげで帰りたくても学校中の生徒たちから問い詰められるせいで、中々帰れなかった。
「もうちょっと自信持ちなさいよ、私の自慢の甥っ子なんだから」
「私達二人の自慢の弟だし。ね、結衣姉?」
「そうね、賢ちゃんは小さい頃から技術が得意だもんね」
「あーもうやめてよ三人とも!少し勉強するから邪魔しないでね」
僕は照れ隠ししながら2階にある自分の部屋に向かっていった。実はこう見えて技術だけでなく、5教科の成績は秀才とも言える程だ。
まぁ自分で言うことじゃないけれど。
「ハァ、まさか転校初日からさっそく有名人になっちゃうなんて・・・
久しぶりに音楽でも聞いて落ち着こうかな」
スマートフォンに赤色のイヤホンをスマホに繋げて両耳に着けた後、音楽を選んで再生させた。
再生させた曲は人気上昇中の双子のアイドル、篠崎まこと篠崎みなみこと『Love☆ColorS』の曲だ。
「・・・やっぱりこの二人の曲は聞いてるだけで癒されるなぁ」
この曲は小学校の頃から聞いていて、この曲を聞いたのがきっかけで好きになりライブに行ったり、CDを買ったりしていた。
かつてはオタクで勉強はほとんどしてなくて、今とは全く程遠い生活をしていた。
でも小学5年生の頃にテレビで「あなたは人生を変えてみませんか?」というバラエティ番組を見て、オタクのままではこの先の人生で損してしまうかもしれないと考えて、一度オタクであることを封印。
これまでの授業範囲を猛勉強した結果、もはや実力テストで一、二を争う程に至った。
とは言ったものの、技術が得意なのは元からで母さんと叔母さん曰く「父さんに似たんだと思う」らしい。
確かに父さんはゲームのプログラミングやムービー制作が凄く上手かったってことは聞いているけど、はっきり言ってそれが影響しているのか、僕自身もよく分からない。
「そろそろ始めようか、宿題!」
イヤホンを両耳から外して電源を切った後、鞄から筆箱とノート、そして教科書を取り出し、机の上に置いた。そして宿題に指定されたページとノートを開き、黙々と難しそうな問題を解き始めた。
◇◇◇◇
「よし、これで宿題はおしまい。意外と簡単に出来たなぁ」
今日出された国語と数学の宿題はややレベルが高かった。国語は文章問題に加え漢字や古文の難しい所だけまとめてあったけど、以前勉強していたからすぐに解けた。数学はこれまでやった計算式と図形だったけど、元々計算といったものが得意だったから解くのは簡単だった。
「これぐらいならこれからの勉強面では問題無しだね。
あとは学校での生活と人間関係だな」
(そういえば今日は転校したばかりだったからどんな人がいるのかまだはっきり分かんないや。あれぐらい賑やかな人がたくさんいれば、とんでもなく恐ろしい人もいるのかなぁ?あぁどうしよう!何か不安になってきた。いじめられたりしないかなぁ?)
「賢ちゃーん!風呂空いたから入りなさーい」
「あ、はーい唯姉!分かったよー!」
(ま、そんなに深く考えても仕方ない。明日学校行ってみれば分かることなんだ、今日の所はゆっくり休もう)
◇◇◇◇
「ふあぁ・・・まだ眠たいなぁ・・・」
賢人はミルクココアの紙パックを飲みながら学校までの道がある住宅街の中を歩いていた。中学の時から背を伸ばしたくて飲んでいるが、普通のミルクじゃお腹を壊すかも知れない。だから間を取ってミルクココアをチョイスしている。しかも朝から飲んでおくと気持ちが和らぐから、賢人にとってそれはもう幸せだ。
「結衣姉たち、今日は遅くなるから一人で先に夕飯食べててって言ってたなぁ。帰りに何か買おうかなぁ?」
賢人の両親は賢人たちが小さい頃から仕事で家を空ける事が多くて、家族全員揃う事が少なかった。
父親はゲーム会社のエグゼクティブディレクター、母親は芸能事務所に所属する声優かつ歌手というそれぞれ異なる仕事をしている。別に不仲という訳でもなく仕事熱心なのは息子として誇りに思うが、たまには家族全員で過ごしたいと常に思っている。
「山本くーん!」
後ろから自分を呼ぶ声がしたと思って振り返ってみたら、昨日挨拶をしてくれた委員長の真依が少し息を切らしていた。
「あっ、桐谷さん!おはよう!」
「おはよう!偶然だね!」
「っていうか桐谷さん今日は歩きなんだ?」
(昨日家に帰っている途中で桐谷さんがバスに乗っていく姿をたまたま見たから、バス通学だと思っていたんだけど・・・)
「うん、いつも乗っているバスが遅れて乗れなくなって。歩いて学校に向かってたら山本くんを見かけてね・・・」
「あっそうなんだ」
「うん、それにしても昨日は大変だったね?」
「あぁ、まぁね。怜人の奴が余計なこと言うから正直あんな風にちやほやされるのは嫌いじゃないんだけど、恥ずかしくなって・・・」
「ごめんね、池崎くんはあんな感じで他人をイジったりからかうのが好きなの。でもいつも明るくて面白いからみんなに慕われているの」
「へぇー」
(あいつはただのイジるのが好きだけじゃない奴なんだなぁ・・・。ってか何無意識に昨日会ったばかりの女の子と仲良く会話してんだ僕!?」
(ふふっ、山本くんってけっこう恥ずかしがり屋なのかな?)
