僕は冷徹な先輩に告白された

隻瞳

文字の大きさ
上 下
32 / 52

31話 本屋×アプローチ

しおりを挟む
「えっと・・・あ、これだ」

本屋に着くと二人は雑誌や漫画、ライトノベルが揃えられているスペースの反対側にある参考書が揃えられているスペースでゴミ捨て場に群がるカラスの如く漁り始めるのだった。
参考書といっても二人にとって、問題集は初級や中級といったそんな軽はずみなものではなく、無論名門の大学から出題される問題がほとんどを占める赤本にしか目が向いていない。

真依は入学してから早々成績トップに君臨しており、賢人もまた入学式から1ヶ月経った後に転校してきたのにもかかわらず、真依と肩を並べる程の成績を収めつつあり、今やこの二人が順位を競い合うデットヒート状態にある。

そんな互いに今後の学年順位の変動に関わる参考書探しをする二人。
真依は何も気にせず目星の付いた参考書を見つけては手に取っているが、賢人はまずそれどころではなかった・・・・・・・・・・・
何故なら・・・・・・


ーーーボヨヨ~ン。
見ているだけでそんなアニメのような効果音が聞こえてくるぐらいにたわわな真依の果実に目を離せなかったからだ。
参考書を手に持って一冊一冊積んでいくうちに、参考書が胸に押し当てられて最終的にずっしりと乗ってしまっている。
それはさておき、賢人は本屋ここに着く前から里奈と同じように身長差がある真依に無理矢理腕を組まれてくっつかれながら歩いていたものだから、途中ですれ違う人たちからどんなに視線を浴びたことか。
その中に同じ学校の生徒が含まれていなかったことが唯一の幸いだった。

更に不思議な本屋の中は思ったより広かったが、他のお客さんはおろか店員さんすら姿が見えなかった。
つまり現状から考えると今本屋の中で二人っきりということになる。

「賢人くん、そっちは何か見つけた?」

「う、ううん!」

このようにたまに向こうから話しかけられると、賢人は慌てて視線を逸らして辛うじて返事をするの繰り返しだ。
それを見ている真依はまるで見透かしている・・・・・・・のか、クスクスと静かに微笑んでいた。

「・・・真依ちゃんはさ、いつもこんな感じなの?」

このままでは気まずいと、賢人は咄嗟に質問した。
真依は賢人の質問に目を丸くしながらもふにゃりと笑いながら静かに答える。

「・・・いつもって、今の私・・・がってこと?」

「ち、ちゃうよ!誰もそんなこと言うてへんやん!」

真依は上目遣いをしながら両手で胸を寄せ上げしながら賢人に質問し返した。賢人は顔を赤くしながら慌てながら関西弁で否定する。
その様子を見て真依はからかうかのようにクスクスと笑った。
正直今の真依・・・・からそんな対応をされると恥ずかしくて仕方なかった。
それこそラノベで稀に見る年上のお姉さんが年下で意中の異性を手玉に取るためにするアプローチのようだった。

「そうやなくて!ほら、勉強とかする時はこうやって参考書を買いに行ってるのかって話やねん!」

賢人は普段からの勉強面についてと弁解した上で改めて質問する。

「ふーん。なーんだそっちかー、ドキドキしたのに~」

「っ・・・」

それを聞いて真依は分かっているくせにわざと納得したような顔で残念そうに言った。
だかその無邪気な顔がまた可愛くて胸がドキッとしてしまった。
最もドキドキしたと言っている彼女自身が本当にそうなのかは分からないが。

 「・・・そうね。元々勉強は得意だけど、その分皆から期待されているからそれに応えなきゃいけないと思ってね」

「・・・」

「でもね、そうしているうちにいつのまにかリーダーシップを取るような立場になってね。期待が高まるのと同時にプレッシャーに押されちゃって自信が無くなっちゃう気がしてね・・・」

