僕は冷徹な先輩に告白された

隻瞳

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27話 期末テスト当日×気まずい

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お昼ご飯を済ませた後、昼間のすれ違った女の子が気になりつつ、夕方になるまでテスト勉強に励んだ。
明日学校に行った時、皆にどんな顔したらいいだろう?特に恋人の里奈には。
なんと言っても土日に入る前にあんなことがあったとすると顔を見せようにも気まずくなる。賢人は不安になりつつ、
体に掛かる睡魔と疲労感に任せて眠ることにしたのだった。


◇◇◇◇


ーーー次の日。

「おっ、賢人と里奈先p・・・」

「どうしたんだ怜人?急に黙りk・・・」

怜人と伸之がいつものように登校している途中、賢人と里奈の二人と合流した。
が、二人の信じられない光景に怜人が最後まで喋れず、違和感を感じた伸之が二人を見た途端に同じく絶句した。

「お、おはよう。怜人、斎藤さん」

「ふ、二人ともおはよう」

賢人と里奈は絶句している二人に対して、何やら顔を赤くしてもじもじと挨拶を交わした。
しかし、怜人と伸之は唖然として見ていたのは二人の顔ではなく、二人の手先だった。


「「・・・」」


手を繋いでいた。
先週にあんなことがあったのにも関わらず、互いに距離感が出来ていない。
むしろテスト勉強の時よりも距離が縮まっているのが窺える。
二人はこの現状を誤魔化しているつもりだろうが、顔と手は嘘を付いておらず、誤魔化しきれてない。
というより見ただけですぐに分かる。



ーーーそれは怜人と伸之が賢人と里奈と合流する数分前のことだった・・・

「行ってきまーす」

「いってらっしゃーい。テスト頑張ってね」

「うん!」

ちょうど賢人はいつものように柚希に見送られながら家を出るところだった。

「応援なんかしなくたってもう結果は見えてるよ、叔母さん」

「あーそうだったわ、ごめんなさいね賢人(笑)」

「もう、碧姉余計なこと言うんだから。あと叔母さんも乗って喋らないでよ」

「はいはい、さぁいってらっしゃい!」

「・・・すぐに話を逸らすんだから!」

さらっと話を変える二人に呆れながらも賢人は玄関のドアを開けて外に出た。
すると柵の外に人影があるのが見えた。
誰だろう?こんな朝からうちに用がある人がいるなんて珍しい。
そう思いつつ柵を出てそーっと覗いてみた。

「あっ・・・」

「里奈先輩・・・」

そこに立っていた黒髪ロングに長身に、絶妙なプロポーションを持つ制服姿の女性は紛れもなく里奈だった。更に言えば今の賢人にとって会うのが一番気まずい相手だった。

「あの・・・えっと・・・」

「お、おはよう。賢人くん・・・」

なんて声をかけていいのか分からず賢人は狼狽えてしまったが、それでも里奈は同じく気まずそうにしつつ声をかけた。
流石にやり過ぎてしまったことからお互い面と向かって話をするのが思うばかりに、会うことはおろかLINEで話すことも出来なかった。たった2日も会ってもいないし会話もしていないというのに、こんなにも久しぶりに感じるのは二人とも初めてだ。

「あ、うん・・・。おはようございます」

心無しに里奈の方から挨拶された賢人は無視するわけにはいかないと、未だに狼狽えながらも言葉を返した。だが言葉を返せたのはいいものの、次にどんな話を切り出すのはおろかどんな言葉を出せばいいのかと、これまたお互い気まずさが一層増して黙り込んだ。そんな折、この現状をいつまでも続けても仕方ないとばかりに賢人は思いきって口を動かした。

「あの、里奈先輩。あの日のことは・・・・・・」

「」

「!?」

一度俯いてから勇気を出して顔を上げた瞬間、里奈が顔を隠しながらこれでもかというぐらいの距離まで近づいていた。
驚いた賢人が喋ろうとした矢先に、里奈が人差し指で賢人の唇に触れてきた。

「なっ・・・!?」

賢人は辛うじて声を出した。すると目をあわせずにいた里奈が顔を上げた。
その顔は赤くなるあまり耳元まで赤く染まっていた。

「・・・家の前で騒いじゃダメ。
叔母さんとお姉さん達が不審者に襲われたと思っちゃうでしょ?」

「は、はい・・・」

賢人がいる前で顔が赤い、ということはやはりあの時のことの気持ちをまだ引きずっていると賢人は推測する。そんな彼女は今、その気持ちを賢人に示すことなくいつものように気さくで明るい態度で接している。
だが言葉や態度で出さずとも顔は正直で、やっぱりあの時の好きな男に女性として恥ずかしいことしたのがまだ忘れられていない。いや、むしろ忘れたくても忘れることが出来ないと言った方が正しいだろう。
多分年上の女性として我慢しているんだろう。

「学校・・・行こ?」

「は、はい。・・・!」

賢人がそれに気づいてポカンとしていると、里奈が少し離れて歩いてから振り返って手を差し伸べてきた。間違いない、手を繋いで行きたい・・・・・・・・・と言いたいんだ。当然賢人は里奈が言いたいことをすぐ理解したが、いきなりしたいと出されると流石にたじろぐ。

「えっと・・・」

「んっ!」

だが里奈は賢人がそれを拒否しようとすると頑なに手を差し伸べる。
年頃とは思えないわがままな一面だ。

「・・・っ、分かりました!すればいいんでしょ?」

「♪」

年上とは思えない幼い子どものような上目遣いからのおねだりを見せつけられて、賢人は断れず里奈の言われるがままになることにした。
まだあの時の気持ちが互いに引きずっているというのにこんな・・・
そんな疑問を胸にしまいつつ賢人は差し出された里奈の手を握った。

「きゃっ・・・」

「あっ、えっと、すいません・・・」

まだ躊躇いがあるせいか心無しに力を入れてしまい、強く握られた里奈は小さく声を上げるのを見て賢人はすぐに謝った。

「ううん、大丈夫よ。久しぶりに手を繋いだからちょっと驚いちゃっただけ」

「なら良かったです」

(マズいな、せっかく向こうからさそってくれてるのに出だしからつまずいちゃったよ!これじゃまだ気持ちを引きずっていて子どもっぽいと思われちゃう!)

(あーどうしようどうしようどうしよう!!
気まずいあまり思いきって言っちゃったけど、我ながら恥ずかしいよ!
あんなことさせておいて平気だなんて、痴女だと思われるー!)

賢人の推測通り気まずくて中々言いたいことが言えなかったのは賢人だけではなかった。里奈も賢人と同じことを考えていた。それもそのはず、からかいだったとはいえ大好きな年下の彼氏に幼馴染みが自分以上にアプローチしているのにやきもちを焼き、思わずあんなことをしてしまったと今となって冷静に考えてみると、死んでしまいたいぐらいに恥ずかしい。

だが今更話せるワケもなく、二人とも面と向かってその本心を真意を胸にしまい込み、そのまま手を繋ぎ合って学校に行くことにしたのだった。
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