「「・・・・・・」」
急に二人の間に沈黙が出来たかと思いきや、突然真衣が口を開いて言った。
「ねぇ山本くん、せっかく同じクラスになれたんだから下の名前で呼び合わない?」
「はい?」
(え?え?何?下の名前で!?いやいやちょっと待って!こっちは女の子に馴れてないというのにそれはいきなり過ぎるよ!!)
「いや、まだお互い何も知らないのに馴れ馴れしくするのは・・・」
「一回だけで良いから呼んで欲しいの・・・」
(う・・・そんな泣き出すような顔しないでよ。可愛くてしょうがなくなるじゃん・・・)
「じゃあ・・・ま、真依ちゃん・・・・・・」
「っ・・・!!
((は、恥ずかしいーーーーーー!!!))
「あっ真依ーおはよう!一緒に学校行こう!」
「じゃあまた後でね、賢人くん」
「う、うん・・・」
そう言って真依は赤くなった顔を隠しながら、数十メートル先にいる友達の方へ走り去って行った。
「う、嘘やろ・・・マジで?
ほんの数分前までの出来事がまるで幻覚のように思えた。賢人にとって、家族以外の女の人に下の名前で呼ばれたのは小学生以来だ。
しかも、久しぶりにそう呼んでくれた人が転校先のクラスの委員長を務める一人の女の子であるため、色々なことがごっちゃになって頭の中が真っ白になってしまった。
「あぁもう気にし過ぎてもしょうがない!僕も早く学校行こう!」
◇◇◇◇
さっきの桐谷真依のことが気になりつつ何とか学校に到着して校門を通った後、着いた直後に飲み干したミルクココアの紙パックをゴミ箱に捨て、自分の教室があるB校舎に向かう途中・・・
「あっ見て!賢人くんだ!」
「マジ!?うち今日早退しようと思ったけどやめとこ!」
「きゃあーこっち見たー!可愛いー♥」
2階の窓から女子達が僕を見て嬉しそうにはしゃいでいるのが分かった。
いくら学校中に僕の話題が広まったとはいえ、やっぱり恥ずかしい。恥ずかしさを隠しながら中央の中庭を通り過ぎそうになった時、噴水の前で人だかりができているのが見えた。しかもやけにザワついていた。
その中に怜人と伸之の姿が見え、何だろうと思いつつ人だかりの中に入っていき、二人に声をかけた。
「怜人、斎藤さん。朝から一体何の集まりなの?」
「おぉ賢人、これには訳があってだな・・・」
「そんな難しく言う事じゃないだろ、怜人。なーに、大したことじゃない。見てりゃ分かるよ」
説明するのが下手くそな怜人の代わりに斎藤さんが冷静に言った。
背が低いだけあって中々生徒たちが注目しているものを捉える事が出来なかったが、僅かな隙間に入っていき、最前列の中に入っていき皆の視点を集中させている一人の男子生徒が見えた。何だか緊張している様子だった。
(あの人は確か2年C組で、サッカー部の伊達智則先輩だ。昨日帰ろうとしたらたまたま部活で女子達にちやほやされている所を見かけたし、
女子生徒からも人気があることも聞いていたから知ってはいたけど、そんな人がこんな朝早くから一体何をするつもりなんだろう?)
「あっ、来たよ!皆、道を開けるんだ!」
一人の男子生徒が声に反応して皆一斉に噴水から距離を取り始めた。何かすごい人が来るのかと思い、賢人もさりげなく同化して距離を取った。すると、渡り廊下から一人の女性が歩いてくるのが見えた。
(うわぁ・・・)
思わず見上げてしまいそうに感じさせる程高い身長。
ほんの少しだけ赤紫がかかったブロンドの髪。
真面目さと賢さを引き出すような大きい黒渕眼鏡。
そして眼鏡を通して見える紫色の瞳。
全てが可憐に見えて一瞬モデルではないかと、思わず見とれてしまった。
しかし賢人はまだきづいていなかった。
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