「真依ちゃん・・・」

急に話を戻してくれたかと思いきや、さっきまでの態度とは打って変わっていつもの真面目な真依で不安や責任感を打ち明けた。
普段からそんな風に思っていたなんて。それも初対面の時はおろか今までの学校生活の中で。
言葉が出なくなりそうだったが、賢人は喋り出した。

「・・・確かにそういうの辛いよね。その気持ちよく分かるよ。
だけど真依ちゃんの言う皆の期待に応えるために日々努力するってのも悪くないと思うよ?」

「でも、もし失敗して皆から責められたりしたら・・・」

「大丈夫だよ、もしそうなったとしても僕は味方するよ。だって僕は真依ちゃんのこと信じてるもん。現に真依ちゃんのおかげで転校してきたときの不安が無くなったんだから」

「賢人くん・・・」

「それにこんなに綺麗で優しいk・・・!?」

賢人が言い終わる前に真依は賢人を胸の中で強く抱き締めた。
クラスをまとめる者として当然のことで、それも責任感と隣り合わせでプレッシャーに押されて誰にも相談できない不安を完全無欠な委員長を幻滅される覚悟で打ち明けた。
それでも目の前にいる彼は幻滅するどころか、むしろより信頼を持つようになり、もし皆から責められたとしても自分は味方してくれる彼の優しさに嬉しさのあまり、とうとう気持ちが抑えられなくなってしまったのだ。

「もーこんなに可愛い人からそんなに優しくされたら、もっと頑張りたくなっちゃうじゃない♡」

「・・・!!」

優しさに触れられた拍子で賢人に対して母性本能が働いたのか真依は賢人の顔を豊満な胸に埋めたまま優しく頭を撫でた。
賢人の顔は真っ赤で何か言ってるようだが、抱き締められているせいで何を言っているのか分からなかった。

「あー、賢人くんの顔熱くなってきたー♡可愛いー♡」

賢人の熱が伝わってきたのを感じた真依は無邪気に笑ってそう言った。
今の彼女から逃れるなんて出来ない。
動けないし動けたとしても今は動きたくない。
もっとこうされていたい。
賢人は心の何処かでそんな風に考えてしまうのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

修行のため、女装して高校に通っています

らいち
青春
沢村由紀也の家は大衆演劇を営んでいて、由紀也はそこの看板女形だ。 人気もそこそこあるし、由紀也自身も自分の女形の出来にはある程度自信を持っていたのだが……。 団長である父親は、由紀也の女形の出来がどうしても気に入らなかったらしく、とんでもない要求を由紀也によこす。 それは修行のために、女装して高校に通えという事だった。 女装した美少年が美少女に変身したために起こる、楽しくてちょっぴり迷惑な物語♪(ちゃんと修行もしています) ※以前他サイトに投稿していた作品です。現在は下げており、タイトルも変えています。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

親戚のおじさんに犯された!嫌がる私の姿を見ながら胸を揉み・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
親戚のおじさんの家に住み、大学に通うことになった。 「おじさん、卒業するまで、どうぞよろしくお願いします」 「ああ、たっぷりとかわいがってあげるよ・・・」 「・・・?は、はい」 いやらしく私の目を見ながらニヤつく・・・ その夜。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

[1分読書]彼女を寝取られたので仕返しします・・・

無責任
青春
僕は武田信長。高校2年生だ。 僕には、中学1年生の時から付き合っている彼女が・・・。 隣の小学校だった上杉愛美だ。 部活中、軽い熱中症で倒れてしまった。 その時、助けてくれたのが愛美だった。 その後、夏休みに愛美から告白されて、彼氏彼女の関係に・・・。 それから、5年。 僕と愛美は、愛し合っていると思っていた。 今日、この状況を見るまでは・・・。 その愛美が、他の男と、大人の街に・・・。 そして、一時休憩の派手なホテルに入って行った。 僕はどうすれば・・・。 この作品の一部に、法令違反の部分がありますが、法令違反を推奨するものではありません。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

処理中です...