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【最終話 みずほ先輩の華麗なる誘導尋問】

【8-2】

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 またもやリアルの人物だ。青葉さんは三か月ほど前から交流が増えた体育会系のクラスメイト。

「そして一番後ろが愛美ちゃん。図書委員やってる子よ、知ってるわよね」
「あっ! あのメガネっ子っすよね。隣のクラスの」

 どうやら俺と知り合いの三人の女子がかかわる問題らしい。しかし、いったい何の問題なのだろうか。俺の困惑をよそにみずほ先輩は続ける。

「いい? 突然、四人の前に恐ろしい姿をした鬼が現れました。鬼はかつきくんたちに呪いをかけます。そのせいで四人は身体が動かなくなりました。前を見たまま頭を動かすこともままなりません。絶体絶命の危機に直面し冷たい汗が滴り落ちます」
「ええっ、いきなりやべー状況なんすか! 俺まだ死にたくないっす!」

 素直にみずほ先輩の世界観に乗ることにした。そうしなければこの身が危険だ。

「それから後頭部に激しい痛みを感じました。まるで熱い鉄の棒を押しつけられたような、熱感を伴う痛みです」
「ななななんすっか、そのやばい禁呪は!」

 みずほ先輩の表情は真剣そのものだ。原因不明の気迫がマジで鬼の所業より怖いと感じる俺である。

「鬼は呪術について説明します。『儂は今、貴様ら四人の後頭部に焼き印を付した。ふたりは「光」、ふたりは「闇」と記された焼き印じゃ。そこで貴様らの誰でもいい、自分の頭の後ろに付された焼き印がどちらなのか当てることができたならば、貴様ら全員を見逃してやろう』とのことです」

 問題の設定については、俺の低スペックな脳みそでも理解できた。

「ああ、頭を動かすことができない……つまり、自分より前側に立っているひとの後頭部しか見えないってことですね」
「かつき君、その解釈は正しいわ。鬼はさらにこう言います。『答えられるチャンスは全員のうちたったひとり、それも一回だけじゃ。制限時間は三分間。さあ、心してかかれよ。ただし、外れた場合は、貴様ら全員――わしの晩飯じゃ! 貴様らは儂の血となり肉となり、そして魂の一部になるのじゃあああ!』ってね」

 鬼の形相をしているのはみずほ先輩自身だ。だが、みずほ先輩の美貌は怒ったら怒ったで格別の美しさ。その魅力に自覚がないのは彼女の唯一の欠点かもしれない。

「そして、ここからが問題です。鬼は残り時間を数え始めましたが、その問いに答えられる子は誰もいませんでした。ところが、ひとりの女子が時間ぎりぎりで答えを口にします。その答えは見事正解でした。そして、その子は自分が正解できると確信があったのです。さあ、正解を答えたのは誰か当ててみなさい! それもちゃんとした理由をつけてねっ!」

 きわめて奇妙な問題だったが、みずほ先輩の瞳は俺をまっすぐに見据えている。俺は全力をもってこの問題を迎え撃たなければいけないようだ。

 だけど考えてみればこの問題、やけに簡単じゃないのか? あっさりと回答を述べる。

「一番後ろにいる愛美ちゃんは前にいる三人の後頭部が見えるでしょ? だから、自分の焼き印を当てるのは簡単じゃないっすか。ってなわけで、俺が選ぶのは断然、愛美ちゃんっす!」

 答えると、みずほ先輩はあわてて両手のひらを俺に向け、首をぶんぶんと横に振る。

「そんなに簡単に答えを決めちゃだめっ! 選ぶ相手はよく考えること! これは人生の一大事なんだからねっ!」
「はぁ? 何が人生の一大事なんすか」

 鬼に食われてしまうということを意味しているのか? そうだとすると愛美ちゃんは不正解なのか?

「とっ……とにかく答えを再考しなさいっ!」

 むぅ、今日のみずほ先輩はどうも様子がおかしい。けれど聡明なみずほ先輩のことだから、なんらかの意図があるはずだ。

 どうして愛美ちゃんを選んではいけないんだろうか。

 そこで俺は自分が選んだ四番目の女子、愛美ちゃんのことを回想した。

 愛美ちゃんは隣のクラスの女子で、俺との接点は図書室だった。ツインテールの地味なメガネっ子という印象の、図書委員の女の子だ。

 借りた参考書を返しに行ったとき、彼女は大量の本を抱えてよろよろと歩いていた。

 こりゃ危ないと思っていたら案の定、俺の目の前で本をぶちまけた。

「あっ、あうぅ……」

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